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18. UVインキ(印刷)の必要性
UVインキは、一般油性インキと異なり無溶剤であること、瞬間硬化であることによりさまざまな特徴を持っており、UVインキの長所が生かせる分野で採用度が高くなっています。UVインキの長所と短所は次のとおりです。
▼長所
1) 速乾性であるため、生産性の向上、省力化が可能
一般油性インキによる印刷では「スノコ取り」や「風入れ」などの作業が必要となりますが、UVインキは瞬間硬化のため、これらの作業を必要としません。また、乾燥のための時間を必要としないし、乾燥させるための印刷物を置いておくスペースも不要です。速乾であるため、次工程作業が速やかに行え、生産効率が向上します。
2) 作業環境の改善が可能
一般油性インキでは裏移りを防止するためにスプレーパウダーの散布が必要となります。スプレーパウダーは当然、印刷面以外にも飛散するため作業環境を劣悪にします。一方、UVインキはスプレーパウダーを必要としないため、そのような作業環境の劣悪化が発生しません。
3) 公害対策
一般油性インキでは軽油などの溶剤を含むため、ヒートセットインキなどのように蒸発乾燥させるため、溶剤による排ガスが発生しますが、UVインキの場合には無溶剤であり排ガスの発生がなく、無公害です。臭いもそれほど発生しません。
4) 耐性面に優れている
UVインキは、耐摩擦、耐熱、耐溶剤、耐薬品などに優れています。
5) 黄変が少ない
▼短所
1) 密着性、柔軟性の不良
UVインキは、高い架橋密度で瞬間的に乾燥する反応機構であり、一般油性インキと比較して皮膜の体積収縮が大きく、印刷素材とのひずみが大きくなります。このため、印刷素材との密着性は劣る傾向にあります。
2) 網点が太りやすい
3) 水幅が狭い
乳化すると転移性が極端に悪くなります。
4) 専用の印刷材料が必要
@ 洗浄剤(ローラー洗浄剤、ブラン洗浄剤)
UVインキは一般油性インキ用の洗浄剤(洗油)に溶解しないので専用の洗浄剤が必要となります。
A ローラーおよびブランケットなどのゴム材料
一般油性インキのものではUVインキの中に含まれているモノマー、光重合開始剤などの成分がゴムに浸透し、膨潤による印刷不良やインキの乾燥不良が発生します。
5) インキの価格が高い
アクリル系プレポリマー・モノマーは、一般油性インキの主原料である軽油や乾性油とと比較して高価であり、インキの価格も高くなります。最近ではかなり安価にはなりましたが、それでも油性インキの2倍以上の価格になります。
以上のようなことが長所・短所として挙げられます。
▼UVインキの湿し水の適正管理について
UVインキは、油性インキに比べて水幅が狭いです。これには2つの要因が考えられます。
まず1つには、UVインキの用途が主として非吸収性原紙(PP、塩ビ、ユポなど)のため、湿し水が印刷面に残りやすく、前胴で供給された湿し水が後胴まで印刷面に残りやすいのです。
もう1つは、UVインキは被印刷体の違いや印刷物の種類によって、種々作り分けられています。
いずれも油性インキと異なり、組成上の違いが湿し水との関係を大幅に狭めています。いずれにしても、UV印刷における湿し水の管理が品質の良し悪しを決定づけることになるので、十分注意し、管理していただきたいです。
▼被印刷体への密着性について
UVインキは、無溶剤タイプで硬化時に体積収縮によるひずみが大きいため、一般油性インキ、グラビアインキなどの従来のインキと比較して密着性は劣る傾向にあります。
そのため、対応策として原紙にコロナ放電処理、フレーム処理、グラビアアンカー、UVアンカーを行う必要があります。また、原紙メーカーによっては原紙そのものをUV印刷用に開発したりしているのが現状です。
UV印刷をする場合には、それらの原紙に対し、1点1点密着を確認し、インキを選択することが大切です。
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