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◆ JIS Q 14004 環境マネジメントシステム−原則、システム及び支援技法の一般指針

0. 序文

 この規格は、2004年に第2版として発行されたISO 14004:2004、Environmental management systems - General guidelines on principles,systems and support techniquesを翻訳し、技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。

 なお、この規格で点線の下線を施してある箇所は、原国際規格にはない事項である。

 環境の質を継続的に改善しようとする関心が高まるにつれて、あらゆる種類及び規模の組織が、その活動、製品及びサービスの環境影響にますます目を向けつつある。組織の環境パフォーマンスは、内部及び外部の利害関係者にとって重要である。健全な環境パフォーマンスを達成するには、体系的な取組み及び環境マネジメントシステム(EMS)の継続的改善に対する、組織としてのコミットメントが必要である。

 この規格の一般的な目的は、環境マネジメントシステムを実施又は改善し、それによって環境パフォーマンスを改善しようとする組織を支援することである。また、この規格は、持続可能な開発の概念に沿うとともに、多様な文化的、社会的及び組織上の枠組み、並びにマネジメントの諸システムとも両立可能である。

 この規格はあらゆる種類、規模及び成熟度の組織、並びにあらゆる分野及び地理的場所にある組織に使用できる。中小企業(SME)の特殊なニーズを取り入れ、この規格は中小企業のニーズに合わせ、中小企業による環境マネジメントシステムの利用を促進している。

 この規格は、ISO/TC 207で作成された環境マネジメント規格のシリーズの一部である。このシリーズでは、ISO 14001(JIS Q 14001)だけが、認証/登録又は自己宣言を行うために客観的に監査できる要求事項を含んでいる。この規格は、環境マネジメントシステムを実施すること及び組織のマネジメント全体との関係強化を図ることの両方を支援するための例示、説明及び選択肢を含む。 この規格による指針は、JIS Q 14001の環境マネジメントシステムモデルに整合しているが、JIS Q 14001の要求事項に関する解釈を行おうとするものではない。使いやすくするために、JIS Q 14001の4.の項番号はJIS Q 14004の番号と同じにしてある。しかし、JIS Q 14004にはJIS Q 14001にはない項目があり(例えば、4.3.1.1、4.3.3.3など)、効果的な環境マネジメントシステムの実施に関する詳細な又は補足的な手引として役に立つであろう。 ISO/TC 207で作成された規格のシリーズの中には、この規格及びJIS Q 14001以外にも多数の環境マネジメント規格がある。それらの規格の参照及び説明は、ISO出版物であるThe ISO 14000 Family of International Standards(国際規格ISO 14000ファミリー)にある。

 この規格は、環境マネジメントシステムの諸要素を記述し、いかにして環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維持し、又は改善するかについての手引を組織に提供する。このようなシステムは、環境との相互作用を予測し、特定し、管理し、環境目標を達成し、適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を継続的に順守することを確実にする組織の能力を大幅に高めることができる。

 この規格では全体にわたって、分かりやすくするために、例示及び取組みを紹介している。それらは唯一の可能性を示そうというわけでもなければ、それらがどの組織にも必ず合致するというわけでもない。環境マネジメントシステムの設計及び実施又は改善にあたって、組織は自らの状況に適した取組みを選択するとよい。環境マネジメントは、組織のマネジメントシステム全体に不可欠な部分である。 環境マネジメントシステムの設計は、継続する相互に作用しあうプロセスである。環境方針、目的及び目標を実施するための、体制、責任、慣行、手順、プロセス及び資源は、他の領域(例えば、運営、財務、品質、労働安全衛生)における既存の取組みとの間で調整することができる。

 この規格を読みやすく理解しやすくするために、実践の手引及び一般の手引が本文とは分けられ四角の枠内に示されている。

 環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維持し又は改善する管理者にとってかぎ(鍵)となる作業は、次のような必要事項を含む。

− 環境マネジメントが組織の最優先事項の1つであると認識する。
− 内部及び外部の利害関係者とのコミュニケーション及び建設的な関係を確立し、維持する。
− 組織の活動、製品及びサービスにかかわる環境側面を特定する。
− 組織の環境側面に関係する法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定する。
− 説明責任及び実行責任を明確に割り当てることによって、経営層、及び組織で働く又は組織のために働くすべての人々を環境の保全に確実に関与させる。
− 製品又はサービスのライフサイクルを通じた環境計画を奨励する。
− 環境目的及び目標を達成するためのプロセスを確立する。
− 適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を順守し、継続的に環境目的及び目標を達成するように、教育訓練を含めて、適切かつ十分な資源を提供する。
− 組織の環境方針、目的及び目標に照らして環境パフォーマンスを評価し、必要に応じて改善を進める。
− 環境マネジメントシステムの監査及びレビューを行い、システム及びその結果としての環境パフォーマンスを改善する機会を見出すための経営管理上のプロセスを確立する。
− 請負者及び供給者に環境マネジメントシステムを確立するように奨励する。

 組織は、この規格又は関係するJIS又はISO文書をさまざまな方法で利用してもよい。それには次を含む。

− この規格が自己宣言又はその他の適合性評価の目的ではないことを認識したうえで、環境マネジメントシステムの確立、実施、維持又は改善の手引として。
− 環境マネジメントシステムの実施又は改善を支援するものとして。

 方法の選択にあたっては、次のような要因が考慮される。

− 組織の目指すところ
− 組織のマネジメントシステムの成熟度(すなわち、組織が環境問題を容易に取り込めるようになっているマネジメントシステムを導入しているか)
− 市場での組織の現在及び今後期待する位置、評判、対外関係、及び利害関係者の見解などの要因によって決定される、可能性のある有利性及び非有利性
− 組織の規模

 効果的な環境マネジメントシステムは、組織が、その活動、製品及びサービスの環境への悪影響を回避し、低減し又は抑制することを助け、適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項への順守を達成し、環境パフォーマンスを継続的に改善する手助けとなる。

 環境マネジメントシステムをもつことは、組織が利害関係者に対して次の事項を保証する助けとなる。

− 経営者コミットメントが存在し、方針、目的及び目標の規定を満たしている。
− 予防を重視している。
− 妥当な配慮及び規制の順守の証拠を示すことができる。
− システム設計に継続的改善のプロセスを取り入れている。

 経済的利益が環境マネジメントシステムを実施することによって得られる。マネジメントシステムに環境マネジメントシステムを組み入れる組織は、経済的な利害と環境上の利害とを均衡させ、統合するための枠組みをもつ。組織にとっての健全な環境マネジメントの価値を利害関係者に示すことも経済的利益の1つであることが分かる。 また、環境マネジメントシステムは、環境目的及び目標を特定の財務的な成果と結びつける機会、並びにそれによって財務及び環境の両面で最大の利益が得られるように資源を確実に配分する機会を組織に与える。環境マネジメントシステムを実施している組織は、顕著な競争上の優位性を獲得することができる。

 環境パフォーマンスの改善に加えて、効果的な環境マネジメントシステムに伴う潜在的な利益には、次の事項が含まれる。

− 実証可能な環境マネジメントへのコミットメントを顧客に保証すること
− 一般の人々又は地域社会と良好な関係を維持すること
− 投資家の基準を満たし、資金調達を改善すること
− 妥当なコストで保険がかけられること
− イメージ及び市場占有率を高めること
− 原価管理を改善すること
− 責任問題に至る出来事を減らすこと
− 投入原材料及びエネルギーを節約すること
− 許認可の取得を容易にし、その要求事項を満たすこと
− 供給者、請負者及び組織で働く又は組織のために働くすべての人の間で環境上の自覚を促進すること
− 環境問題の解決策についてその開発を促進し共有すること
− 産業界と政府間の関係を改善すること

1. 適用範囲

 この規格は、環境マネジメントシステムの確立、実施、維持又は改善、並びに他のマネジメントシステムの調整に関する手引を提供する。

参考
 このシステムは労働安全衛生問題を管理することを意図したものではないが、組織が統合的な環境及び労働安全衛生マネジメントシステムの実施を求めている場合は、それを含めてもよい。

 この規格の指針は、規模、種類、立地又は成熟度を問わず、どのような組織にも適用可能である。

 この規格の指針は、JIS Q 14001環境マネジメントシステムモデルと整合してはいるが、JIS Q 14001:2004の要求事項の解釈の提供を意図したものではない。

備考
 この規格の対応国際規格を、次に示す。
 なお、対応の程度を表す記号は、ISO/IEC Guide 21に基づき、IDT(一致している)、MOD(修正している)、NEQ(同等でない)とする。
ISO 14004:2004、Environmental management systems - General guidelines on principles,systems and support techniques(IDT)

2. 引用規格

 引用規格はない。この項は、旧版(JIS Q 14004:1996)と項番号を一致させておくためにある。

3. 用語及び定義

 この文書には、次の用語と定義を適用する。

3.1 監査員(auditor)

 監査を行う力量をもった人。
[JIS Q 9000:2000、3.9.9]

3.2 継続的改善(continual improvement)

 組織(3.20)の環境方針(3.13)と整合して全体的な環境パフォーマンス(3.11)の改善を達成するために環境マネジメントシステム(3.9)を向上させる繰り返しのプロセス。

備考
 このプロセスはすべての活動分野で同時に進める必要はない。

[JIS Q 14001:2004、3.2]

3.3 修正(correction)

 検出された不適合(3.18)を除去するための処置。

参考
 JIS Q 9000:2000、3.6.6から部分的に採用。

3.4 是正処置(corrective action)

 検出された不適合(3.18)の原因を除去するための処置。
[JIS Q 14001:2004、3.3]

3.5 文書(document)

 情報及びそれを保持する媒体。

参考1.
 媒体としては、紙、磁気、電子式若しくは光学式コンピュータディスク、写真若しくはマスターサンプル、又はこれらの組合せがあり得る。

参考2.
 JIS Q 9000:2000、3.7.2から部分的に採用。

[JIS Q 14001:2004、3.4]

3.6 環境(environment)

 大気、水、土地、天然資源、植物、動物、人及びそれらの相互関係を含む、組織(3.20)の活動をとりまくもの。

参考
 ここでいうとりまくものとは、組織(3.20)内から地球規模のシステムにまで及ぶ。

[JIS Q 14001:2004、3.5]

3.7 環境側面(environmental aspect)

 環境(3.6)と相互に作用する可能性のある、組織(3.20)の活動又は製品又はサービスの要素。

参考
 著しい環境側面は、著しい環境影響(3.8)を与えるか又は与える可能性がある。

[JIS Q 14001:2004、3.6]

3.8 環境影響(environmental impact)

 有害か有益かを問わず、全体的に又は部分的に組織(3.20)の環境側面(3.7)から生じる、環境(3.6)に対するあらゆる変化。
[JIS Q 14001:2004、3.7]

3.9 環境マネジメントシステム(environmental management system、EMS)

 組織(3.20)のマネジメントシステムの一部で、環境方針(3.13)を策定し、実施し、環境側面(3.7)を管理するために用いられるもの。

参考1.
 マネジメントシステムは、方針及び目的を定め、その目的を達成するために用いられる相互に関連する要素の集まりである。

参考2.
 マネジメントシステムには、組織の体制、計画活動、責任、慣行、手順(3.23)プロセス及び資源を含む。

[JIS Q 14001:2004、3.8]

3.10 環境目的(environmental objective)

 組織(3.20)が達成を目指して自ら設定する、環境方針(3.13)と整合する全般的な環境の到達点。
[JIS Q 14001:2004、3.9]

3.11 環境パフォーマンス(environmental performance)

 組織(3.20)の環境側面(3.7)についてのその組織のマネジメントの測定可能な結果。

参考
 環境マネジメントシステム(3.9)では、結果は、組織(3.20)の環境方針(3.13)、環境目的(3.10)、環境目標(3.14)及びその他の環境パフォーマンス要求事項に対応して測定可能である。

[JIS Q 14001:2004、3.10]

3.12 環境パフォーマンス指標(environmental performance indicator、EPI)

 組織(3.20)の環境パフォーマンス(3.11)についての情報を提供する特定の表現。
[JIS Q 14031:2000、2.10]

3.13 環境方針(environmental policy)

 トップマネジメントによって正式に表明された、環境パフォーマンス(3.11)に関する組織(3.20)の全体的な意図及び方向付け。

参考
 環境方針は、行動のための枠組み、並びに環境目的(3.10)及び環境目標(3.14)を設定するための枠組みを提供する。

[JIS Q 14001:2004、3.11]

3.14 環境目標(environmental target)

 環境目的(3.10)から導かれ、その目的を達成するために目的に合わせて設定される詳細なパフォーマンス要求事項で、組織(3.20)又はその一部に適用されるもの。
[JIS Q 14001:2004、3.12]

3.15 利害関係者(interested party)

 組織(3.20)の環境パフォーマンス(3.11)に関心をもつか又はその影響を受ける人又はグループ。
[JIS Q 14001:2004、3.13]

3.16 内部監査(internal audit)

 組織(3.20)が定めた環境マネジメントシステム監査基準が満たされている程度を判定するために、監査証拠を収集し、それを客観的に評価するための体系的で、独立し、文書化されたプロセス。

参考
 多くの場合、特に中小規模の組織の場合は、独立性は、監査の対象となる活動に関する責任を負っていないことで実証することができる。

[JIS Q 14001:2004、3.14]

3.17 マネジメントパフォーマンス指標(management performance indicator、MPI)

 組織(3.20)の環境パフォーマンス(3.11)に影響を及ぼす、様々な経営取組みについての情報を提供する、環境パフォーマンス指標(3.12)。
[JIS Q 14031:2000、2.10.1]

3.18 不適合(nonconformity)

 要求事項を満たしていないこと。
[JIS Q 9000:2000、3.6.2]

3.19 操業パフォーマンス指標(operational performance indicator、OPI)

 組織(3.20)の操業における環境パフォーマンス(3.11)についての情報を提供する、環境パフォーマンス指標(3.12)。
[JIS Q 14031:2000、2.10.2]

3.20 組織(organization)

 法人か否か、公的か私的かを問わず、独自の機能及び管理体制をもつ、企業、会社、事業所、官公庁若しくは協会、又はその一部若しくは結合体。

参考
 複数の事業単位をもつ組織の場合には、単一の事業単位を1つの組織と定義してもよい。

[JIS Q 14001:2004、3.16]

3.21 予防処置(preventive action)

 起こり得る不適合(3.18)の原因を除去するための処置。
[JIS Q 14001:2004、3.17]

3.22 汚染の予防(prevention of pollution)

 有害な環境影響(3.8)を低減するために、あらゆる種類の汚染物質又は廃棄物の発生、排出、放出を回避し、低減し、管理するためのプロセス、操作、技法、材料、製品、サービス又はエネルギーを(個別に又は組み合わせて)採用すること。

参考
 汚染の予防には、発生源の低減又は排除、プロセス、製品又はサービスの変更、資源の効果的使用、代替材料及び代替エネルギーの利用、再利用、回収、リサイクル、再生、処理などがある。

[JIS Q 14001:2004、3.18]

3.23 手順(procedure)

 活動又はプロセスを実行するために規定された方法。

参考1.
 手順は文書化することもあり、しないこともある。

参考2.
 JIS Q 9000:2000、3.4.5から部分的に採用。

[JIS Q 14001:2004、3.19]

3.24 記録(record)

 達成した結果を記述した、又は実施した活動の証拠を提供する文書(3.5)。

参考
 JIS Q 9000:2000、3.7.6から部分的に採用。

[JIS Q 14001:2004、3.20]

