「印刷」にちょっと触れてみよう! 印刷の基礎知識

トップページへ...
◆ 基礎知識編
- 印刷物の特徴・役割
- 印刷の定義
- 印刷の4方式
- 製版法の分類
- 印刷用語集

トップページへ...
◆ 専門技術編
- オフセット印刷
- 凸版印刷
- グラビア印刷
- シルク印刷
- 主な印刷不良
- 抜きと抜き刃

トップページへ...
◆ 用紙基礎編
- 紙の寸法
- 寸法と紙取り
- 判型の由来
- 洋紙・板紙規格要項
- 洋紙に関する諸算式
- 洋紙連量表
- 板紙連量表
- タテ目とヨコ目
- 洋紙・板紙の品目分類
- 主な添加物とその役割
- 紙以外の印刷基材

トップページへ...
◆ インキ基礎編
- 光の色とインキの色
- インキの組成
- インキの種類
- 顔料の種類
- 主な添加物とその役割
- インキの主な耐性
- 油性インキとUVインキ
- インキと環境問題

トップページへ...
◆ 関連リンク
- 印刷博物館
- 日本印刷技術協会
- 日本印刷産業連合会
- 東京都印刷工業組合
- 大日本印刷(株)
- 凸版印刷(株)
- リンテック(株)
- 王子製紙(株)
- 大日本インキ化学工業
- 東洋インキ製造(株)

◆ 顔料の種類...

下図にインキの組成を示しますので、以下の話はこの図を参照しながら読み進めてください。

インキの組成
インキの組成

1) 印刷インキの組成

印刷インキは、色を着けるという重要な役目を果たす“色料”、その色料をインキ壷から被印刷体へ運び固着させる役目を果たす“ビヒクル”、インキの性能・物性を維持・向上させる役目を果たす“補助剤”から成り立っています。

今回は、これらの中で“色料”に着目することにします。

2) 染料と顔料

色料は、さらに“染料”と“顔料”に分類されます。

染料と顔料の大きな違いは、染料は水・油・アルコールに溶ける性質があるのに対して、顔料はそれらに溶けずにただ単に粒状のまま分散するという性質があります。 現在の印刷インキでは、全体の90%以上が色料として顔料が使用されています。

ここで余談ですが、なぜ色成分が顔料と呼ばれているか。それは、その昔、戦いや呪術で男も女も色の粉を練り合わせた化粧をするのが常で、顔に塗る色の粉ということからこの呼び名が付いたという説があります。

3) 無機顔料と有機顔料

ほとんどの印刷インキの色料が顔料ということですが、この顔料もさらに“無機顔料”と“有機顔料”に分類されます。

無機顔料は顔料の元祖と言ってもよく、天然の色の着いた土や石を砕いて粉にしたもので、2〜3万年前には赤土・黄土・草木、あるいは貝類を燃やして得られた煤を用いていました(天然無機顔料)。

しかし、天然無機顔料は天然の鉱物質からできているため色に安定性がなく、粒子も粗いために使い勝手が悪く、技術の発達も相伴って人工無機顔料へと移ってきました。

人工無機顔料ではさまざまな色が作られ、発達してきましたが、その元となるものは鉄やカーボンをはじめとする各種の金属を主成分とする有色の粉末であるため、環境や健康的な問題も浮上してきました。

また、このころから有機顔料の研究が進み、人工無機顔料に比べて比重・毒性・着色力・鮮色力などの点で優れていることから、人工無機顔料から有機顔料へ移り変わり、有機顔料が主流を占めるようになりました。

4) レーキ顔料とトナー顔料

有機顔料は、顔料と言いながらもその製造には染料が使われています。 染料の合成によって化学的に作られる色料が“有機顔料”です。

この有機顔料は、さらに“レーキ顔料”と“トナー顔料”とに区分されます。

レーキ顔料は、染料を水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・酸化チタンなどのような白く、水に溶けない粉末(体質顔料、フィラーとも言い、インキの光沢を低下させる性質を持つため、艶消インキや半艶消インキに用いられる)に染め付けたもので、体質顔料自体は不溶性なのでレーキ顔料も不溶性の性質を持ちます。

一方、トナー顔料は、染料を体質顔料に染め付けるのではなく、染料だけをある金属を用いて不溶性にする、あるいは化学構造を変化させて不溶解にしたものです。

なお、トナー顔料は体質顔料を使用していない分だけレーキ顔料に比べて色合いが濃くなります。

5) 有機顔料・無機顔料の比較

有機顔料と無機顔料の物性・耐性などの比較表を以下に示します。

項目 無機顔料 有機顔料
色相 ×
着色力 ×
隠蔽性 ×
耐熱性 ×
耐溶剤性 ×
耐光性
(変色するが褪色少ない)
×
(変褪色しやすい)
価格 ×
耐酸性
耐アルカリ性
×

6) 顔料の分類表

無機顔料・有機顔料の分類表を以下に示します。

構造 代表される顔料



酸化物 二酸化チタン、亜鉛華(酸化亜鉛)、酸化鉄、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー
水酸化物 アルミナ白、酸化鉄黄、ビリジアン
硫化物 硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド
クロム酸塩 黄鉛、モリブデートオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート
珪酸塩 ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青
硫酸塩 沈降性硫酸バリウム、バライト粉
炭酸塩 炭酸カルシウム、鉛白
その他 フェロシアン化物(紺青)、燐酸塩(マンガンバイオレット)、炭素(カーボンブラック)










塩基性染料 ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ
酸性染料 キノリンエローレーキ
建染染料 マラカイトグリーンレーキ
媒染染料 アリザリンレーキ




溶性アゾ カーミン6B、レーキレットC
不溶性アゾ ジスアゾエロー、レーキレット4R
縮合アゾ クロモフタルエロー3G、クロモフタルスカーレットRN
アゾ錯塩 ニッケルアゾエロー
ペンズイダゾロンアゾ パーマネントオレンジHL
フタロシアニン顔料 フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン
縮合多環顔料 フラバンスロンエロー、チオインジゴボルドー、ペリノンレッド、ジオキサドンバイオレット、キナクリドンレッド
ニトロ系顔料 ナフトールエローS
ニトロソ系顔料 ピグロントグリーンB
昼夜蛍光顔料 ルモゲンエロー、シグナルレッド
その他 アルカリブルー、アニリンブラック

7) 顔料による耐性の違い

代表的な顔料とその耐性の比較を下表に示します。

代表的な顔料 耐性
耐光 耐溶剤 耐水
ブリリアントカーミン6C
レーキッドC
ジスアゾイエロー
フタロシアニングリーン
フタロシアニンブルー
メチルバイオレットレーキ × ×
ジオキサジンバイトレット
カーボンブラック
チタンホワイト
無色 炭酸カルシウム
硫酸バリウム

現在地 ホーム印刷の基礎知識>顔料の種類