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◆ 医療医薬品・食品向け印刷物に求められる管理、作業環境...
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2. 品質管理に関する要求事項
2.1 組織体制の整備と責任・権限の明確化
とくに製造工程における組織的な管理体制の構築と各責任者の責任・権限をはっきりと決定し、実行されなければなりません。
製造部門責任者と品質管理部門責任者は可能な場合には完全に独立していることが望まれます。品質管理部門は製造部門に対して第三者的立場で監視および指示・指導できる立場であるべきという考え方からだと思われます。
品質管理部門は、製造の品質管理に対して多くの実施項目とあらゆる責任・権限を有し、したがって、組織の中では極めて重要な位置付けとされています。これらの項目の事例をいくつか挙げます。
・ 作業標準・手順の変更について検証し、承認する。
・ 文書・記録の管理状況(最新版、配付・回収、保管など)を監視し、問題があれば改善する。
・ 協力会社に製造工程を委託している場合、協力会社の管理状況を監視および評価し、問題があれば改善を管理する。
・ 品質事故が発生した場合、原因の特定、応急および是正処置を実施し、効果を確認する。
・ 関係する従業員に対する教育・訓練計画を作成し、実施し、評価および効果を確認する。
もちろん、製造部門責任者、品質管理部門責任者以外にも必要な部門・機能があれば、それらに対する責任・権限も明確に定めておきましょう。
また、決定した組織体制と責任・権限は必ず文書化し、管理された状態を維持しておかなければなりません。
2.2 手順と文書・記録の管理
ISO 9001に基づく品質マネジメントシステムを導入している印刷会社であるならば、作業標準書あるいは作業手順書などを整備して運用されていることと思います。
医療医薬品の品質管理規則であるGMPでは、品質にかかわるあらゆる作業はあらかじめ決められた手順に基づいて行われなければならず、その手順は文書化され、管理されていなければなりません。
作業を行う場合、たとえそれが改善のためとは言え、自分勝手に作業方法を変更することは許されません。決められた手順に従ってその変更の適切性、妥当性を検証し、所定の責任者が承認した上で手順書を改訂し、必要があれば配付・回収し、関連する作業者に教育・訓練を施す、という一連の流れの中で実施されなければなりません。
手順は直接的な製造作業だけでなく、例えば次に挙げるような間接的な作業に対してもしっかりと定め、暗黙の了解あるいは当たり前に行われていることであっても文書化されていなければなりません。
・ 防虫、毛髪・体毛、血液付着管理
・ 計測機器の校正、メンテナンス
・ 温湿度、照度などの作業環境の管理
・ 清掃管理
そして、これらの文書化された手順は管理された状態の中で運用、維持されていなければなりません。文書が管理されているとは次のような状態のことを言います。
・ 所定の責任者によって検証・承認され、日付とともにその証がある。
・ 文書管理番号などが付され、文書の識別がされている。
・ 版数番号および改訂日が付され、適用版(通常、最新版)が明確にされている。
・ 改訂履歴が記録され、改訂の事由・内容が分かるようになっている。
・ 文書管理台帳などに正式文書として登録されている。
・ 適用版(最新版)がしっかりと配付・回収管理され、その記録が残っている。
上記において、文書管理番号と版数番号はすべてのページに付しておくことが望ましいです。なぜならば、意図的か故意かにかかわらず、あるページが差替えられた場合にその文書が適用版(最新版)であることの保証ができなくなるからです。
また、パッと見てすぐに分かるような配慮(色分け、写真の活用、適切な文字の大きさ、インデックスなど)は、その文書を使用する側の視点に立って行うべきです。
記録は、引合い・受注から出荷に至るすべての工程の中で必要な項目に関して作成しておくことが求められます。
作成すべき記録の種類は具体的には要求されていませんが、ISO 9001あるいはISO 9004が参考になると思いますので、ここに挙げておきます。
・ 教育・訓練に関する記録
・ プロセス・製品が要求事項を満たしていることを実証するのに必要な記録
・ 顧客要求事項のレビューの結果と処置の記録
・ 購買先の評価結果と処置の記録
・ トレーサビリティの記録
・ 顧客支給品が紛失・損傷、使用に適さない場合の記録
・ 監視・測定機器の校正に関する記録
・ 内部監査の記録