4. 環境マネジメントシステムの要素

4.1 一般

4.1.1 環境マネジメントシステムモデル

 この規格で説明される環境マネジメントシステムは、“Plan-Do-Check-Act(PDCA)”マネジメントモデルに従う。環境マネジメントシステムモデル及び継続的改善プロセスを、図1に示す。PDCAモデルの詳細については、実践の手引−環境マネジメントシステムモデルを参照。

(ここに「図1 この規格の環境マネジメントシステムモデル」が入る)

 環境マネジメントシステムは組織化の枠組みであるとみなすことが最も適切であり、この枠組みは、内部及び外部要因の変化に対応して組織の環境マネジメントに効果的な方向を与えるために、継続的に監視され、定期的にレビューされるとよい。組織内のすべての階層が、適宜、環境のための改善を行う責任を受け入れるとよい。

 環境マネジメントシステムを初めて確立しようとするとき、組織は、例えば、主として著しい環境側面に関係する当面のコスト削減又は規制順守に的を絞ることによって、目に見える利益があるところから始めるとよい。環境マネジメントシステムの形が整えられるに従って、手順、実施計画及び技術は環境パフォーマンスを更に改善するように整備されることがある。環境マネジメントシステムが成熟するに従って、すべての事業上の決定に環境配慮を及ぼすことができるようになる。

実践の手引−環境マネジメントシステムモデル

 PDCAは、環境マネジメントシステムに対するトップマネジメントのリーダーシップ及びコミットメントに基づいて、組織がその環境方針(4.2参照)を確立し、実施し、維持することができるようにする継続的な繰り返しのプロセスである(4.1.2参照)。環境に関して組織の現状を評価(4.1.4参照)した後の継続的プロセスのステップは次のようになる。

a) Plan:継続的な計画のプロセス(4.3参照)を確立する。これによって、組織は次の事項ができるようになる。

1) 環境側面及びそれに伴う環境影響を特定する(4.3.1参照)。
2) 適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定し、監視し、適宜内部パフォーマンス基準を設定する(4.3.2参照)。
3) 環境目的及び目標を定め、それを達成するための実施計画を作成する(4.3.3.1及び4.3.3.3参照)。
4) パフォーマンス指標を開発し、使用する(4.3.3.3参照)。

b) Do:環境マネジメントシステムを実施し、運用する(4.4参照)。

1) マネジメント体制を作り、適切な権限をもつ役割及び責任を割り当てる。
2) 適切な資源を提供する(4.4.1参照)。
3) 組織で働く又は組織のために働く人の教育訓練を実施し、自覚及び力量を確実にする(4.4.2参照)。
4) 内部及び外部コミュニケーションのためのプロセスを確立する(4.4.3参照)。
5) 文書類を確立し、維持する(4.4.4参照)。
6) 文書管理を確立し、実施する(4.4.5参照)。
7) 運用管理を確立し、維持する(4.4.6参照)。
8) 緊急時への準備及び対応を確実にする(4.4.7参照)。

c) Check:環境マネジメントシステムプロセスを評価する(4.5参照)。

1) 継続的な監視及び測定を実施する(4.5.1参照)。
2) 順守の状況を評価する(4.5.2参照)。
3) 不適合を特定し、是正処置及び予防処置をとる(4.5.3参照)。
4) 記録を管理する(4.5.4参照)。
5) 定期的に内部監査を実施する(4.5.5参照)。

d) Act:環境マネジメントシステムを改善するためにレビューし、処置をとる(4.6参照)。

1) 適切な間隔で環境マネジメントシステムのマネジメントレビューを実施する(4.6.1参照)。
2) 改善に関する領域を特定する(4.6.2参照)。

 この継続的な改善プロセスによって、組織は、その環境マネジメントシステム及び環境パフォーマンス全体を継続的に改善することができるようになる。

4.1.2 トップマネジメントのコミットメント及びリーダーシップ

 成功を確実にするために、環境マネジメントシステムを確立し又は改善する初期段階には、組織の活動、製品及びサービスの環境マネジメントを改善する旨の、組織のトップマネジメントのコミットメントを得ることが必要である。トップマネジメントの継続的なコミットメント及びリーダーシップが決定的に重要である。 環境マネジメントシステムによって避けることができる課題とともに、環境マネジメントシステムがもたらす利点を明らかにすることは、トップマネジメントのコミットメント及びリーダーシップを確かなものにするのに役立つであろう。

4.1.3 環境マネジメントシステムの適用範囲

 トップマネジメントは、組織の環境マネジメントシステムの適用範囲を定める必要がある。すなわち、トップマネジメントは、環境マネジメントシステムが適用される組織の境界を定めるとよい。環境マネジメントシステムの適用範囲が定まれば、定められた適用範囲内にある組織のすべての活動、製品及びサービスを環境マネジメントシステムに含めるとよい。

4.1.4 初期環境レビュー

 既存の環境マネジメントシステムをもたない組織は、レビューを手段として、環境に関する組織の現状を評価するとよい。このレビューのねらいは、環境マネジメントシステムを確立する基礎として、組織の活動、製品及びサービスの環境側面を考慮することにある。

 既に環境マネジメントシステムをもつ組織は、このようなレビューを実施する必要はないかもしれないが、レビューを実施すれば、環境マネジメントシステムの改善に役立つこともある。

 レビューは、次の4つのかぎ(鍵)となる分野を含むとよい。

a) 通常の操業状況、立ち上げ及び停止を含む非通常の状況、緊急事態及び事故などに伴うものを含む、環境側面の特定。
b) 適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項の特定
c) 調達及び契約活動に伴うものを含む、既存の環境マネジメントの慣行及び手順の検討
d) 過去に発生した緊急事態及び事故の評価

 レビューでは、次のような事項を考慮することがある。

− 次の事項と比較したパフォーマンスの評価:適用可能な内部基準、外部標準、規制、行動規範、並びに一連の原則及び指針
− コスト削減の機会を含む、競争上の優位性を得るための機会
− 利害関係者の見解
− 環境パフォーマンスを実現又は阻害する可能性のある、組織のその他のシステム

 レビューの結果は、環境マネジメントシステムの適用範囲を設定すること、環境方針を策定し又は向上させること、環境目的及び目標を設定すること、適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項への順守を維持するための取組みの有効性を判定することなどにおいて、組織を支援するために利用することができる。

実践の手引−初期環境レビュー

 既存の環境マネジメントの慣行及び手順の検討に利用できる方法には、次のようなものがある。

a) 現在及び過去の、組織の活動、製品及びサービスの適用範囲を決定するための、現在組織で働く若しくは組織のために働く人、又は過去に働いていた人との面談
b) 苦情、適用可能な法的要求事項又は組織が同意するその他の要求事項、過去の環境又は関連する出来事及び事故などを含む、組織の利害関係者との間で交わされた内部及び外部コミュニケーションの評価
c) 次のような、現行のマネジメントの慣行に関する情報の収集

1) 危険な化学薬品の購入に関するプロセス管理
2) 化学薬品の保管及び取扱い(例えば、二次格納施設、配合が禁じられる化学薬品の管理、保管)
3) 漏えい排出物の管理
4) 廃棄物処理方法
5) 緊急事態への準備及び対応機器
6) 資源の利用(例えば、勤務時間以後の事務所照明の使用)
7) 工事中の植物及び生息環境の保護
8) プロセスの一時的な変更(例えば、水への肥料の放出に影響する輪作パターンの変更)
9) 環境上の教育訓練実施計画
10) 運用管理手順のレビュー及び承認プロセス
11) 監視記録の完全さ及び/又は履歴記録検索のしやすさ

 レビューは、組織の活動、製品及びサービスの性質に応じて、チェックリスト、プロセスフローチャート、面談、直接的な検査、過去及び現在の測定、前回までの監査の結果又はその他のレビューを用いて行うことができる。レビューの結果は、適用範囲を定め、環境方針を含めて組織の環境マネジメントシステムを確立し又は強化することに役立つように文書化しておくとよい。

4.2 環境方針

 環境方針は、組織の行動の原則を確立する。それは、組織に要求される環境責任及びパフォーマンスの水準を定めるもので、これに照らしてその後のすべての行動が判断されることになる。方針は、組織の活動、製品及びサービス(環境マネジメントシステムの定められた適用範囲内)の環境影響に対して適切であり、目的及び目標の設定の手引となるとよい。

 政府、業界団体、市民グループを含む数多くの国際組織が、指導原則を作成している。そのような指導原則は、組織が環境へのコミットメントの全体的な適用範囲を定める助けとなる。また、それらは、異なる組織に共通した一連の価値を与えるのに役立つ。環境方針は、それを策定する組織と同様に個別的であるが、これらのような指導原則は組織が環境方針を策定する際に参考となる。 環境方針を設定する責任は、組織のトップマネジメントにある。環境方針は、組織のその他の方針文書に含まれたり、関係付けられることがある。組織の経営層は、方針を実施し、方針の策定及び修正へのインプットを提供する責任がある。方針は、組織で働く又は組織のために働くすべての人に伝えるとよい。さらに、方針は一般の人が入手可能であるとよい(外部コミュニケーション方法については、4.4.3.2を参照)。

 環境方針を策定する際、組織は次の事項を考慮するとよい。

a) 使命、ビジョン、中心的な価値及び信条
b) 組織のその他の方針(例えば、品質、労働安全衛生)との調整
c) 利害関係者の要求事項及び利害関係者とのコミュニケーション
d) 指導原則
e) 特定の地方又は地域の条件
f) 継続的改善及び汚染の予防に関するコミットメント
g) 法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を順守するコミットメント

実践の手引−環境方針

 環境方針は、組織の環境マネジメントシステムの定められた適用範囲内のすべての活動、製品及びサービスが、環境への影響の原因となる可能性があることを反映しているとよい。

 したがって、方針で対処する事項は、組織の性質に依存する。方針では、とりわけ次の事項に関するコミットメントに言及するとよい。

a) 環境側面に関係する適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を順守する、あるいはそれを超えることをする。
b) 汚染を予防する(実践の手引−汚染の予防を参照)
c) 環境パフォーマンス評価手順及びそれに伴う指標の開発を通じて、継続的改善を達成する。

 方針には、以上のほか、次のようなコミットメントを含むことがある。

d) 環境マネジメントの手順及び計画の統合的な利用を通じて、新規開発による著しい有害な環境影響を最小にする。
e) 環境側面を考慮に入れて製品を設計する。
f) 環境マネジメントの分野で先頭に立つ例を示す。

実践の手引−汚染の予防

 汚染の予防は、新しい製品及びサービスの設計・開発、並びにそれに伴うプロセスの開発に組み込むことができる。このような戦略をとれば、例えば、組織が製品及びサービスに伴う資源を保全し、廃棄物及び放出物を低減することに役立つ(製品設計の概念及び実作業に関する手引はTR Q 0007にある)。

 発生源の低減は、廃棄物及び放出物の生成を回避すると同時に、資源を節約するという二重の利点をもつので、最も有効な方法となることが多い。しかし、状況や組織によっては、発生源の低減による汚染の予防が現実的ではないこともある。組織は、汚染の予防の取組みを段階的に行うように考慮するとよい。このような段階的な取組みは、発生源での汚染の予防を最優先とするとよく、次のように構成することができる。

a) 発生源の低減又は排除(環境に健全な設計開発、材料の代替使用、プロセス、製品又は技術の変更、並びにエネルギー及び物質資源の効率的な使用及び節約を含む)
b) 内部での再利用又はリサイクル(プロセス又は施設内での材料の再利用又はリサイクル)
c) 外部での再利用又はリサイクル(再利用又はリサイクルのための、材料の敷地外への移転)
d) 回収及び処理(敷地内外での廃棄物の流れからの回収、環境影響を低減するための、敷地内外での放出物、排出物又は廃棄物の処理)
e) 許可されている場合には、焼却又は管理されている処分などの管理方式。ただし、組織はこれ以外の選択肢を十分に考慮してから、このような方法と用いるとよい。

4.3 計画

一般的な手引−計画

 計画は、組織の環境方針の十分な達成、その環境マネジメントシステムの確立、実施、及び維持のために不可欠である。組織は、次の要素を含む計画プロセスをもつとよい。

a) 環境側面の特定及びその中で著しいとされる環境側面の決定
b) 適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項の特定
c) 適切な場合、内部パフォーマンス基準の設定
d) 目的及び目標の設定、及びそれを達成するための実施計画の確立

 このような計画プロセスがあれば、組織は、その目標の達成に最も重要な領域に資源を集中しやすくなる。計画プロセスで作り出される情報は、教育訓練、運用管理、監視及び測定のような環境マネジメントシステムの他の部分の確立及び改善にも利用することができる。

 計画は継続的なプロセスである。これは、状況の変化、並びに環境マネジメントシステムそのもののインプット及びアウトプットに基づいて、環境マネジメントシステムの要素の確立及び実施の、並びに維持及び改善のいずれにも利用される。計画プロセスの一部として、組織は、方針コミットメント、目的及び目標、並びにその他のパフォーマンス基準の達成に関して、そのパフォーマンスをどのように測定し、評価するかを考慮するとよい。有用な取組みの1つは、計画プロセスでパフォーマンス指標を確立することである。

参考
 パフォーマンス指標及び評価に関する手引は、4.3.3.3及び4.5.1、並びにJIS Q 14031を参照。

4.3.1 環境側面

4.3.1.1 概要

 効果的な環境マネジメントシステムは、組織が環境とどのように関係し合うかを理解することから始まる(4.3.1.2参照)。環境と相互に関係し得る組織の活動、製品及びサービスの要素を環境側面と呼ぶ。放出、排出、材料の消費又は再利用、若しくは騒音の発生は、環境側面の例である。環境マネジメントシステムを実施する組織は、組織が管理できる環境側面及び組織が影響を及ぼすことができる環境側面を特定するとよい(4.3.1.3参照)。

 有害か有益かを問わず、全体的に又は部分的に環境側面から生じる環境の変化は、環境影響と呼ばれる。大気汚染、天然資源の枯渇などは有害な影響の例である。水質又は土壌の質の改善は有益な影響の例である。環境側面とそれに伴う環境影響との関係は、一種の因果関係である。組織は、環境に著しい影響を与えるか又は与える可能性がある側面(すなわち著しい環境側面)を理解するとよい(4.3.1.4参照)。

 組織は、多くの環境側面及びそれに伴う影響を与える可能性があるので、著しいとみなすものを決定するための基準及び方法を確立しておくとよい(4.3.1.5参照)。基準を確立するときは、環境特性、適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項に関する情報、利害関係者(内部及び外部)の関心事など、幾つかの要因を考慮するとよい。このような基準の中には、組織の環境側面に直接適用できるものもあれば、それに伴う環境影響に適用できるものもある。

 著しい環境側面及びそれに伴う影響を特定することは、どこで管理又は改善が必要になるかを決定し、管理運営上の行動の優先順位を設定するために必要である(4.3.1.5参照)。組織の方針、目的及び目標、教育訓練、コミュニケーション、運用管理及び監視の実施計画は、適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項、並びに利害関係者の見解も考慮に入れる必要があろうが、まず第一にその著しい環境側面についての知識に基づくとよい。 著しい環境側面の特定は、環境との関係について組織の理解を深め、環境マネジメントシステムの強化を通じた環境パフォーマンスの継続的改善に役立つ継続プロセスである。

