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4.2.3 文書管理

 品質マネジメントシステムで必要とされる文書は管理すること。ただし、記録は文書の一種ではあるが、4.2.4に規定する要求事項に従って管理すること。
 次の活動に必要な管理を規定する“文書化された手順”を確立すること。

a) 発行前に、適切かどうかの観点から文書を承認する。
b) 文書をレビューする。また、必要に応じて更新し、再承認する。
c) 文書の変更の識別及び現在の改訂版の識別を確実にする。
d) 該当する文書の適切な版が、必要なときに、必要なところで使用可能な状態にあることを確実にする。
e) 文書が読みやすく、容易に識別可能な状態であることを確実にする。
f) どれが外部で作成された文書であるかを明確にし、その配付が管理されていることを確実にする。
g) 廃止文書が誤って使用されないようにする。また、これらを何らかの目的で保持する場合には、適切な識別をする。

1. 文書管理って何をすればいいの?

この条項では、「4.2.1 一般」で規定した、“品質マネジメントシステムで必要とされる文書”の管理に関する要求事項を規定しており、文書管理についての“文書化された手順”も要求しています。 文書管理のために必要とされる活動がa)〜g)に定めてあり、これらを具体的にどのように実施するかを定め、別冊の手順書あるいは品質マニュアルに記述することになります。

ISO 9000:2000によれば、

文書:
情報(意味のあるデータ)及びそれを保持する媒体

と定義されており、紙媒体や電子媒体に記述された文字情報だけでなく、絵・図面・写真・動画(ビデオ)・色見本・限度見本・組立見本・マスターサンプルなどもあり得ます。

2. 文書は承認がなきゃダメ!

a)は、文書の承認行為についてです。94年版では「確認し、承認する」ことが要求されていましたが、2000年版では確認行為が削除されました(確認行為の実施は任意です)。これは、承認という行為の重要性を強調していることの現れだと考えられます。

また、当然と言えば当然のことですが、承認は文書の発行前に実施することも要求しています。したがって、各文書の承認に関する責任・権限を定め(「5.5.1 責任及び権限」)、承認者は自身の責任・権限をまっとうすべく、文書が妥当であると判断した限りにおいて承認するという取決めをします。発行前に承認行為を終えていることを示すためには承認の日付も管理上不可欠であると考えられます。

3. レビューと更新

b)は、文書のレビュー・更新についてです。94年版では変更があった場合の手続きについての要求でしたが、2000年版ではレビューすることに重点が置かれています。用語の定義によれば、レビューとは「設定された目標を達成するための検討対象の適切性、妥当性、有効性を判定するために行われる活動」です。

また、レビューについて“定期的”という表現はされていないので“積極的に見直しをする”ニュアンスが含まれていると考えられます。たとえば、作業のやり方が変更になった場合には年度末にまとめて見直しをするのではなく、タイムリーに見直しを実施していくということです。これは、文書は常に適切な状態を保ちましょうということに他なりません。 文書はいつ参照されるか分からないので、古い状態のままであることがないように、いつ参照しても現時点では適切と思われる情報が得られるようにしておかなければなりません。

なお、定期的な見直しは、このタイムリーな見直しを補完する歯止策としての位置付けになるでしょう。見直しの結果、変更の必要が生じた場合は、a)によって改訂版の発行前に再承認します。

4. 変更・改訂版の識別

c)は、文書の変更・改訂版の識別です。作業・業務は文書に定められたルールに従って実施されますが、改善活動や技術の進歩、設備の導入、顧客クレーム対策などによってそのルールが変更されることはよくあることで、該当する文書も改訂されなければなりません。

このとき、その文書が改訂されたものであるということを示すために版番号(版数)を採用するというのが文書の変更の識別の常識的な方法です。たとえば、文書が新規に制定されれば第0版で、改訂されるたびに第1版、第2版、・・・と版番号を繰り上げていくことにより、その文書がどの変更に当たるのか分かるようになります。

また、現在の改訂版(現行の版=今現在、生きていて通用する版)がどれなのかを分かるようにすることも要求されています。現行の版とは最新版を指すことが通常です。 使おうとしている文書の版番号から、それが現行の版であるかどうかを分かるようにするための方法として一般的なのは、「文書管理台帳」などで版を含めた状態管理をすることです。また、文書を配付している場合(d)項を参照)には、その配付先へも「文書管理台帳」を添付し、適切な版の状態が分かるようにする必要があります。

5. 適切な版を常に使える状態に!

d)は、適切な版の利用についての要求です。文書は使いたい人が使いたいときすぐに使えるような状態になければ意味がありません。広くはない事務所に机が集中しているような組織ならば真ん中に文書類を設置しておけば事足りるかもしれませんが、離れた複数部署で必要としている場合にはコピーを配付する必要があります。 このとき、決して配布になってはいけません。きちんと配付しましょう。

配布:
何も管理することなく、ただ、バラまくこと(国語辞書によれば、広く配って行き渡らせること)

配付:
管理されている状態で必要なところにきちんと配ること(「付」とは特定の人に渡すこと)

「適切な版」とは、最新版を指すことが通常ですが、場合によっては廃止(旧版)文書が適用される場合もあり得ます(g)項によって、適切な識別をすることが要求されています)。 配付の管理とは、どの文書の、どの版(最新版、適切な版)が、どこに、どれだけ配付されているか分かるようにすることですが、もちろん配付しっぱなしになってはいけません。 配付したときには回収(あるいは適切な識別)も忘れずにやりましょう。「配付・回収管理表」といったもので管理するとよいでしょう。

6. 文書は読みやすく、識別可能に!