・ 製品の監視・測定の記録(リリースを正式に許可した人)
・ 不適合製品の性質と処置の記録
・ 是正・予防処置の結果の記録
GMPでは記録の保管期間は3年間と定められています。直接、医療医薬品を製造しているわけではありませんが、包装あるいは表示という機能を担っていますので3年間の保管が要求されます。
また、これは細かい話になってしまいますが、記録を作成していてブランクが生じた場合、空欄のままにしておくのは書き漏らしと見なされるので、斜線などで消し込む決まりと習慣付けが必要です。さらに、書き直しのときに修正液を使うのも記録の改ざんと見なされるのでやってはいけません。二重線で消して余白に正しく書き、修正印(日付もあることが望ましい)を押すという方法をとりましょう。
以上、手順と文書・記録の管理についてまとめてみましたが、これらをもう1度眺めてみますとISO 9001で規定する文書・記録の管理要求事項を順守することでほとんどクリアできることばかりであることに気づくはずです。もう1度、自分の会社の文書・記録の管理はどう決められているのか、決められたとおり運用されているのかを確認してください。品質管理要求項目の中でも重要視される項目の1つです。
2.3 作業者の教育・訓練
作業者に対する教育・訓練もとても重要視されます。教育・訓練はここで改めて取上げるまでもなく日常的に行われている(はず?)ことですが、確認の意味も込めて要点をまとめます。
教育・訓練の項目としては、実作業トレーニングの他に次のような項目も含まれます。
・ 整理・整頓の重要性と実行
・ 清掃方法
・ 設備・機器の保守・点検
・ 防虫管理
作業環境を維持・改善するために必要となる知識や重要性の周知徹底も含めるべき大切な教育・訓練項目です。
教育・訓練を実施したならば、それが果たして意味があったものなのか、理解されているのかをチェックする仕組みを作り、機能させましょう。チェックの方法には、理解度テストや日常作業における確認などさまざまなものがあると思いますから、最も適切と思われる方法で行いましょう。
くれぐれも教育・訓練がやりっぱなしの一方通行にはならないように・・・。「ちゃんと言っておいたんですけどねぇ・・・」という責任者の言葉は、すなわちその会社のレベルの低さを露呈してしまうことになりますよ。
教育・訓練の記録は、当然残しておかなければなりません。記録内容はとくには要求されていませんが、次のような項目を含めておくとよいのではないかと思います。
・ 実施日(いつやったか)
・ 時間(どのぐらいの時間やったか)
・ タイトル(何についての教育・訓練か)
・ 内容・方法の概略、使用したテキストなど
・ 実施部署、実施者
・ 理解度と補足の必要性、その他
教育・訓練も手順をしっかりと定め、文書化されていなければなりません。計画書はどのフォーマットを使って誰がいつ作成・承認するのか、実施に際して必要な文書・記録と処置方法、有効性の確認・評価方法、教育・訓練の程度と人事評価・異動などが項目として挙げられるでしょう。必要な項目を含めて手順を定め、文書化し、実行に移してください。
この中には、検査員、試験官などのような資格認定も含まれます。必要要件、認定方法、かかわる責任・権限などを定め、決められたとおり運用しましょう。
2.4 外注管理
原則として、受注から出荷までの工程の一部または全部を協力会社に委託するのは避けたほうが無難です。委託する場合には当然、その委託先である協力会社にも同じ要求事項が適用されますから、それに耐え得る協力会社かどうかということが問題になってきます。
通常行われている外注管理に加え、作業標準・手順と文書・記録の管理のより一層の徹底、従業員に対する教育・訓練、インフラの整備など、協力会社にお願いしなければならないことは山ほどあります。つまり、自分の会社でやっていること、やるべきことを下回ってはいけないのです。下回っている協力会社に医療医薬品・食品向け印刷物の製造工程を委託してはいけないのです。
やむなく協力会社に委託せざるを得ない場合は、要求事項を監査項目・基準として委託できるかどうかしっかりと評価し、選定しなければなりません。その責任は通常、品質管理部門が負うこととなり、言うまでもなくその方法・基準を含めて監査手順は文書化され、結果は記録されていなければなりません。
医療医薬品・食品向け印刷物に求められる管理、作業環境
1. はじめに・・・
2. 品質管理に関する要求事項
3. 作業環境に関する要求事項
4. さいごに・・・
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