 環境側面及び環境影響を特定し、その著しさを決定するためのアプローチは、すべての組織に適するものがただ1つあるというわけではないが、次の手引では、環境マネジメントシステムの実施又は改善を行う組織にとってかぎ(鍵)となる概念を説明する。各組織は、その適用範囲、性質及び規模にふさわしく、かつ、詳細さ、複雑さ、時間、コスト及び確実なデータの利用可能性に関して組織のニーズを満たすアプローチを選択するとよい。選択したアプローチに当てはまる手順を用いれば、一貫性のある結果を得ることを可能にする。

 更に詳しい手引及び追加的な例は、次の項目及び表A.1に含まれている。

4.3.1.2 活動、製品及びサービスの理解

 ほとんどすべての活動、製品及びサービスは、環境に対し何らかの影響を与えている。これらの影響は、活動、製品又はサービスのライフサイクル(例えば、原材料のライフサイクル、運搬から、使用及び廃棄まで)の個々のあるいはすべての段階において起こるかもしれない。それらの影響は、地方的、地域的又はグローバルであり、また短期的であったり長期的であったりし、その著しさのレベルも様々である。組織は、環境マネジメントシステムの適用範囲内の活動、製品及びサービスを理解するとよく、環境側面の特定及び評価のために、それらをグループ分けしておくと役立つかもしれない。 活動、製品及びサービスのグループ分け又はカテゴリー分けは、共通の又は類似の環境側面を特定するときに役立つ。グループ分け又はカテゴリー分けは、共通の特性に基づくことができよう。共通の特性としては、例えば、組織単位、地理的場所、作業の流れ、製品グループに用いる材料又はエネルギー、影響を受ける環境媒体(大気、水、土壌など)などが考えられる。カテゴリーの大きさは、意味ある検討ができる程度に大きく、それでいて明確に理解できる程度に小さくしておくことが有用である。

参考
 活動、製品及びサービスのカテゴリーの例については、JIS Q 14031を参照。

4.3.1.3 環境側面の特定

 組織は、その過去、現在及び計画された活動、製品及びサービスに伴う、環境マネジメントシステムの適用範囲内にある環境側面を特定するとよい。いずれの場合も、組織は、通常の操業状況、立ち上げ及び停止、並びにメンテナンスを含む非通常の操業状況、並びに緊急事態及び事故について考慮するとよい。

 組織が直接管理できる環境側面のほかに、組織は、例えば組織が利用する製品及びサービスにかかわるもの、並びに組織が提供する製品及びサービスに関係するものなど、組織が影響を及ぼすことができる側面についても考慮するとよい。活動、製品又はサービスに伴う環境側面に対する影響力を評価する場合、組織は、法的又は契約権限、組織の方針、地方又は地域の問題、並びに利害関係者に対する義務及び責任を考慮するとよい。組織は、さらに、有害物質を含む製品の購入など、組織自身の環境パフォーマンスへの影響も考慮するとよい。 このような考慮が行われる状況の例として、請負者又は二次請負者の実施する活動、製品及びサービスの設計、供給され使用される材料、物品又はサービス、市場に供給される製品の輸送、使用、再利用、リサイクルなどが含まれる。

 環境側面を特定し、理解するために、組織は、材料又はエネルギーの入出力、使用するプロセス及び技術、施設及び場所、輸送方法、人的要素(例えば、視力又は聴力の低下)などの、その活動、製品及びサービスの特性に関する定量的及び/又は定性的データを収集するとよい。さらに、次の事項に関する情報を集めておくと役立つ。

a) 組織の活動、製品及びサービスの要素と環境への潜在又は顕在化した変化との間の因果関係
b) 利害関係者の環境上の関心事
c) 政府の規制及び認可において、他の規格において、又は業界団体、学術機関などによって特定されている潜在的な環境側面

 環境側面を特定するプロセスには、組織の活動、製品及びサービスを熟知した個人の参加が有益である。環境側面を特定するためのアプローチは1つだけではないが、選択したアプローチにおいて、例えば、次の事項を考慮することができる。

− 大気への放出
− 水への排出
− 土地への排出
− 原材料及び天然資源の使用(例えば、土地使用、水の使用)
− 地方/地域社会の環境問題
− エネルギーの使用
− 放出エネルギー(例えば、熱、放射、振動)
− 廃棄物及び副産物
− 物理的属性(例えば、大きさ、形、色、外観)

 したがって、組織の活動、製品及びサービスに関係する環境側面について、次の事項を考慮するとよい。

− 設計及び開発
− 製造プロセス
− 包装及び輸送
− 請負者及び供給者の、環境パフォーマンス及び業務慣行
− 廃棄物管理
− 原材料及び天然資源の採取及び運搬
− 流通、使用及び使用後の処理
− 野生生物及び生物多様性

参考
 製品設計の環境側面に関する手引については、TR Q 0007を参照。

4.3.1.4 環境影響の理解

 環境側面を特定し、その著しさを決定する場合、組織の環境影響を理解する必要がある。利用できるアプローチは多数ある。組織は、その必要性に合致したアプローチを選択するとよい。

 組織の環境側面に伴う環境影響の種類に関して、組織によってはすぐに入手できる情報で十分であるかもしれない。他の組織においては、特性要因図、入出力若しくはマス/エネルギーバランスを示すフローチャート、又は環境影響アセスメント若しくはライフサイクルアセスメントのような別のアプローチを選択することもある。

参考
 ライフサイクルアセスメントの手引については、JIS Q 14040、JIS Q 14041、JIS Q 14042及びJIS Q 14043を参照。

 選択したアプローチは、次の事項を認識できるとよい。

a) 好ましい(有益な)環境影響及び好ましくない(有害な)環境影響
b) 顕在化した環境影響及び潜在的な環境影響
c) 大気、水、土壌、植物、動物、文化遺産など、影響を受けるであろう環境の部分
d) 地方の気象条件、地下水の水位、土壌の種類など、影響を及ぼすであろう場所の特性
e) 環境への変化の性質(例えば、地球規模の問題か局所的な問題か、影響が発生するまでの時間の長さ、時間の経過とともに影響がその強さを蓄積する可能性など)

4.3.1.5 著しい環境側面の決定

 著しさは相対的な概念であり、絶対的な基準で定めることができない。ある組織にとって著しくても、別の組織にとっては著しくないかもしれない。著しさの評価には、技術的な分析と組織による判断の両方を使うことが必要になる。基準を使用すれば、組織がどの環境側面及びそれに伴う環境影響を著しいとみなすかを確定しやすくなる。このような基準を確立し、適用すれば、著しさの評価に一貫性及び再現性が得られることになる。

 著しさの基準を確立する場合、組織は、次の事項を考慮するとよい。

a) 環境基準(影響の規模、深刻度及び継続時間、又は環境側面の種類、規模及び頻度など)
b) 適用可能な法的要求事項(許可又は規制などによる排出及び放出の制限など)
c) 内部及び外部利害関係者の関心事(組織の価値、対外的イメージ、騒音、臭気又は景観上の劣化など)

 著しさの基準は、組織の環境側面にも、それに伴う環境影響にも適用することができる。環境基準は、環境側面及び環境影響の両方に適用することができるが、多くの場合、環境影響に適用される。基準を適用する場合、組織は、各基準に伴う著しさのレベル(又は値)を、例えば、発生の可能性(確率/頻度)、とその結果(深刻度/強度)との組合せに基づいて設定することもできる。著しさを定める場合、何らかの尺度又は順位を用いると分かりやすい。 例えば、数値によって定量的に指定するか、高い、普通、低い、無視してよい、などのようなレベルによって定性的に定めることもできる。

 組織は、1つの環境側面及びそれに伴う環境影響の著しさを評価することを選択してもよいし、幾つかの基準に基づく結果を組み合わせることが有用であると見出すかもしれない。組織は、どの環境側面が著しいかを、例えば、しきい(閾)値を用いて決定するとよい。

 計画を促進するために、組織は、特定した環境側面及び著しいとみなした環境側面に関する情報を適切に維持するとよい。組織は、運用管理の必要性を理解し運用管理を決定するために、この情報を用いるとよい。特定した影響に関する情報を適宜含めるとよい。情報が最新であることを確実にするために、情報は、定期的に及び状況が変化したときに、レビューし、更新するとよい。そのためにも、環境側面に関する情報を、リスト、登録簿、データベース又はその他の形式で維持することが助けとなる。

参考
 著しい環境側面の決定は、環境影響評価を要求してはいない。

実践の手引−環境側面及び環境影響を決める場合の利用可能な情報源

 利用可能な情報源には、次の事項が含まれる。

a) パンフレット、カタログ、年次報告書などの一般的な情報文書
b) 運用マニュアル、プロセスフローチャート又は品質及び製品計画書
c) 前回の監査の報告書、初期環境レビュー又はライフサイクルアセスメントのようなアセスメント又はレビューの報告書
d) 品質、労働安全衛生などの他のマネジメントシステムからの情報
e) 技術データ報告書、発表済みの分析結果若しくは研究書、又は有害物質のリスト
f) 適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項
g) 行動規範、国内及び国際の方針書、指針及びプログラム
h) 購入データ
i) 製品仕様、製品開発データ。材料/化学品安全性データシート(M/CSDS)、又はエネルギー材料バランスデータ
j) 廃棄物リスト
k) 監視データ
l) 環境許可又はライセンス申請書
m) 利害関係者の見解、利害関係者からの要請、又は利害関係者との合意
n) 緊急事態及び事故の報告書

4.3.2 法的及びその他の要求事項

一般的な手引−法的及びその他の要求事項

 組織は、環境側面及び自らの活動、製品及びサービスに適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定しかつ参照する手順を、確立し、実施し、維持するとよい。そのような手順の目的は、様々な要求事項を認識し、組織の活動、製品及びサービスの環境側面に要求事項がどのように適用されるかを組織が決定できるようにすることにある。組織は、適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項に関する適切な情報を、組織で働く又は組織のために働くすべての人に確実に周知するとよい。組織のそのような要求事項の順守に対してその責任が関係し、またその行動が影響する可能性のあるような人々、例えば請負者または供給者を含む。

 組織は、順守を維持するために適切な行動がとれるように、新しい要求事項または要求事項の変化を予測し、それに対応するためのプロセスを設けておくとよい。組織は、さらに、適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項がいかに新たな又は変更された活動、製品及びサービスに適用され影響するかを考慮するとよい。

 適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項に関する情報を特定し、その情報を最新のものに維持するためには、種々の情報源を利用することができる。そのような情報源には、あらゆるレベルの政府機関、業界団体又は取引グループ、商業データベース及び出版物、専門のアドバイザー及びサービスなどがある。

4.3.2.1 法的要求事項

 法的要求事項とは、組織の環境側面に関係する広い意味での要求事項又は認可を指し、政府機関(国際機関、国内機関、地域機関、地方機関)によって発行され、法的強制力をもつ。

 法的要求事項は、次のような様々な形態をとる。

a) 成文法及び規則を含む法令
b) 行政命令及び指令
c) 許可、ライセンス又はその他の形式の認可
d) 監督官庁の出す命令
e) 裁判所の判決又は行政委員会等による審判
f) 慣習法又は固有法
g) 条約、協定及び議定書

 法的要求事項の追跡を容易にするために、組織は、適用可能な法的要求事項の最新の登録簿又は一覧表を維持しておけば、役立つであろう。

 組織は、さらに、既存の法的要求事項を順守する以上のことを考慮するとよいだろう。名声が高まり、競争上優位に立ち、新たな法的要求事項を先取りし、環境パフォーマンスが改善され、並びに一般の人々及び当局との関係が改善されることによって、コスト上昇の可能性を相殺することができる。

参考
 法的要求事項の順守評価に関する手引については、4.5.2を参照。

4.3.2.2 その他の要求事項

 状況及びニーズによっては、組織は活動、製品及びサービスの環境側面に適用する法的要求事項以外の要求事項に、自主的に同意することがある。そのような環境上の要求事項には、適宜次の事項を含めることができる。

a) 公的機関との合意
b) 顧客との合意
c) 規制以外の指針
d) 自発的な原則又は行動規範
e) 自発的な環境ラベル又はプロダクトスチュワードシップに関するコミットメント
f) 業界団体の要求事項
g) 地域社会グループ又はNGOとの合意
h) 組織又は親組織の公表されたコミットメント
i) 法人組織/会社の要求事項

 このようなコミットメント又は合意は、環境問題以外にも様々な問題に取り組んでいることがある。環境マネジメントシステムがこうしたコミットメント又は合意に取り組む必要があるのは、それが組織の環境側面に関係する範囲に限られる。

 組織は、自らが同意する要求事項を特定し、追跡するとよい。これを容易にするためには、組織は次のようにすることができる。

− 環境方針の中で、その他の要求事項を特定する。
− その他の要求事項の最新のものをリスト、登録簿、データベース又はその他の形式にまとめておく。

 適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項と合わせて、内部パフォーマンス基準に関する情報があれば、組織はその目的及び目標を立てやすくなる。法的要求事項及びその他の要求事項が、存在しないか又は組織のニーズを満たすには十分でない場合、組織はそのニーズを満たすように内部パフォーマンス基準を確立し、実施すればよい。内部パフォーマンス基準の例には、施設で使用又は運用管理することができる燃料又は有害物質の種類及び量に関する制限、順守すべき法的要求事項を超えた大気排出制限などを含むことができる。

実践の手引−順守へのコミットメント

 適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項の順守は、環境マネジメントシステムのコミットメントの核心である。このコミットメントは、環境マネジメントシステム計画プロセスに反映させ、環境マネジメントシステムによって実施するとよい。トップマネジメントは、その有効性を確実にするために、順守に関係する構成要素を含めて、定期的に環境マネジメントシステムの妥当性をレビューするとよい。

 便宜上、環境マネジメントシステムの順守に関係する主要な構成要素を、次のリストにまとめる。組織は、次のような目的で、プロセスを確立し、実施し、維持し、妥当な資源を提供するとよい。

a) 適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項の順守へのコミットメントを含む方針を確立する(4.2参照)。
b) 適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定し、入手し、理解する(4.3.2参照)。
c) 順守の必要性を考慮した目的及び目標を設定する(4.3.3参照)。
d) 次の事項を実施することによって、順守に関係する目的及び目標を達成する。
− 順守に関係する目的及び目標を達成するための、役割、責任、手順、手段及び日程を特定した実施計画(4.3.3.2参照)。
− 順守のコミットメント並びに順守に関係する目的及び目標を実施するための運用管理(必要に応じて手順を含む。4.4.6参照)。
e) 組織で働く又は組織のために働く自らの仕事が著しい環境側面に関連するすべての人が、適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項、その要求事項に適用される関係する手順、並びに適用可能な法的要求事項を満たすことを怠った場合の結果に関して、適切な教育訓練を確実に受けているようにする(4.4.2参照)。
f) 適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項の順守について定期的に評価を行う(4.5.2参照)。
g) 順守していない又は適合していないすべての事実(予測可能な起こり得る順守していない又は適合していない事実を含めて)を特定し、及び是正処置を特定し、実施し、追跡するために速やかな処置をとる(4.5.3参照)。
h) 適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項の順守の記録を維持し、管理する(4.5.4参照)。
i) 環境マネジメントシステムの定期的な監査を行うとき、順守に関係する事項に対応する(4.5.5参照)。
j) マネジメントレビューを行うとき、適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項の変更を考慮する(4.6.1参照)。

 順守へのコミットメントは、適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項の順守を達成し、維持するために、組織が体系的な取組みを採用するという期待を反映している。