e)は、文書の読みやすさ、識別可能性についてです。文書の読みやすさとは、表現の分かりやすさとか理解のしやすさといったことではなく、読めない(判読できない)ところがないかどうかということです。 また、外国人労働者を雇っているような場合を想定すると、たとえば、日本語がまったく分からないとすれば、日本語で書かれた手順書を見せても判読できないということになります(この場合、日本語はただの意味不明な記号・・・)。 このような場合には、その国の言語で書かれた手順書を準備する必要が出てきます。

識別とは、手順書を見てそれが何の手順書なのか分かるようにするということです。通常行われているのは、文書名称、文書番号などを文書の見やすい場所に表記しておくということです。

7. 外部文書の管理

f)は、外部文書の識別、配付管理についてです。外部文書とは、品質マネジメントシステムに取込んで使用する、

・ 顧客など外部の組織で制定・改訂される文書
・ 品質マネジメントシステムの適用範囲外の部門・部署で制定・改訂される文書
・ 品質マネジメントシステム以外の他のシステムで管理される文書

などのことを言います。具体的には、

・ 顧客からの設計図面、仕様書
・ 設備の取扱説明書
・ 公的規格、業界規格
・ 自治体の要綱、基準、条例
・ 環境マネジメントシステムで管理されている規定書

などが外部文書です。 これらの文書は勝手に内容を変更することはできず、それに従うだけです。外部文書に対しては、「それは外部文書だよ!」ということが分かるような識別をし、配付する必要があればその管理もしなさいということが求められています。 もちろん、この2つ以外にも責任・権限を含む

・ 外部文書の受取りの管理
・ 品質マネジメントシステムに取込むかどうかの判断
・ 外部で改訂された場合の差替え

などに関する管理を追加しても構いません。

8. 廃止文書の誤使用がないように!

g)は、廃止文書の管理についてです。旧版などの廃止文書は通常使用しませんが、場合によっては使用しなければならないことがあるかもしれません。このような場合は旧版文書を保管しておくことになりますが、誤った使われ方がされないような識別をする必要があります。 たとえば、文書の目立つところに「旧版」と朱記する方法があります。

9. 不適合・改善要望事例

不適合・改善要望事例規格要求事項
検査工程で手順書の配付状況を確認したところ、検査員Aさんが所持している手順書が旧版であった。 得意先による査察で発見された指摘事項で、工程責任者が配付・回収まで認識しておらず、また、内部監査のチェック項目からも漏れていた。
契約書のコピー、包装指示書など、承認日のない文書や改訂管理ができていない文書がある。 a)発行前に、・・・承認する。b)文書をレビュー・・・、再承認する。c)文書の変更の・・・確実にする。
商品マスター変更に関する承認、記録等の手順が定められていない。 b)文書を・・・、再承認する。c)文書の変更の・・・確実にする。
是正処置対策として「印刷抜き取りチェック表」が2〜3か月前から実施され、定着しているが、2000-3-15改訂の作業標準書として文書化されていない。 b)文書を・・・、再承認する。
「受注仕様書」の新・旧を識別する方法が定められていない。 c)文書の変更の・・・確実にする。
原稿内に新・旧の資料が一緒に入っており、目で分かるような識別表示のないものがある。 c)文書の変更の・・・確実にする。
製版データの新・旧の違い、識別が不明確である。 c)文書の変更の・・・確実にする。
「受注確認書」と「正式注文書」を一緒に綴じているものといないものがあるが、「受注確認書」と「正式注文書」との関係が不明確で、綴じ方のルールがない。 e)文書が読みやすく、・・・確実にする。
製版データを保存するフォルダの中で未定義のフォルダがあり、誰でも分かるような管理がされていない。 e)文書が読みやすく、・・・確実にする。
安全衛生・有機溶剤等についての外部文書の管理の手順が定められていない。 f)どれが外部で作成・・・確実にする。
廃止文書(有効期限切れの契約書など)の保管・管理がされておらず、その手順も定められていない。 g)廃止文書が誤って・・・、適切な識別をする。
顧客から受付けした「データ原稿」を管理する手順が文書化されていない。電子媒体として保管しているデータのMOの表示ラベルには日付しか表示がなく、品質マニュアルで定めた識別と整合していない。 品質マネジメントシステムで・・・管理すること。次の活動に・・・確立すること。f)どれが外部で・・・確実にする。

★ヤッスー部長より一言★

文書管理は、品質マネジメントシステムの中で柱となる要求事項の1つですが、あまりにも詳細に手順を決めてしまう(重い仕組みにしてしまう)と機能しなくなる部分でもあります。当方では、

・ 文書名の表示
・ 版数の表示
・ 作成・確認・承認の印
・ 改訂履歴の記録
・ 配付・回収の管理

を実施することにしており、最低限の管理だと考えているのですが、現実には実施できていない状況です。この重要な要求事項をいかに簡素化して確実に実施できるようにするかがポイントであると考えられます。

一過性の文書(一時的な指示書、作業指導書など)はどのように管理するのかが話題になったことがあるのですが、a)〜g)のすべての要求事項を実施するのは非常に困難であり、当てはまらない(当てはめられない、当てはめにくい)要求事項もいくつかあるでしょう。 たとえば、改訂の必要がないのであればb)、c)、g)が該当しないかもしれません。このような場合はa)〜g)のすべてを無理に適用させずに必要とされる最低限の要求事項(たとえば、a)、d)、e))を適用すればよいと考えます。

要するに、a)〜g)の文書管理要求事項を漏れなくひとつひとつ順守することではなく、a)〜g)をうまく使い分けて間違いのない適切な文書管理をしていくことが大切なのだと思います。

<格言>  ⇒格言募集中!
・ 文書管理の目的は要求事項の順守ではなく、文書を管理すること!

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