20. メンテナンスについて
「メンテナンスの基本は清掃である」
印刷機械をきれいにするということは「油ダレ、水ダレ、粉のボタ落ち」などの原因を取り除くという直接的な意味合いのほかに、作業者の心理にも好影響を及ぼし、人為的ミスの減少にもつながるはずです。
印刷機械はインキを被印刷物に転写(転移)させるためには胴間(版−ブラン−圧胴)に13〜15kg/m2もの圧力をかけながら毎時10,000枚以上の高速で回転し、しかも、髪の毛1本以下の見当精度を保っています。しかも、ペースト状のインキを紙の寸法安定性(伸縮)に最も悪影響のある水を使用しながら印刷を行っています。この機械精度を維持するのがメンテナンスです。
21. 印刷品質とは
通常、印刷品質と言えば文字、線画も含めた画像の品質を指すことが多いです。すなわち、画像の階調再現性やコントラストなどが品質評価の要素となります。この画像品質という観点で言えば、印刷品質は製版まででその80%が決まると言われています。
これに対して、印刷機で紙など被印刷体にインキを転写する作業における品質を印刷品質という。その品質基準は「版の画像を被印刷体にバラツキなく転写する転写再現性の正確さの程度」と言えます。転写再現性の正確さを欠いた印刷物を不良印刷物と言います。つまり、ダブリ、見当ズレ、ゴミ付着、ドットゲインによる濃度ムラ、インキ盛量による濃度ムラなどのあるもの。
印刷品質とは、印刷機の性能、印刷資材、オペレーター、印刷環境、これらの総合で形成されているため、どれが欠けても品質向上は望めないと言われています。
22. インキ使用量の簡易計算方法
使用インキ量は、次のような要因を考えて算出することができます。使用インキ量の算出基準は、
1) 用紙の規格(寸法、つまり、A判、菊判など)
2) 画線部の面積
3) 用紙の性質
4) インキの種類
5) 通し枚数
式に表すと次のようになります。
(用紙規格係数)×(画線部面積係数)×(用紙係数)×(インキ係数)×(通し枚数係数)×(ロス量)=インキ使用量
▼各係数例
1) 用紙規格係数
A倍判: 1.0
B倍判: 1.5
A全判: 0.5
B全判: 0.75
A半判: 0.25
B半判: 0.37
2) 画線部の面積による係数(画線部の面積のおおよそは次の係数を参考)
全面ベタ: 1.0
白ヌキ文字: 0.7
全面に絵柄あり: 0.4
全面に網点: 0.4
全面に文字: 0.2
3) 用紙の種類による係数
印刷用紙によってインキの転移率が異なってきます。ただし、同じ用紙を使用しても印圧、湿度、印刷速度、印刷機の練り効果などによっても異なることを考慮しておくことが大切です。
アートコート: 1.0
マットコート: 1.4
上質紙: 1.6
ザラ紙: 1.8
粗面板紙: 2.0
フィルム(ユポ): 0.7〜0.8
4) インキによる係数(油性インキの例)
インキは一定の厚さで印刷するべきですが、しかし、インキ中の顔料によってインキの比重が異なるので、一定のインキ量で印刷される面積は変化します。
プロセス黄: 1.1
プロセス紅・藍: 1.0
プロセス墨: 0.8
紺藍: 0.8
赤(金赤)・浅葱・緑: 1.2
不透明黄: 1.4
白: 1.7
銀: 1.5
金: 3.0
OPニス: 0.6
5) 通し枚数による係数
500枚: 0.5
1,000枚: 1.0
2,000枚: 2.0
6) ロスになる分
印刷時には、印刷機のインキ壷、インキローラー、版、ブランケット上に一定以上のインキがなければなりません。これは、100枚印刷するときも100,000枚印刷するときも同じです。
A全判であれば50g、B全判であれば75g、A半才で25gという計算になります。また、見当合わせや印刷途中でブランケットを洗ったりすると5g必要となるので、何回ブランケットを洗うかを予測してロス分として計算します。
7) インキ量の算出例
次の印刷条件をもとにしてインキ量を算出してみます。
B半才: 0.37
全面文字: 0.2
上質: 1.6
墨: 0.8
10,000枚: 10.0
ロス分: ブランケット5回洗浄 5g×5回=25g
B半才機のローラー上の必要インキ量: 37.5g
したがって、
(0.37×0.2×1.6×0.8×10.0)×1,000+25+37.5=1009.7g
となりますから、この場合の必要量は1,010gです。
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