4.3.3 目的、目標及び実施計画

一般的な手引−目的、目標及び実施計画

 計画プロセスで、組織は、環境方針に盛り込まれたコミットメントを満たし、組織のその他のねらいを達成するために、目的及び目標を設定する。目的を設定し及びレビューし、並びにそれらを達成するための実施計画を遂行するプロセスは、組織が、他の分野の環境パフォーマンスレベルを維持しながらある分野での環境パフォーマンスを改善するための体系的な基礎となる。マネジメントパフォーマンスと運用パフォーマンスはともに、目的の設定を通じて対処することができる。

4.3.3.1 目的及び目標の設定

 目的及び目標を設定するとき、組織は次のような幾つかのインプットを考慮するとよい。

a) 環境方針の中の原則及びコミットメント
b) 組織の著しい環境側面(及びその決定に際して作成された情報)
c) 適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項
d) 目的を達成することの、その他の活動及びプロセスへの効果
e) 利害関係者の見解
f) 技術的な選択肢及び実行可能性
g) 供給者及び請負者からの情報を含む、財務上、運用上及び組織上考慮する事項
h) 組織の一般へのイメージに対する可能な効果
i) 環境レビューからの所見
j) 組織のその他のねらい

 目的は、組織のトップレベルで、並びに環境方針コミットメント及び組織全体の目標を達成するための重要な活動が実施される、トップレベル以外の階層及び部門で設定されるとよい。目的は、汚染の予防、適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項の順守、並びに継続的改善のコミットメントを含めて、環境方針に整合しているとよい。

 1つの目的は、特定のパフォーマンスレベルとして直接表現することもできれば、一般的な形で表現しておいて、更に1つ又は複数の目標によって定義してもよい。目標を設定するときは、この目標は、関係する目的の達成を確実にするために満たす必要のあるパフォーマンスレベルごとに設定可能であるとよい。目標は、実施計画で定められた期間を含む必要があるかもしれない。

 組織が設定する環境目的は、組織全体の経営管理上の目的の一部とみなすとよい。このような統合は、環境マネジメントシステムだけでなく、統合されている他のマネジメントシステムの価値も高めることができる。

 目的及び目標は、組織全体に適用することもできれば、適用範囲を狭めて、特定のサイト又は個々の活動にも適用可能である。例えば、ある製造装置では、全体としてのエネルギー低減の目的が、一部門のエネルギー節約活動によって達成できることもある。しかし、状況によっては、組織の全部門が何らかの形で組織全体の目的に寄与しなければならないことがある。また、組織のそれぞれ異なる部門が、同一の全体的目的を追求してはいるが、各部門の目的を達成するためにそれぞれ異なる活動を実施することが必要な場合もある。

 目的を達成するために、組織は、異なる階層及び部門の寄与の在り方を明らかにし、組織の個々のメンバーに責任を自覚させるとよい。

 目的及び目標の達成状況を追跡するためにパフォーマンス指標を利用することができる(4.3.3.3参照)。目的及び目標の文書類及びそのコミュニケーションは、組織の目的及び目標を達成する能力を改善する。目的及び関連する目標についての情報は、その達成に責任を負う人に及び運用管理などの関係する機能を実行するためにそのような情報を必要とするその他の要員に提供するとよい。

4.3.3.2 目的及び目標を達成するための実施計画

 計画プロセスの一部に、組織の環境目的及び目標を達成するための実施計画の作成を含めるとよい。実施計画では、環境目的及び目標を達成するために必要な役割、責任、プロセス、資源、機関、優先順位及び処置を取り扱うとよい。このような処置は、個々のプロセス、プロジェクト、製品、サービス、サイト又はサイト内の施設を取り扱ってもよい。組織は、環境目的及び目標を達成するための実施計画を、組織の戦略計画プロセス内の他の実施計画と統合してもよい。 目的及び目標を達成するための実施計画は、組織が環境パフォーマンスを改善する助けとなる。実施計画は、変化に対応できるものであるとよい。環境マネジメントシステムの適用範囲内のプロセス、活動、サービス及び製品で変化が生じたら、目的及び目標、並びにそれに伴う実施計画を必要に応じて改訂するとよい。

 目的及び目標を達成するために、ある1つのプロセスに従うことが組織によって有用かもしれない。つまり、方針コミットメントごとに、そのコミットメントに対応する目的及び目標を特定し、各目的及び目標を達成するための1つ又は複数の実施計画を策定し、各実施計画を実行するために特定のパフォーマンス指標及び活動を明確にする。特定の目的及び目標は、それらにパフォーマンス指標及び活動が確実に対応するように、時には再設定する必要もある。このプロセスは、例えば方針が変更される場合又はマネジメントレビューの後に、適宜繰り返されることがある。表A.2に、このプロセスの各ステップの例を示す。

4.3.3.3 パフォーマンス指標

 組織は、測定可能な環境パフォーマンス指標を確立するとよい。このような指標は、客観的で、検証可能であり、かつ、再現性があるとよい。指標は、組織の活動、製品及びサービスに対して適切であり、その環境方針に整合し、実用的で、費用対効果が高く、技術的に実行可能なものであるとよい。このような指標を、目的及び目標の達成状況を追跡するために利用することができる。 また、指標は、これ以外の目的にも、例えば環境パフォーマンスの評価及び改善のためのプロセス全体の一部としても利用することができる。組織は、その著しい環境側面に対して適切な、環境上の、マネジメントパフォーマンス指標(MPI)及び操業パフォーマンス(OPI)をともに使用することを考慮するとよい。

 組織の環境パフォーマンス指標は、継続的改善を見ていくための重要なツールである。

参考
 環境パフォーマンス指標の選択及び使用についての更に詳しい手引については、JIS Q 14031及びISO/TR 14032を参照。

実践の手引−パフォーマンス指標

 目的に対する進ちょく(捗)は、一般に次のような環境パフォーマンス指標を用いることによって測定することができる。

a) 使用される原材料又はエネルギーの量
b) 二酸化炭素(CO2)などの排出の量
c) 完成品の量当たりの発生廃棄物
d) 原材料及びエネルギーの使用効率
e) 環境発生事象(例えば制限を超えた逸脱)の件数
f) 環境事故(例えば計画外の放出)の件数
g) 廃棄物のリサイクル率
h) 包装材料のリサイクル率
i) 製品の単位量当たりのサービス輸送距離
j) 特定の汚染物質排出量、例えば、窒素酸化物(NOx)、二酸化硫黄(SO2)、一酸化炭素(CO)、揮発性有機化合物(VOCs)、鉛(Pb)、フロン類(CFCs)
k) 環境保護への投資
l) 起訴の件数
m) 野生生物生息のために留保した土地面積

4.4 実施及び運用

一般的な手引−実施及び運用

 組織は、次の事項に必要な資源、能力、体制及び支援の仕組みを提供するとよい。

a) その環境方針、目的及び目標を達成する。
b) 組織の変化する要求事項を満たす。
c) 環境マネジメントシステムにかかわる事項について利害関係者とコミュニケーションを行う。
d) 組織の環境パフォーマンスを改善するための環境マネジメントシステムの継続的運用及び継続的改善に備える。

 環境にかかわる事項を効果的に管理するために、環境マネジメントシステムは、既存のマネジメントシステムプロセスと効果的に整合し統合されるように、設計又は改定されることができる。このような統合は、環境上の及びその他の組織上の目的並びに優先順位の間に対立がある場合に、組織がそれらの間のバランスをとり、その対立を解決するための助けとなる。

 統合によってメリットのあるマネジメントシステムの要素には、組織の方針、資源配分、運用管理及び文書類、情報及び支援システム、教育訓練及び開発、組織及び説明責任体制、報償及び評定システム、測定及び監視システム、内部監査プロセス、コミュニケーション及び報告などが含まれる。

4.4.1 資源、役割、責任及び権限

 組織の経営層は、環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維持し、改善するために適切な資源を決定し、提供するとよい。こうした資源は、適切な時期に、効果的に提供するとよい。

 環境マネジメントシステムの実施及び維持に必要な資源を特定するときは、次の事項を考慮するとよい。

− インフラストラクチャー
− 情報システム
− 教育訓練
− 技術
− 運用に特有の財務資源、人的資源及びその他の資源

 資源配分では、組織の現在のニーズと今後のニーズをともに考慮するとよい。資源を配分するに際して、組織は、環境又は関係する活動の利点及びコストを追跡調査する手順を開発してもよい。その中には、公害防止、廃棄物及び廃棄のコストなどの事項を含めることができる。

 資源及びその配分は、その妥当性を確実にするために、定期的に、また、マネジメントレビューに連動して、レビューするとよい。資源の妥当性について評価を行うとき、計画された変更及び/又は新規のプロジェクト又は運用を考慮するとよい。

実践の手引−人的、物的及び財務資源

 中小企業(SME)の資源基盤及び組織体制には、環境マネジメントシステムの実施に際してある程度の限界もある。この制約を克服するために、中小企業は、次のような相手との共同戦略を考慮することができる。

a) 技術及び知識を共有するための大手の依頼者及び供給者
b) 共通の問題を定め、対処し、経験を共有し、技術開発を容易にし、施設を共同で利用し、外部資源に共同で取り組むためのサプライチェーン又は地域基盤を同じくする他の中小企業
c) 教育訓練及び自覚の実施計画のための標準化機関、中小企業団体、商工会議所
d) 生産性向上及び革新支援のための、大学及び他の研究センター

 環境マネジメントシステムの確立、実施及び維持が成功するかどうかは、トップマネジメントが責任及び権限をどのように定め、それを組織内にどのように割り当てるかに大きく依存する(実践の手引−体制及び責任を参照)。

 トップマネジメントは、次の目的で、十分な権限、自覚、力量及び資源をもつ責任者又は職務を定めるとよい。

a) 適用可能な組織のすべての階層で、環境マネジメントシステムの確立、実施及び維持を確実にする。
b) 環境マネジメントシステムのパフォーマンス及びその改善の機会についてトップマネジメントに報告する。

 管理責任者の責任には、環境マネジメントシステムに関する事項についての利害関係者との意見交換を含めてもよい。管理責任者は、組織内で、これ以外にも様々な責任を負うことができる。小規模組織の場合、総責任者がこの機能を実施してもよい。

 組織は、環境マネジメントに関係する作業を行う、組織で働く又は組織のために働く人の責任及び権限を定め、それを周知するとよい。環境責任は、環境機能部門に限定されるとみないほうがよく、運用管理又は他のスタッフの職務(例えば、購入、エンジニアリング、品質など)のような、組織の他の領域を含むことができる。トップマネジメントが提供する資源は、割り当てられた責任を果たすことができるようにするとよい。組織の体制に変更があったときは、責任及び権限のレビューを行うとよい。

実践の手引−体制及び責任

 環境マネジメントシステムの効果的な確立及び実施を確実にするためには、適切な責任を割り当てる必要がある。

 次の例は、環境責任を説明したものである。

環境責任の例 その責任をもつ典型的な人
(複数も可)
全体的な方向を確立する 社長、最高経営責任者(CEO)、役員会
環境方針を策定する 社長、最高経営責任者、適宜その他の者
環境目的、目標及び実施計画を策定する 該当する管理者
全体的な環境マネジメントシステムパフォーマンスを監視する 主任環境管理者
適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項の順守を確実にする すべての管理者
継続的改善を促進する すべての管理者
顧客の期待を特定する 販売及びマーケティングスタッフ
供給者に関する要求事項を特定する 調達、購買担当
会計手順を策定及び維持する 財務/会計管理者
環境マネジメントシステム要求事項に適合する 組織で働く又は組織のために働くすべての人
環境マネジメントシステム運用のレビュー トップマネジメント

参考
 企業と公共団体では組織の体制が異なるので、それぞれの作業プロセスに従って環境マネジメント責任を定める必要がある。例えば、中小企業の場合、オーナーがこうした活動すべてに責任を負うことがある。

4.4.2 力量、教育訓練及び自覚

 組織の環境価値を説明し、環境方針に盛り込まれたコミットメントを周知し、組織で働く又は組織のために働くすべての人が自らの責任又は説明責任である環境目的及び目標を達成することの重要性を受け入れるように奨励することによって、従業員の自覚及び動機づけを図るための重要な責任を、トップマネジメントは負っている。 環境価値の共有という意味で個々の人々のコミットメントがあってこそ、環境マネジメントシステムは書類上の作業から効果的なプロセスに転換される。環境パフォーマンスの改善につながるような意見を出すように、組織で働く又は組織のために働く人に奨励するとよい。

 組織は、組織で働く又は組織のために働くすべての人が、環境方針及び環境マネジメントシステムの要求事項に適合することの重要性、環境マネジメントシステムにおける自らの役割及び責任、自らの作業活動のもつ顕在又は潜在の著しい環境側面及びそれに伴う影響、パフォーマンス改善のメリット並びに適用可能な環境マネジメントシステム要求事項から逸脱した際の結果について自覚することを確実にするとよい。

参考1.
 組織で働く又は組織のために働くすべての人には、従業員、請負者、適用可能な場合その他の関係当事者が含まれる。

 顕在又は潜在の著しい環境側面又はそれに伴う影響をもつ可能性のある活動を行う人は、環境マネジメントシステムの要求事項を満たすように、その活動を行う力量があるとよい。環境側面の管理で最も重要な活動に対して、組織は、その活動を行う個人の知識、理解、技能又は能力を特定するとよい。必要な能力を特定した上で、組織は、その活動を行う個人が、必要な力量を確実に身につけるようにするとよい。

参考2.
 監査員の力量に関する手引については、4.5.5を参照。

 力量の基礎になるのは、適切な教育、訓練、技能及び/又は経験である。採用時、教育訓練時、及び組織で働く又は組織のために働く人の将来的な技能及び能力の開発において、力量に関する要求事項を考慮するとよい。力量を、請負者及び、組織で働く又は組織のために働くその他の人を選定するときにも考慮するとよい。

 組織は、活動ごとにそれを実施するために必要な力量と、その活動を実施する必要のある個人がもつ力量との違いを特定し、評価するとよい。この違いは、その後の教育、訓練、技能開発などを追加することによって調整することができる。

 教育訓練実施計画は、環境マネジメントシステムで定める責任を反映し、受講者が既に身につけている、対象となる題材についての知識及び理解を考慮に入れるとよい。環境マネジメントシステム関連の教育訓練実施計画には、次の事項を含めることができる。

a) 従業員教育訓練のニーズの特定
b) 定められた教育訓練のニーズに取り組むための教育訓練計画の設計・開発
c) 環境マネジメントシステム教育訓練要求事項との適合性の検証
d) 対象従業員グループの教育訓練
e) どのような教育訓練を受けたかの文書類及び監視
f) 定められた教育訓練の必要性及び要求事項に照らした、受けた教育訓練の評価

実践の手引−力量、教育訓練及び自覚

 組織が提供できる環境上の教育訓練の種類の例は、次のとおりである。

教育・訓練の種類 対象者 目的
環境マネジメントの重要性の自覚を高めること 上級管理者 組織の環境方針に対するコミットメント及び連携を得るため。
一般的な環境に対する自覚を高めること 全従業員 組織の環境方針、目的及び目標に対するコミットメントを得て、個々に責任感をもたせるため。
環境マネジメントシステム要求事項の教育訓練 環境マネジメントシステムの責任者 例えば、要求事項を満たす方法、手順の実施などについて教えるため。
技能の向上 環境責任をもつ従業員 例えば、運転操作、研究開発、エンジニアリングなどの組織の特定分野におけるパフォーマンスを改善するため。
順守の教育訓練 順守に影響する可能性のある行動をする従業員 規制上の教育訓練要求事項への順守を達成し、適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項の順守を改善するため。

4.4.3 コミュニケーション

一般的な手引−コミュニケーション

 組織は、自らのニーズ及び利害関係者のニーズに従って、その環境方針、パフォーマンス又はその他の情報を内部及び外部に伝えるための手順を確立し、実施し、維持するとよい。利害関係者には、例えば、近隣の人々、非政府機関、顧客、請負者、供給者、投資家、緊急サービス、監督機関などを含めることができる。

 このようなコミュニケーションの目的及び利点には、次の事項が含まれる。

a) 環境パフォーマンスを改善するという組織のコミットメント及び努力、並びにその努力の結果を実証する。
b) 組織の環境方針、環境パフォーマンス及びその他の関連する成果に関する自覚を高め、対話を促進する。
c) 質問、関心事又はその他のインプットを受け取り、考慮し、対応する。
d) 環境パフォーマンスの継続的改善を促進する。

4.4.3.1 内部コミュニケーション

 組織内の階層間及び部門間のコミュニケーションは、環境マネジメントシステムの有効性にとって不可欠である。例えば、コミュニケーションは、問題解決、活動の調整、行動計画のフォローアップ、及び環境マネジメントシステムの更なる発展にとって重要である。適切な情報を組織の従業員に提供することは、環境パフォーマンスを改善するように従業員を動機づけ、組織の努力を受け入れさせることに役立つ。 これによって、従業員が責任を果たし、組織がその環境目的及び目標を達成することを助けることができる。組織は、組織のあらゆる階層からのフィードバック及び参画を奨励し、従業員の提案及び関心事について受け付けかつ対応するプロセスをもつとよい。請負者、供給者など、組織のために働くその他の人に情報を提供することが重要となることも多いだろう。環境マネジメントシステムの監視、監査及びマネジメントレビューの結果は、組織内の適切な人に伝えるとよい。

 内部コミュニケーションの方法には、例えば、会議の議事録、掲示板へのはり出し、社内報、提案箱/提案制度、ウェブサイト、電子メール、会議、合同委員会など、様々なものがある。

4.4.3.2 外部コミュニケーション

 外部の利害関係者とのコミュニケーションは、環境マネジメントにとって1つの重要かつ効果的なツールになることがある。先取り的な方法は、外部コミュニケーションの効果を高めることができる。それぞれの状況に適切なコミュニケーション計画を作成する場合、組織は、様々な取組みの潜在的コスト及び利点を考慮するとよい。 また、利害関係者に対して、サプライ・プロダクトチェーンに関するものも含む環境側面について外部コミュニケーションを行うかどうかを考慮するとよい。

 少なくとも、組織は、外部当事者からの関連するコミュニケーションを受け付け、文書化し、対応するための手順を確立し、実施し、維持するとよい。また、外部コミュニケーションに対する手順を文書化すれば、組織にとって有用かもしれない。

 先取り的な考え方を基本とする外部コミュニケーションに関して組織がどのような決定を下すにしても、その決定事項を記録するとよい。組織は、外部の利害関係者に影響又は懸念を与えかねない緊急事態及び事故の場合に、外部利害関係者とコミュニケーションをとるためのプロセスを整えておくとよい。

 組織の環境マネジメント活動を理解し、受け入れられやすくし、利害関係者との対話を促進するような外部コミュニケーション方法には、様々なものが利用できる。例えば、非公式の討議、組織の一般公開、フォーカスグループ、地域対話、地域イベントへの参加、ウェブサイト及び電子メール、新聞発表、広告、定期刊行のニュースレター、年次(又はその他の定期的な)報告書、緊急用直通電話などがある。

実践の手引−内部及び外部コミュニケーション

 コミュニケーションをとるべき情報の例には、次の事項を含む。

a) 組織の概要
b) もしあれば、経営者の声明
c) 環境方針、目的及び目標
d) 環境マネジメントプロセス(従業員及び利害関係者の関与を含む)
e) 継続的改善及び汚染の予防に対する組織のコミットメント
f) 例えば、環境ラベル及び宣言によって伝えられる製品及びサービスの環境側面に関する情報
g) 推移の傾向を含めた組織の環境パフォーマンスに関する情報(例えば、廃棄物の低減、プロダクトスチュワードシップ、過去のパフォーマンス)
h) 法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項への組織の順守、並びに順守に反する事例に対応してとった是正処置
i) 用語集のような報告書の中の補足情報
j) コスト節減又は環境プロジェクトへの投資などの財務情報
k) 組織の環境パフォーマンスの改善を可能にする戦略
l) 環境上の出来事に関係する情報
m) 連絡先、ウェブサイトなどの、より詳しい情報源

 内部及び外部の環境コミュニケーションに関しては、次の事項を忘れないことが大切である。

− 情報は、理解しやすく、適切に説明される。
− 情報は、追跡可能である。
− 組織は、そのパフォーマンスの正確な状況を提示する。
− 可能であれば、情報は比較可能な形(例えば、同一の測定単位)で示す。

4.4.3.3 コミュニケーションプロセス

 コミュニケーション実施計画を確立するとき、組織は、その性質及び規模、著しい環境側面、並びに利害関係者の性質及びニーズを考慮に入れるとよい。

 組織は、このプロセスにおいて次のステップを考慮するとよい。

a) 利害関係者からのものを含む情報を収集し、調査する。
b) 対象者(ターゲットオーディエンス)及び情報又は対話の必要性を決定する。
c) 対象者の興味にあった情報を選択する。
d) 対象者とコミュニケーションを図るべき情報を決定する。
e) どの方法がコミュニケーションにとって適切であるかを決定する。
f) コミュニケーションプロセスの有効性を評価し、定期的に判定する。

4.4.4 文書類

 環境マネジメントシステムが理解され、効果的に運用されるように、組織は適切な文書類を作成し、維持するとよい。そのような文書類の目的は、必要な情報を、適宜、従業員及びその他の利害関係者に提供することである。文書類は、既存の情報システムに加え、それを改善して、組織の文化及びニーズを反映するように収集し、維持するとよい。文書類の範囲は組織によって異なることがあるが、環境マネジメントシステムは文書として記述するとよい(実践の手引−文書類を参照)。

 組織は、環境マネジメントシステムの概要又は要約となり、また関連する文書類の所在を示すことができるように、情報をマニュアルの形にまとめてもよい。そのような環境マネジメントシステムマニュアルの構成は、JIS Q 14001又はその他のいかなる規格の章構成に従う必要はない。

 主要なプロセス(すなわち、特定した著しい環境側面に関するプロセス)の効果的な管理のために、組織は、各プロセスを実行するために規定されている方法を適切な細かさで記述する手順を策定するとよい。組織がある手順を文書化しないと決定するなら、コミュニケーション又は教育訓練を図ることによって、その手順についての満たすべき要求事項を該当する従業員に知らせる必要がある(4.4.2参照)。

 達成した結果又は実施した活動の証拠に関する情報を記載した記録は、組織の文書類の一部であるが、一般には異なるマネジメントプロセスで管理される(4.5.4参照)。

 文書は、そこに含まれた情報を必要とする人にとって、有用で、読みやすく、たやすく理解でき、アクセスできるようになっていれば、どのような媒体(紙、電子媒体、写真、ポスター)で管理してもよい。電子媒体で文書を維持すれば、更新、アクセス制御、使用者全員による文書の有効なバージョンの確実な利用などの容易さといった利点がある。

 環境マネジメントシステムのプロセスが他のマネジメントシステムのプロセスにそろえてあるなら、組織は、関連する環境上の文書類と他のマネジメントシステムの文書類を組み合わせることができる。

実践の手引−文書類

 文書の例には、次が含まれる。

a) 方針、目的及び目標の声明
b) 環境マネジメントシステムの適用範囲の記述
c) 実施計画及び責任の記述
d) 著しい環境側面に関する情報
e) 手順
f) プロセス情報
g) 組織図
h) 内部及び外部の標準
i) サイトの緊急対応計画
j) 記録

4.4.5 文書管理

 次の事項を確実にするうえで、環境マネジメントシステム文書の管理は重要である。

a) 文書は適切な組織、部門、機能、活動、又は連絡先別に識別できる。
b) 文書(記録以外)は定期的にレビューされ、必要に応じて改訂され、発行の前に所定の責任者によって承認される。
c) システムが効果的に機能するために不可欠な運用が行われているすべての場所で、関連文書の最新版が利用できる。
d) 廃止文書は、すべての発行部署及び使用部署から速やかに撤去される。状況によっては、例えば法的な理由及び/又は情報保存の目的で、無効となった文書を保持することもある。

 文書は、次のようにして効果的に管理することができる。

− 特定のタイトル、番号、日付、変更、改訂履歴及び責任者を記入した適切な文書様式を開発する。
− 文書のレビュー及び承認を、十分な技術的能力及び組織での権限をもつ個人に割り当てる。
− 効果的な文書配付システムを維持する。

4.4.6 運用管理

一般的な手引−運用管理

 組織は、何らかの種類の運用管理を行って、環境方針コミットメントを満たし、その目的及び目標を達成し、適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を順守し、著しい環境側面を管理する必要がある。効果的で効率的な運用管理を計画するために、組織は、そのような管理が、どこで、どのような目的で必要になるかを明確にするとよい。組織は、組織のニーズを満たす管理の種類及びレベルを設定するとよい。決められた運用管理は、その有効性を継続するために維持し、定期的に評価するとよい。

4.4.6.1 運用管理に対するニーズの把握

 組織は、次のために運用管理を利用することもある。

a) 特定した著しい環境側面を管理する。
b) 法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項への順守を確実にする。
c) 目的及び目標を達成し、汚染の予防及び継続的改善のコミットメントを含めて、環境方針との整合性を確実にする。
d) 環境リスクを回避し、又はできるだけ小さくする。

 運用管理に対するニーズを把握するときは、組織は、購買、販売、研究開発、設計及びエンジニアリングのような経営管理機能に関係するもののような業務、製造、メンテナンス、試験分析、製品保管などの日常プロセスの運用、並びに製品及びサービスの納品のような外部プロセスを含めた、組織の運用のすべてを考慮するとよい。

 組織はまた、環境側面を管理し、目的及び目標を達成し、並びに適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を順守するための組織の能力に請負者または供給者がどのように影響を及ぼすかについても考慮するとよい。組織は、文書化した手順、契約、供給者との合意のような必要とされる運用管理を確立し、それを適宜、請負者及び供給者に伝えるとよい。

4.4.6.2 運用管理の確立

 運用管理の形態は、手順、作業指示書、物理的管理、訓練された人材の登用又はこれらの組合せなど、様々である。どの管理方法を選択するかは、運用を担当する人の技能及び経験、並びに運用自体の複雑さ及び環境に及ぼす著しさに依存する。

 運用管理を確立するための共通の取組みでは、次のことを行う。

a) 管理方法の選択
b) 許容される運用基準の選定
c) 必要に応じて、特定した業務をどのようにして計画し、実行し、管理するかを定めた手順の確立
d) 必要に応じて、例えば、指示書、標識、様式、ビデオ、写真などの形式による、手順の文書化

 手順、作業指示書及びその他の管理方式に加えて、運用管理には、測定及び評価のための、並びに運用基準を満たしているかどうかを決定するための規定を含めることがある。

 組織は、一貫性のある形で管理を実施する能力を高めるための手順を確立することを選択してもよい。運用管理は、組織の環境マネジメント実施計画の重大な構成要素となることもある(4.3.3.2参照)。

 運用管理では、運用管理が計画どおり確実に実施されるように、管理部門にかかわる人々の教育訓練に留意するとよい。

参考
 教育訓練の手引については、更に4.4.2を参照。

 運用管理が確立されたなら、組織は、その管理が継続して適用されているか、かつ、それが有効であるかどうかを監視し、必要があれば是正処置を計画し、実施するとよい。

実践の手引−運用管理

 運用管理及び手順を確立又は修正するときに、組織は、著しい環境側面に伴う様々な運用を考慮するとよい。このような運用の例には、次の事項が含まれる。

a) 所有物及び施設の、取得、建設又は変更
b) 契約
c) 顧客サービス
d) 原材料の取扱い及び保管
e) マーケティング及び広告
f) 生産及びメンテナンスのプロセス
g) 購買
h) 研究、設計、開発上のエンジニアリング
i) 製品の保管
j) 輸送
k) ユーティリティープロセス(例えば、エネルギー及び水の供給、リサイクル、廃棄物及び廃水管理)

4.4.7 緊急事態への準備及び対応

 組織は、有害な環境影響を及ぼすおそれのある潜在的な緊急事態及び潜在的な事故をいかに特定するか、並びにそうした事態が発生した場合にとる適切な緩和処置及び対応策をいかに特定するかを詳細に定めた手順を確立し、実施し、維持するとよい。その手順及びそれに伴う管理では、適宜次の点を考慮するとよい。

a) 事故による大気中への放出
b) 事故による水及び土地への排出
c) 事故による放出が特定の環境及び生態系に与える影響

 手順には、非通常の操業条件の潜在的に結果、潜在的な緊急事態及び潜在的な事故を考慮に入れるとよい。

実践の手引−緊急事態への準備及び対応

 組織独自の必要性に合致した緊急事態への準備及び対応の手順を確立することは、それぞれの組織の責任である。手順の策定に当たって、組織は、次の事項を考慮するとよい。

a) 現場ハザードの性質、[例えば、可燃性液体、貯蔵タンク、圧縮ガス、漏えい又は事故による放出の際にとられるべき対策]
b) 緊急事態又は事故の最も起こりやすい種類及び規模
c) 近接した施設(プラント、道路、鉄道など)で緊急事態または事故が発生する潜在的な可能性
d) 事故又は緊急事態に対処する最適な方法
e) 環境上の被害を最小限に抑えるのに必要な処置
f) 緊急事態に対応する要員の教育訓練
g) 緊急時の体制及び責任
h) 避難ルート及び集合場所
i) 連絡の詳細(例えば、消防署、流出物の清掃サービス)を含めた、主要要員及び支援機関のリスト
j) 近接組織からの相互支援の可能性
k) 内部及び外部コミュニケーション計画
l) 様々な種類の事故又は緊急事態に対してとるべき緩和及び対応処置
m) 是正処置及び予防処置を確立し実施するための事故後の評価プロセスのニーズ
n) 緊急事態対応手順の定期的なテストの実施
o) 各物質の環境への潜在的な影響を含む有害物質に関する情報、及び事故による排出に際しとられる措置
p) 有効性を高めるための教育訓練計画及びテストの実施
q) 是正処置及び予防処置を定めるための事故後の評価プロセス

4.5 点検

一般的な手引−点検

 点検は、組織の環境パフォーマンスの測定、監視及び評価を含む。予防処置は、問題が発生する前に潜在的な問題を特定し、予防するために利用するとよい。是正処置は、環境マネジメントシステムの問題を特定し、それを是正することから成る。

 環境マネジメントシステムにおいて不適合を特定し、是正又は予防処置をとるプロセスは、組織が環境マネジメントシステムを意図したとおり運用し、維持するのを助ける。記録をとり、それを効果的に維持することは、組織に、環境マネジメントシステムの運用及び結果に関して信頼できる情報源をもたらす。環境マネジメントシステムの定期的な監査は、組織が、計画どおりにシステムが設計され、運用されているかを検証するのを助ける。こうしたツールはすべて、パフォーマンスの評価を支援する。

4.5.1 監視及び測定

 組織は、環境パフォーマンスを定期的に測定し、監視するための体系的な取組みを行うとよい。監視は、測定、観察などのようなある時間にわたる情報の収集である。測定は定量的なこともあり、定性的なこともある。監視及び測定は、環境マネジメントシステムにおいて次に示すような様々な目的に役立つ。

a) 方針コミットメントの履行、目的及び目標の達成、並びに継続的改善に関して、進み具合を追跡する。
b) 著しい環境側面を特定するための情報を作成する。
c) 適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を満たすために排出及び放出を監視する。
d) 目的及び目標に合うように水、エネルギー又は原材料の消費量を監視する。
e) 運用管理を支援又は評価するためのデータを提供する。
f) 組織の環境パフォーマンスを評価するためのデータを提供する。
g) 環境マネジメントシステムのパフォーマンスを評価するためのデータを提供する。

 こうした目的を達成するために、組織は、何を測定するか、どこで、いつ測定するとよいか、どのような方法を用いるとよいかを計画するとよい。最も重要な測定に資源を集約させるように、組織は、プロセス及び活動についての、測定可能で最も有用な資源を提供するかぎ(鍵)となる特性を特定するとよい。

参考
 パフォーマンス指標の手引については、更に4.3.3.3を参照。

 測定は、監視及び測定機器の適切な校正又は検証、資格をもつ要員の起用、適当な品質管理手法の利用など、結果の妥当性を保証するための適切なプロセスで管理された条件の下で実施するとよい。

 結果の妥当性を保証することが必要な場合には、測定機器に関し、定められた間隔で又は使用前に、国際又は国家計量標準にトレース可能な計量標準に照らして校正又は検証するとよい。そのような標準が存在しない場合には、校正に用いた根拠を記録するとよい。測定及び監視を実施する手順を文書化することによって、測定の一貫性を確保し、生成されるデータの信頼性を高めることができる。

 測定及び監視の結果を、成功のケース及び修正又は改善を要する分野を特定するために分析し、使用するとよい。

4.5.2 順守評価

 組織は、順守に対するコミットメントの一環として、環境側面に適用可能な法的要求事項への順守を定期的に評価するための手順を確立し、実施し、維持するとよい。組織は、この評価の結果を記録するとよい。

 順守評価の適用範囲は、複数の法的要求事項のこともあれば、ただ1つの要求事項のこともある。順守評価には、次のようなプロセスを含む様々な方法を用いることができる。

a) 監査
b) 文書及び/又は記録のレビュー
c) 施設の検査
d) 面談
e) プロジェクト又は作業のレビュー
f) 日常的なサンプル分析又はテスト結果、及び/又は検証のためのサンプリング/テスト
g) 施設の巡視及び/又は直接観察

 組織は、その規模、種類及び複雑さに合った順守評価の頻度及び方法を確立するとよい。頻度は、過去の順守のパフォーマンス又は特定の法的要求事項のような要因に影響されることがある。定期的に、独立性のあるレビューを実施することも有用である。

 順守評価実施計画は、他の評価活動に統合することもできる。それらの評価活動には、マネジメントシステム監査、安全衛生でのアセスメント、又は検査若しくは品質保証での点検を含むことがある。

 同様に、組織は自らが同意するその他の要求事項への順守を定期的に評価するとよい(その他の要求事項に関する手引は、更に4.3.2.2を参照)。組織はこの評価を行うために個別のプロセスを確立してもよいし、法的要求事項への順守評価(上記参照)、マネジメントレビューのプロセス(4.6参照)又はその他の評価プロセスに組み込んでもよい。定期的な評価の記録を維持するとよい。

4.5.3 不適合並びに是正処置及び予防処置

 環境マネジメントシステムを継続性のある仕組みに立って効果的に機能させるために、組織は、顕在及び潜在する不適合を特定し、修正を施し、是正処置及び予防処置をとり、できれば問題の発生を事前に予防するための体系的な方法をもつとよい。不適合とは、要求事項を満たしていないことである。要求事項は、マネジメントシステムに関係して、又は環境パフォーマンスに関連して規定されているかもしれない。意図したようにシステムの一部が機能しなかったり、又は環境パフォーマンス要求事項が満たされなかったりする状況が生じるかもしれない。

 そのような状況の例には、次が含まれる。

a) システムパフォーマンス
1) 環境目的及び目標の確立における失敗
2) 目的及び目標を達成するための、又は緊急事態への準備及び対応のための、責任など、環境マネジメントシステムによって要求された責任を定めるうえでの失敗
3) 法的要求事項の順守の定期的な評価における失敗
b) 環境パフォーマンス
1) エネルギー低減目標が達成されない。
2) メンテナンス要求事項が予定どおりに実施されない。
3) 運用基準(許容限度など)を満たしていない。

 4.5.5に記載する環境マネジメントシステムの内部監査プロセスは、定期的に不適合を特定する1つの方法である。不適合の特定は、また、該当する作業に最も近いところにいて、潜在する又は顕在した問題に気づくべき人の日常の責務の一部にすることができる。

 不適合を特定したならば、システムの適切な部分に焦点を当てた是正処置がとれるように、原因究明のための調査を行うとよい。不適合に対処するための計画を策定する場合、組織は、問題に対処(緩和)するためにはどのような処置をとる必要があるか、状況を是正(通常の運用を再開)するためにはどのような変更を加える必要があるか、問題の再発を防止(原因を除去)するためには何をするとよいかについて考慮するとよい。そのような処置の性質及びタイミングは、不適合及び環境影響の性質及び大きさに対して適切であるとよい。

 ある潜在する問題を特定したが、顕在化した不適合が存在しない場合は、類似の取組み方を用いて予防処置をとるとよい。潜在する問題は、顕在化した不適合に対する是正処置を類似の活動が発生している他の適用可能な領域に当てはめる方法、傾向分析、HAZOP(hazard operability study)などの方法を用いれば、特定することができる。

 経営層は、これらの是正処置及び予防処置が実施されていること、並びにその有効性を確保するため体系的なフォローアップが行われていることを確実にするとよい。

 顕在及び潜在する不適合に対処するための、並びに是正処置及び予防処置をとるための手順を確立することは、このプロセスの整合性を確保することに役立つ。そのような手順では、是正処置及び予防処置の立案、並びにその実施における責任、権限及びとるべきステップを定めるとよい。実施した処置の結果、環境マネジメントシステムに変更が生じる場合、このプロセスでは、すべての関連文書類、教育訓練及び記録が確実に更新され、承認され、知る必要のある人全員に変更が周知されるとよい。

4.5.4 記録の管理

 記録は、環境マネジメントシステムの実施中の運用及びその結果の証拠を提供する。記録のかぎ(鍵)となる特性は、それが恒久的で、通常なら書き直されることがないということにある。組織は、環境上の事項を効果的に管理するためにどのような記録が必要になるかを決定するとよい。記録には、次の事項を含むとよい。

a) 適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項への順守に関する情報
b) 不適合並びに是正処置及び予防処置の詳細
c) 環境マネジメントシステム監査及びマネジメントレビューの結果
d) 製品の環境属性に関する情報(例えば、化学成分及び性質)
e) 目的/目標の達成度合いの証拠
f) 教育訓練への参加に関する情報
g) 許可、ライセンス又はその他の形式の法的認可
h) 検査及び校正活動の結果
i) 運用管理(メンテナンス、設計、製造)の結果

 これら記録の効果的な管理は、環境マネジメントシステムの実施の成功に不可欠である。環境記録管理のかぎ(鍵)となる特徴は、識別、収集、索引付け、ファイリング、保管、メンテナンス、検索、保管期間などの手段にある。

4.5.5 内部監査

 組織の環境マネジメントシステムの内部監査は、システムが計画された取決めに適合しているか、適切に実施され維持されているかを決定し、経営層にその情報を提供するために、あらかじめ定められた間隔で実施するとよい。内部監査は、組織の環境マネジメントシステムで改善の機会を特定するために実施することもできる。

 組織は、監査の計画及び実施を方向付ける監査プログラムを策定し、プログラムの目的を満たすために必要な監査を特定するとよい。プログラムは、環境側面及び潜在する環境影響に関する組織の運用の性質、以前の監査の結果、並びにその他の関連要素に基づくとよい。

 監査プログラムが確実にすべての組織単位及び機能部門、システム要素並びに環境マネジメントシステムの全適用範囲を定期的に監査している限り、それぞれの内部監査はシステム全体を網羅する必要はない。

 監査は、客観的かつ公平な監査員が、適宜組織内外から選定された技術専門家の助けを借りて計画し、実施するとよい。監査員の全体としての力量は、特定の監査の目的及び適用範囲に合致し、安心してその結果に対し信頼できるほどの十分なものであるとよい。

 環境マネジメントシステムの内部監査の結果は、報告書の形で提出することができ、特定の不適合を是正又は予防し、監査プログラムの1つ又は複数の目的を満たし、マネジメントレビューの実施に当たってインプットを提供するために使用することができる。

参考
 環境マネジメントシステム監査に関する手引については、JIS Q 19011を参照。

4.6 マネジメントレビュー

一般的な手引−マネジメントレビュー

 組織は、全体的な環境パフォーマンスを改善する目的をもって、環境マネジメントシステムを定期的にレビューし、継続的に改善するとよい。

4.6.1 環境マネジメントシステムのレビュー

 組織のトップマネジメントは、環境マネジメントシステムの継続的な適切性、妥当性及び有効性を評価するために、自らが決めた間隔で環境マネジメントシステムのレビューを行うとよい。このレビューは、環境マネジメントシステムの適用範囲内にある活動、製品及びサービスの環境側面を網羅するとよい。

 マネジメントレビューへのインプットには、次の事項を含めるとよい。

a) 内部監査の結果、適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項の順守評価の結果
b) 苦情を含む外部の利害関係者からのコミュニケーション
c) 組織の環境パフォーマンス
d) 目的及び目標が達成されている程度
e) 是正処置及び予防処置の状況
f) 前回までのマネジメントレビューの結果に対するフォローアップ
g) 変化している周囲の状況。これには次を含む。
1) 組織の製品、活動及びサービスの変化
2) 計画された又は新規の開発に関する環境側面の評価の結果
3) 適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項の変化
4) 利害関係者の見解
5) 科学技術の進歩
6) 緊急事態及び事故から学んだ教訓
h) 改善のための提案

 環境マネジメントシステムのレビューからのアウトプットには、次の事項に関する決定を含めてもよい。

− システムの適切性、妥当性及び有効性
− 物理的資源、人的資源及び財務資源の変化
− 環境方針、目的及び目標、並びに環境マネジメントシステムのその他の要素の可能な変更に関係する処置

 マネジメントレビューの記録には、会議の議題、出席者リスト、発表資料若しくは配付資料のコピー、及びファイルするメモ、議事録又はトラッキングシステムに記録された経営層の決定が含まれる。

 各組織は、マネジメントレビューに参加する人を自ら決定することができる。通常、マネジメントレビューに参加するのは、環境スタッフ(情報を集め、提供する人)、主要な組織単位の管理者(例えば、著しい環境側面を含む運用を行っている人、又は教育訓練、記録などのような環境マネジメントシステムの主要な要素の責任者)及びトップの管理者(環境マネジメントシステムのパフォーマンスを評価し、改善の優先順位を明らかにし、資源を提供し、フォローアップが効果的であることを確実にする人)である。

4.6.2 継続的改善

一般的な手引−継続的改善

 継続的改善は、効果的な環境マネジメントシステムのかぎ(鍵)となる属性である。

 継続的改善は、環境目的及び目標を達成し、環境マネジメントシステム全体又はそのいずれかの構成要素を向上させることによって成し遂げられる。

4.6.2.1 改善の機会

 組織は、改善の機会を特定するために、その環境パフォーマンス及び環境マネジメントシステムプロセスごとのパフォーマンスを継続的に評価するとよい。この評価に、トップマネジメントは、マネジメントレビューのプロセスを通じて直接に参画するとよい。

 環境マネジメントシステムの欠陥(顕在又は潜在する不適合を含む)の特定は、重要な改善の機会を提供することにもなる。このような改善を実現するために、組織は、どのような欠陥が存在するかを知ることだけではなく、それがなぜ存在するかを理解するとよい。これは、環境マネジメントシステムの欠陥の根本原因を分析することによって達成することができる。

 継続的改善に役立つ情報源には、次の事項が含まれる。

a) 是正処置及び予防処置で得られた経験
b) 最高の実践を基準にした外部のベンチマーキング
c) 適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項に対する予定されている、又は提案されている変更
d) 環境マネジメントシステム監査及び順法性監査の結果
e) かぎ(鍵)となる運用の特性の監視結果
f) 目的及び目標の達成に向けた進ちょく(捗)結果
g) 従業員、顧客及び供給者を含む利害関係者の見解

4.6.2.2 継続的改善の実施

 改善の機会を特定したら、どのような処置をとればよいかを決定するために評価するとよい。改善のための処置を計画し、その計画に従って環境マネジメントシステムの変更を実施するとよい。改善は、すべての領域で同時に実施する必要はない。

実践の手引−改善の例

 改善は、環境目的及び目標を設定しレビューするプロセスの中で実施しても、又はそれ以外で実施してもよい。改善の例には、次のようなものがある。

a) より有害でない材料の使用を促進するために、新しい材料を評価するためのプロセスを確立する。
b) 順守すべき新しい要求事項をよりタイムリーな方法で特定することができるように、適用可能な法的要求事項を特定するための組織のもつプロセスを改善する。
c) 組織による廃棄物の発生を低減するために、材料及び取扱いに関する従業員の教育訓練を改善する。
d) 水を再利用できるように、廃水処理プロセスを導入する。
e) 印刷室で両面印刷を行うために、印刷装置のデフォルト設定に変更を実施する。
f) 輸送会社による化石燃料の消費を少なくするために、配送ルートを再設計する。
g) ボイラ運転で燃料の代替を実施するために、及び粒子状排出物を低減するために、目的及び目標を設定する。

附属書A(参考)環境マネジメントシステム要素間の対応の例

 この附属書に示す事例は、環境マネジメントシステムの様々な要素間の対応を説明することをいとしている。これらの例は、唯一の可能性を示すことを意図しているわけではなく、また必ずしもすべての地域、国又は組織に適しているというわけではない。

 表A.1は、組織の活動、製品及びサービス、環境側面、並びに顕在及び潜在する影響の関係を示す例を与えている。これらは、様々なシナリオ、運用条件及び影響の可能な種類を説明することを意図している。

 表A.2は、表A.1から同じ活動、製品及びサービスを幾つか用いて、それらが組織の環境マネジメントシステムの一連の要素にどのように反映されるかを示している。表A.2は、環境側面、目的及び目標、実施計画、パフォーマンス指標、運用管理、並びに監視及び測定プロセスのつながりの様々な可能な例を示している。

表A.1 活動、製品及びサービス、並びにそれに伴う環境側面及び環境影響の例
活動/製品/サービス 環境側面 顕在及び潜在する環境影響
活動:道路建設
機械による転圧 粒子状物質(ダスト)の大気中への排出 大気汚染
大雨時の工事 土及び砂利の土地及び水への放出 再生不可能な天然資源の更なる枯渇(砂利−小石の入替え)
局所的な土地の劣化
土壌の侵食
水質汚濁
湿地生息環境の悪化
活動:ボイラの設計(運転面の検討)
燃料効率 燃料の消費 再生不可能なエネルギー源(化石燃料)の保全
低排出量 大気への放出 大気質の目標の達成
非危険有害物 使用後の処分 危険有害廃棄物の回避
活動:化石燃料ボイラの運転
ボイラの運転 燃料油の消費 再生不可能な天然資源の枯渇
二酸化硫黄(SO2)、亜酸化窒素(N2O)及び二酸化炭素(CO2)(すなわち温室効果ガス)の排出 大気汚染
地域住民の呼吸器系への影響
地表水に対する酸性雨の影響
地球温暖化及び気候変動
温排水の放出 水質の変化(例えば、温度)
地下タンクへのボイラ燃料の貯蔵 土地への油の流出 土壌汚染
地下水汚染
燃料油の受渡し及び移送 地表水排水設備への燃料油の管理されない放出 地表水の汚染
動物体内への有毒物質の蓄積
活動:農業−穀物の栽培
栽培段階における現場作業 水の消費 地下水源の枯渇
農薬の使用 土壌汚染
慢性的な健康への悪影響又は種の絶滅を招く、動物体内への有毒物質の蓄積
メタン(すなわち温室効果ガス)の排出 地球温暖化及び気候変動
活動:廃水管理
農産食品産業廃水処理 汚泥の生成(農業にかかわる) 栄養素の添加による土壌改良
活動:プリンターのトナーカートリッジ
詰め替え可能なトナーカートリッジ 原材料の使用 資源の保全
使用後の処分 固形廃棄物の発生 土地利用
部品の回収及び再使用 天然資源の保全
製品:エアコン
消費者による装置の運転 電気の使用 再生不可能な天然資源の枯渇
使用後の処理−処分 固形廃棄物の発生 土地利用
部品の回収及び再使用 天然資源の保全
サービス:メンテナンス及び修理サービス
化学品の取扱い及び使用 緊急時の管理されない放出 大気汚染
土壌汚染
人体損傷
下請負に出されたエアコン修理 オゾン破壊物質(すなわち冷媒)の放出 オゾン破壊
サービス:商品及び製品の輸送及び配送
運送機器の運転 燃料の消費 再生不可能な化石燃料の枯渇
窒素酸化物(NOx)の排出 大気汚染−オゾン生成−スモッグ
地球温暖化及び気候変動
騒音の発生 地域住民に与える不快感又は迷惑
定常的な運送機器メンテナンス(オイル交換を含む) 窒素酸化物(NOx)の排出 大気質の目標の達成
廃油の生成 土壌汚染

表A.2 活動、製品及びサービス、並びにそれに伴う環境側面、目的、目標、実施計画、指標、運用管理、並びに監視及び測定の例
側面 目的 目標 実施計画 指標 運用管理 監視・測定
活動:化石燃料ボイラの運転
燃料油の消費 再生不可能な資源の消費量を削減する 1年以内に(今年の年間消費量を基準にした)燃料油の消費量を20%削減する より効率のよい燃料バーナーを設置する ・プロジェクト計画のマイルストーン
・ボイラの稼働時間当たりの燃料油の消費量
・改良バーナーの据付け手順
・油消費量の文書化及び記録のための手順
・プロジェクト計画の進ちょく(捗)状況の四半期ごとの評価
・油消費率の月別追跡調査
温排水の放出 水温上昇による流水域の質へのマイナスの影響を最小限にする 2008年までに放出水の日平均温度を1℃下げる 設備及び設計の技術者が温排水の熱を回収し再利用(すなわちコジェネレーション)するために運転を再検討する ・放出水の日平均温度
・流域の水質項目
・海洋生物の数及び多様性
・水質のサンプリング及び分析の手順
・海洋生物のサンプリング計画
・コジェネレーションの操作手順
・技術的管理
・放出水の水温の連続監視
・流域の水質の四半期ごとの監視
製品:エアコン(消費者による装置の運転及び使用後の処理−処分
電気の使用 消費者にエネルギーの節約を奨励する 今年末までに昨年の運転温度を基準にして運転温度を5%下げる 製品にエネルギー効率の資料を添付して配布し、エネルギー使用が過剰な場合の影響について消費者を教育する(例えば、コスト削減、環境影響の低減) ・エネルギーの使用に関する顧客の関心の高まり
・エネルギー効率の高い新製品に対する顧客の関心の高まり
・効率的な製品材料の設計
・電気エネルギーの使用
・エネルギー効率に対する顧客の要望についての新製品設計における配慮
使用者の調査
固形廃棄物の発生 包装材使用量を減らし、消費者の処分する固形廃棄物の発生を減らす 2008年までに現在の製品ラインで包装材料の35%削減を達成する ・製品の包装を再設計する(エンジニアリング部門、6か月)
・生産変更を実施する(6か月)
・試運転及びフル生産
・ユニット当たりの包装材料の量
・製品ラインで使用する包装材料の削減率
・消費者段階での固形廃棄物発生のユニット当たりの容積の推定削減量
・設計管理手順
・製品包装手順
・使用する包装材料の量の四半期ごとの監視(購入時の量からスクラップ量を引いたもの)
・製品ラインで出荷される製品ユニット
サービス:商品及び製品の輸送及び配送(運送機器のメンテナンス)
窒素酸化物(NOx)の排出 運送機器メンテナンスの有効性を改善して、大気質に与えるプラスの影響を高める 2008年までにNOxの排出量の25%削減を達成する ・NOx削減のための主要なメンテナンスパラメータを特定する
・主要なNOx削減作業を採用したメンテナンス実施計画に変更する
・コンピュータプログラムにより、運送機器メンテナンススケジュールを最適化する
・メンテナンスの定時実施率
・NOx排出量/km
・メンテナンス手順
・メンテナンス技能者の教育訓練
・定期メンテナンスのコンピュータによる通知
・スケジュールどおりのメンテナンス頻度の追跡調査
・車両の燃料効率の監視
・車両のNOx排出量の四半期ごとの試験
・達成したNOx削減量の年次評価
廃油の発生 要求事項に適合して廃油を管理する 1年以内にサービスセンターにおける廃油処分要求事項への100%適合を達成する サービスセンターにおける廃棄物管理の教育訓練実施計画を開発し実施する ・訓練されたサービスセンター従業員の比率
・廃棄物処分に関する不適合件数
・処分された廃油の要求事項別の比率
・廃棄物管理手順
・サービスセンター従業員の教育訓練実施計画
・実施された、サービスセンター従業員の教育訓練の監視
・廃油処分量及び処分方法の追跡調査
・廃油管理実施の四半期ごとの評価

環境マネジメントシステム−原則、システム及び支援技法の一般指針 解説

 この解説は、本体及び附属書に規定・記載した事柄、並びにこれらに関連した事柄を説明するもので、規格の一部ではない。

 この解説は、財団法人日本規格協会が編集・発行するものであり、この解説に関する問合せは、財団法人日本規格協会へお願いします。

1. 環境マネジメントの標準化

1.1 ISO/TC 207の現状

 ISO/TC 207は、1993年設立以来10余年を経つが、持続可能な開発(sustainable development)への貢献を目標に、環境マネジメントの標準化活動を活発に続けている。その設立及びそれに続く数年の経緯については、1996年版JIS Q 14000シリーズ規格の解説に記されているので、それ以降の経緯及び現状について記す。

 ISO/TC 207の作業範囲(Scope)は変わらないが、若干表現を変えて、次のようにされている。“持続可能な開発(sustainable development)を支援するための環境マネジメントの分野におけるシステム及びツールに関する標準化。ただし、汚染物質の試験方法、環境パフォーマンスのレベル設定及び製品の標準化は除く。”また、2004年現在の参加国は、Pメンバー73か国、Oメンバー19か国、リエゾンメンバー52団体となっている。

 組織構成は、初期とは少し変わって、次のようになっている。

CAG:議長諮問グループ(CAG Chairman Advisory Group)
SC1:環境マネジメントシステム(EMS Einvironmental Management System)
SC2:環境監査(EA Environmental Auditing)
SC3:環境ラベル(EL Environmental Labeling)
SC4:環境パフォーマンス評価(EPE Environmental Performance Evaluation)
SC5:ライフサイクルアセスメント(LCA Life Cycle Assessment)
TCG:用語調整グループ(TCG Terms Coordination Group)
WG4:環境コミュニケーション(EC Environmental Communication)
WG5:気候変動(CC Climate Change)
WG6:GHGの有効性・検証審査の運用機関の要求事項(VVE Validation,Verification Evaluation)

 また、これまでのISO/TC 207総会の開催状況を、解説表1に示す。

解説表1 ISO/TC 207総会の開催状況

年月 開催地 参加国 参加者数(日本)
第1回 1993年6月 トロント 26 200(24)
第2回 1994年6月 ゴールドコースト 28 300(37)
第3回 1995年6月 オスロ 45 500(39)
第4回 1996年6月 リオデジャネイロ 45 430(26)
第5回 1997年4月 京都 49 490(45)
第6回 1998年6月 サンフランシスコ 51 535(45)
第7回 1999年6月 ソウル 53 500(48)
第8回 2000年7月 ストックホルム 57 600(27)
第9回 2001年7月 クアラルンプール 55 400(31)
第10回 2002年6月 ヨハネスブルグ 55 300(24)
第11回 2003年6月 パリ 45 310(25)
第12回 2004年9月 ブエノスアイレス 48 330(23)

1.2 環境マネジメントシステムの普及状況

 1996年にマネジメントシステム及び監査の規格が発行されて以来、環境マネジメントシステムは確実に普及が広がっており、世界では60,000件を超す審査登録がある。EUにおいても、当初はEU規制のEMASへの審査登録がドイツを中心に盛んであったが、最近はISO 14001への審査登録の方が拡大を続けている。我が国における審査登録件数も、2004年11月の時点で16,000件を超している。

 規格発行以来8年間の審査登録制度普及の傾向は、国内的にみても、国際的にみても、次のように分析される。

・ フェーズT(1996〜2000):法順守に基づく従来の公害対策から自主的な環境マネジメントに移行。特定の産業分野中心で、事業所単位の審査登録が多く、環境側面の管理範囲も狭かった。
・ フェーズU(2001〜2004):自主性が強化され、全分野へ広がり、品質マネジメントとの統合的実施、企業単位の審査登録が増え、中小組織にも拡大した。単なる審査登録だけでなく、間接的な環境側面への広がりなど、システムの実効を求める組織が増えている。
・ フェーズV(2005〜):改訂版規格に基づき、ステークホルダーの関心に注意を払い、より広範な環境マネジメントシステムへの移行が予測される。

 ISO 14001は上記のように確実な広がりをみせている一方、現行の認定・認証制度の信頼性に注目が集まっており、それぞれの立場で改善及び打開策が求められている。また、EUを中心として、中小企業(SME)のための普及策が芽を出しつつあり、審査登録に代わる段階評価が徐々に広がっている。

1.3 支援ツール規格の開発現状

 環境マネジメントシステム規格及び環境マネジメントを支援するツール規格の開発状況を、解説表2に示す。

解説表2 環境マネジメントシステム規格及びその支援ツールの開発状況
規格の項目 発行/
(予定)
規格の開発状況 JIS
環境マネジメントシステム 2004.11 ISO 14001改訂版 2004.12
2004.11 ISO 14004改訂版 2004.12
環境監査 2002.10 ISO 19011(ISO 14010、ISO 14011、ISO 14012、ISO 11011を合体) 2003.02
2001.11 ISO 14015 2002.08
環境ラベル 2000.09 ISO 14020改訂版 ---
1999.09 ISO 14021 2000.08
1999.04 ISO 14024 2000.08
(2007) ISO/TR 14025改訂中
環境パフォーマンス評価(EPE) 1999.11 ISO 14031 2000.10
1999.11 ISO 14032 ---
ライフサイクルアセスメント(LCA) (2006) ISO 14040、ISO 14044改訂中(ISO 14040、ISO 14041、ISO 14042、ISO14043を合体)
2003.10 ISO/TR 14047 ---
2002.04 ISO/TS 14048 ---
2000.03 ISO/TR 14049 2000.12
用語 2002.05 ISO 14050 2003.02
森林マネジメント 1998.12 ISO/TR 14061 ---
環境適合設計(DFE) 2002.10 ISO/TR 14062 2003.07
環境コミュニケーション (2006) ISO 14063審議中
気候変動 (2006) ISO 14064審議中
−組織の排出・削減算定
−プロジェクトの排出・削減算定
−検証/認証の仕様とガイダンス
−GHGの有効性・検証審査の運用機関の要求事項

1.4 ISO/TC 207の将来ビジョン

 ISO/TC 207の将来ビジョンは、“組織、製品及びサービスの環境パフォーマンスを改善して、世界貿易を促進し、持続可能な開発に貢献する”というものである。TC 207の戦略タスクグループの摘出した将来的な活動分野を、解説図1に示す。

解説図1 ISO/TC 207の活動分野の広がり
解説図1 ISO/TC 207の活動分野の広がり

 ISO/TC 207の使命としては、環境マネジメントに関する社会的ニーズの動向を的確に把握し、地球規模でのISO 14000ファミリーへの参加を促し、ISO 14000ファミリーの妥当性を維持し、ISO 14000ファミリーのブランドを守ることであるとされている。 このために我々関係者は、現実の変化に対応すると共に、常に人的資源の確保とプロセスの革新が必要であると考えている。最近のTC 207の重要動向として、途上国のリーダーシップ(Twinning)を活用すること、NGOとの密接なコンタクトを図ること、及びSMEへの配慮などはその1つの表れである。

2. 2004年版改訂の経緯

2.1 改訂の主旨

 今回の改訂の主旨は、ISOの改訂ルール(ISO/IEC Directives Part 1,2.9)に基づく5年以内の見直し結果によるものである。規格の普及は1996年の初版発行以来急速に進んでおり、また、ISO 9001も内容を一新した形で2000年に改訂版が出されることが決まっていたため、早期の着手が望まれていた。 1998年1月には、ISO内のTAG(Technical Advisory Group)12から両規格の用語、構造及び内容のすべてにわたる整合化の提案が出されており、また、1998年6月のTMB(Technical Management Board)の決議によれば、TAGに対して提案の履行及び両マネジメント規格の改訂を同期化することが求められていた。 一方、ISO/TC 207/SC 1内の議論の中では、大幅な内容の改訂を主張する声もあったが、新規又は追加の要求事項が出されることをおそれた途上国グループの改訂反対論も根強く残されていた。

 こうした背景の中で改訂の主旨は、次の3項目とされた。

・ ISO 9000及びISO 9001との両立性の向上
・ 既存の規格の理解を助けるための明確化
・ 新規又は追加の要求事項は排除する

 しかし、現実には前の2項目と3項目では矛盾が生じうるので、最終的に改訂版規格の序文に書き込まれた改訂の主旨及び原則は前の2項目だけである。

2.2 改訂の経緯

a) 改訂に関する主要な活動

 改訂の経緯の概要を、解説表3に示す。最後のブエノスアイレス会議を除いて、SC 1会合では常にWG 1(ISO 14001)及びWG 2(ISO 14004)の会合がもたれ、WG会合では常にWG 1及びWG 2の会合がもたれている。日本からは、WG 1に吉田敬史(三菱重機株式会社)及び木登夫(当時、株式会社荏原製作所)が、WG 2に中丸進(株式会社リコー)及び吉村秀勇(財団法人日本規格協会)がエキスパートとして登録され、これらの会合に出席した。

 なお、2003年4月からは、高木登夫に代わり寺田博(株式会社イーエムエスジャパン)が、WG 1のエキスパートを務めた。

解説表3 ISO/TC 207/SC 1会議の開催状況
年月 会議場所 会議名 主要事項
1998年6月 サンフランシスコ SC 1 改訂NWIP(新作業項目提案)却下
1999年4月 ロンドン WG ISO 14001改訂プロセスの決定
ISO 14004改訂開始指示
1999年6月 ソウル SC 1 途上国の反対、ISO 14001はレビュー継続、ISO 14004は改訂着手
1999年11月 ワシントン WG 条件を限定して改訂を勧告
2000年7月 ストックホルム SC 1 改訂を決議
2000年11月 サルバドル WG 改訂提案の分類及び選択
2001年3月 ワシントン 小グループ WD(作業原案)作成
2001年7月 クアラルンプール SC WD内容審議
2001年8月 ロンドン 小グループ CD(委員会原案)の作成
2001年11月 ビルン WG CD 1成立
2002年3月

CD 1コメント締切り
2002年6月 ヨハネスブルグ SC 1 CD 1に対するコメント検討(前半)
2002年10月 カンクン WG CD 1に対するコメント検討(後半)
2003年1月〜3月

CD 2投票
2003年7月 バリ SC 1 CD 2に対するコメント検討、DIS作成
2003年8月〜2004年1月

DIS(国際規格原案)投票
2004年3月 パリ WG DISに対するコメント検討、FDIS作成
2004年8月〜2004年10月

FDIS(最終国際規格案)投票
2004年8月 ブエノスアイレス SC 1 WGの解散を決議
2004年11月15日

IS(国際規格)発行
2004年12月27日

JIS官報公示

b) ISO 14004の改訂経緯

 1998年6月、サンフランシスコ会合において改訂のNWIPが提案されたが、時期尚早で却下された。これを受けて、1999年4月にロンドンで開催されたWGでは、適合性評価の基準となるISO 14001とは規格の性質が異なるということで、SC 1からWG 2に対して改訂作業着手の指示が出された。 この会議では、改訂作業着手に当たって作業のための指針、任務、進め方、留意事項などをまとめ、本格的な作業に備えた。作業に当たっての留意事項は、“明りょう性”、“有効性”、“規格の目的”、“規格の柔軟性”、“ISO 9001との両立性”、“SMEへの配慮”などの16項目であった。

 1999年6月のソウル会合では、本格的な改訂作業が始められた。重要な改訂課題の洗出しが行われ、検討の優先順位が定められた。優先順位の最も高い“環境側面及び環境影響”並びに”汚染の予防及び防止”の2件、並びに“全体的な整合性”の問題に対してタスクグループが結成された。

 続いて行われた1999年11月のワシントン会議では、振出しに戻ってISO 14004の位置付けの確認が行われ、“ISO 14004はISO 14001のモデルと整合しており、いかにして環境マネジメントシステムを確立、実施、維持及び改善するかの手引を示すと共に、ISO 14001を超えて効果的なシステムの実施を行うための手引としても役立つものである”とされた。

 2000年7月のストックホルム会合の際には、先に決めた優先課題の詰めを行い、8課題に対して小グループを結成してドラフト作りを進めることになった。

 続いて開催された2000年11月のサルバドル会議では、これらのドラフトのレビューを行った。この会議では、ISO 14004で掲げている5つの原理とISO 9000:2000の8原則の整合化が検討されたが、両者は異質のものであることが結論された。

 2001年6月のクアラルンプール会合では、WG議長がJoel Charm氏から同じ米国のPhil Stapleton氏に交代した。この会合では、WD取りまとめのために規格文書全体の構成を検討するグループなどを含む6つのドラフティンググループが結成された。

 2001年11月のビルン会議では、今回改訂のハイライトである“著しい環境側面”の“著しさ”のクライテリアの議論が行われた。ここには“環境のクライテリア”が含まれるのはもちろんであるが、“組織ごとに重点化されたクライテリア”のあることも確認された。

 2002年6月のヨハネスブルグ会合からは、これまで続けられてきた小グループによる検討に終止符を打って、全体会議で要素ごとに結論を出すまとめの段階に入った。CD 1に対しては700件近いコメントが出されていたので、エディティンググループによるエディトリアルコメントの検討も進められた。 この会合では、環境側面の特定及び著しい環境側面決定の方法として4機能方式が採用されると共に、新たにISO 14031からEPI(Environmental Performance Indecator)、MPI(Management Performance Indicator)及びOPI(Operational Performance Indicator)などのパフォーマンス評価指標が導入され、改訂版の骨子が定まった。検討の残されたコメントは、続く2002年のカンクン会議ですべて処理され、ISO 14001に合わせてCD 2とする大勢を整えた。

 2003年6月のバリ会合の前に締め切られたDIS投票は、賛成29、反対0の結果であった。この際に寄せられたコメントは385件で、続いて行われた2004年3月のパリ会合で、これらのコメントのうちテクニカルコメントの検討が行われた。残りのエディトリアルコメントの処理は議長団に任せる形でFDISを用意することとなった。

 その後、8月にFDISが回付され、2か月の投票の結果、賛成52、反対1でIS化が可決され、この改訂作業は終了した。

2.3 改訂審議に対する国内委員会の対応

 改訂作業が本格化してWDが完成(2001年3月ワシントン)したことを受けて、国内審議委員会である環境システム小委員会(SC 1)[委員長:吉田敬史(三菱電機株式会社)]にタスクフォース[設立当時、小森克紀(当時、東京電力株式会社)、2003年11月からは寺田博(株式会社イーエムエスジャパン)]が設置され、産業界をはじめ広い範囲からの見解を求めるなど具体的な検討活動がなされた。 主査をはじめ委員は多忙を極める方々ばかりであったが、ISOの動きに合わせて会合を重ね、日本の見解をまとめることに大きく貢献した。特に、ISO 14004の検討作業には、WG 2エキスパートの中丸進(株式会社リコー)及び吉村秀勇(財団法人日本規格協会)の2名が大きく検討した。

 タスクフォースの議論はISO 14001に偏重しがちであったが、CD、CD 2、DISなど投票・コメントが求められる場面では、タスクフォースで議論した結果に基づいて対応した。各段階での我が国からのコメント及び改訂版への反映の状況は、次のとおりである。

 CD 1に対しては、2002年4月に国内委員会から寄せられた140件のコメントをエキスパート中心の小グループで2度にわたって整理し、ISO 14001との記述の整合を求めるコメント、ISO 14000シリーズ内のISO 14001以外の規格の定義を盛り込むことなどを含む、40余のコメントを提出した。

 その直後の2002年6月のヨハネスブルグ会合では、ドラフティングのためのタスクフォースが設置され、同年10月のカンクン会合までの間に集中的なドラフティング作業が行われた。日本は環境側面の項を担当するグループに参加していたが、毎週1項目ごとにタスクフォースのリーダーから送られてくるドラフトに対し、締切りに追われながらもった会合の回数は、7月から9月の約2か月間に7回にも及んだ。

 CD 2に対しては、2003年1月から3月の間にコメントの集約が行われたが、国内委員会の委員から寄せられた50件近いコメントのうち21件を提出した。この中には、ISO 14004の構造の整理に関するコメント、ISO 14001との記述の整合に関するコメント、ISO 14001及びISO 14004以外のISO 14000シリーズの規格への参照を追加する提案などが含まれており、そのほとんどが採用されている。

 2004年1月のDIS投票時には、ISO 14001との記述の整合及び附属書の記述の完成度を高める主旨として20件のコメントを提出し、これらはほとんどすべて採用されている。

2.4 国内委員会ISO 14001/ISO 14004翻訳・解釈WGの活動

 2003年7月に改訂ISO 14001の発行に備えて、国内委員会SC 1小委員会にISO 14001/ISO 14004翻訳・解釈WG[主査:吉澤正(帝京大学)]が設置された。そのねらいはISO規格、JISの同時発行とされ、DISの投票回付が行われた2003年8月から作業を開始し、同年10月にはDIS 14001の翻訳を、2004年4月にはDIS 14004の翻訳を完成した。 引き続き、ISOにおけるFDISの準備状況に合わせて、2004年8月にはFDIS 14001の翻訳を、また10月にはFDIS 14004の翻訳を完成させた。同グループの開催はこの間に40回以上に及んだ。

 翻訳に当たっての原則、並びに訳語の選定及び使用に関しては、この解説の3.2を参照して頂きたい。

3. 改訂審議中に問題になった事項

3.1 ISO/TC 207/SC 1/WG 2の審議中に問題になった事項

a) 改訂の目的・方針

 ISO 14001の改訂の重要な目的の1つは、ISO 9000シリーズとの両立性の向上とされた。ISO 14004にも当然この条件は当てはまるが、議論の結果、実務上重大な問題はないと結論された。ISO 14004の位置付けに変更はなく、今回の改訂においてはISO 14004の目的を果たすためより一層の充実を図ることであり、次の指針に基づいて改訂作業を進めることにした。

・ 環境パフォーマンス改善に資する」組織の業種、規模又は国、地域などによらず、環境マネジメントシステムの実施、改善に役立つ指針を提供して組織の環境パフォーマンスを改善する。
・ 中小企業の環境マネジメントに有効なものとする。
・ 持続可能な開発のコンセプトに沿うものとする。
・ 多様な文化、社会及び組織に適用でき、各種のマネジメントシステムとの両立性を妨げないこと。

b) 検討課題について

 ISO 14004の改訂で検討すべき課題は何なのかについて議論が慎重に行われた。限られた改訂期間中にできる限りコンセンサスレベルを上げ、タイムフレームを十分に満たす作業を行うため、これらの検討課題の優先順位を議論した。何回かの会合の末、挙げられた課題と優先順位は、次のとおりである。

@環境側面及び環境影響 A汚染の予防 B目的・目標 Cコミュニケーション D法的要求事項 E継続的改善 F初期環境レビュー G運用管理 H監視及び測定 I環境方針 Jマネジメントレビュー K適用範囲 L文書及び記録 M教育訓練

 これらの課題のうち、優先順位が上位のものについては、作業の初期段階にタスクグループを設置して、WD作成のベースを検討した。

c) 留意事項について

 作業を開始するに当たっては、特に改訂の結果が問題解決を与え、シンプル明快であり、コスト効果があること、及びSMEを含むあらゆる規模の組織のニーズに合ったものとするため、次の留意事項を整理した。

@単純平易 A明快 B有効かつ効果的 C経営資源への配慮 D規格の目的に合致 E柔軟性 F使いやすさ G既存ユーザの配慮 H実証及び検証の可能性 I要素間の整合 JISO 9001:2000との両立性 KSMEへの配慮 L途上国への配慮 M透明性 N翻訳の容易さ

d) ISO 14004の位置付けに関する議論

 ISO 14004の位置付けに関する議論は再三にわたって繰り返された。ISO 14001のモデルをベースとしてISO 14001の要素はすべて取り込まれるものとし、環境マネジメントシステムの導入、実施及び改善のためのガイダンスを与えるものとした。また同時に、ISO 14001には含まれないコンセプトを含んでもよいとされた。この点では、ISO 9004の位置付けと類似したものとなる。

e) 環境マネジメントシステムの原則に関する議論

 ISO 14004:1996の5原則及びISO 9000:2000に示された品質マネジメントの8原則を比較する議論が行われた。ISO 14004:1996の5原則はPDCAの方法論に関する原則を示しており、マネジメントの基本原則を示すISO 9000:2000の8原則とは異質なものであることが結論とされた。

 なお、ISO 14004:1996では、各項で5原則をボックスに囲んで記していたが、これらは削除された。規格のタイトルからも“原則”の語を削除することが議論されたが、規格はあくまでこの意図で書かれているので、規格のタイトルには“原則”の語が残された。

f) 継続的改善の表現に関する議論

 改善の対象をめぐる議論で、2003年のバリ会合の際に激しい議論が行われた。イギリスの提案は、“環境マネジメントシステムの改善を通して環境パフォーマンスを改善する”という表現であったが、米国、フランスなどは96年版の記述を支持し、“環境マネジメントシステムの改善を行えば、結果として環境パフォーマンスが改善される”で落ち着いた。この議論は、ISO 9001も関連する根の深い問題である。 ISO 14001を担当するWG 1では、一般要求事項の“継続的に改善すること”の対象を、“環境マネジメントシステム”とするか、ISO 9001:2000に倣って“システムの有効性”とするかを議論したが、上記イギリスの提案は“システムの有効性”の表現に近い。

g) 環境側面及び環境影響

 次の項目である“汚染の予防”と共に、今回の改訂で最も議論に時間をかけた。議論においては、課題を3点に絞り、それぞれについて次のような内容が討議された。

@ コンセプトの明確化:(特に製品の)環境側面、環境影響、著しさ及び側面の特定範囲など
A 情報不足への対応:環境側面を特定する際の活動、製品及びサービスの選定について、並びに著しさの評価に当たっての経営上の関心事の取扱いについて
B 手法の明確化:影響の評価手法、側面特定範囲の決め方、管理及び影響の範囲(供給者、請負者の取扱い)、側面特定のプロセス、著しさの評価基準及び著しさの評価者は誰か、など

 結局、著しい環境側面の決定プロセスを4つの機能で記述することとし、著しさの評価基準には、“環境上の事項”、”法的要求事項”及び“利害関係者の関心”を含むべきこととなった。

h) 汚染の予防

 この問題に関する課題は、“汚染の予防の概念の明確化”、“有用なガイダンス記述”及び“市場での混乱回避”の3点とされた。国際的にも、規格以外に種々の考え方が用いられているため、特に途上国では混乱が見られる。この混乱を避けるために、規格では独自の定義を設けているが、この定義の中には、省資源、省エネルギーの考え方が読み取りにくいということで、新たに環境方針の項に“実践の手引”が設けられることとなった。この中では特に、“source reduction”の解釈が議論になった。

i) 法的要求事項の表現について

 ISO 14001の議論と同様に、ISO 14004の方でも“legal requirements”の頭に“environmental”を冠することの是非について議論が行われた。ISO 14004:1996では、“legal and other requirements to which the organization subscribes”及び“relevant environmental legislation and regulations and other requirements to which the organization subscribes”の2種類の表現が使われていたが、これらを統一して“the applicable legal requirements and other requirements to which the organization subscribes related to its environmental aspects”と書くことにした。 この過程で“environmental legal requirements and other environmental requirements to whict...”と表現されたことに対しては、この記述によると“環境法の要求事項”だけに限定されることとなり、対象がいわゆる環境法だけになって範囲が狭くなるという議論が強く、前述のように“environmental”を“legal”の前から削除して、文末に“related to its environmental aspect”を記すこととした点は注目すべきである。

j) 不適合の対象に関する議論

 今回の改訂で不適合の用語は定義付けられたが、定義の中での“要求事項”とは何かの議論が行われた。“要求事項”は、規格(ISO 14001)の要求に限るのか、システム上の要求事項すべてを指すのか、又はパフォーマンス上の数値も含まれるのか、などである。これに伴って、この項に加えられた不適合の事例リストの削除提案もあったが、これは却下された。

k) LCAの引用に関する議論

 環境側面を特定する第1の機能で、活動、製品及びサービスを理解する必要があり、この際にLCAの言及が必要という議論がなされ、“環境影響は、活動、製品又はサービスのライフサイクルの個々のあるいはすべての段階において起こるかもしれない(本体の4.3.1.2)”の表現が取り入れられた。

l) 事例の取扱いについて

 WG 1のISO 14001の議論の中にもあったが、“この事例は不適切である”又は“あの事例が抜けている”という議論は始終付きまとった。しかし、“事例はあくまで事例”である。ある組織にとって不必要な事例もあれば、ある組織から見れば脱落していると思われるものはいくらでもあるはずである。

3.2 JIS Q 14004の翻訳で注意した事項

 ISO 14004:2004からJIS Q 14004:2004への翻訳では、JIS Q 14001:2004との整合性を図るため、基本的にJIS Q 14001:2004で当てた訳語を用いるようにした。

 翻訳上問題になった用語及び使用した訳語を、アルファベット(辞書式)順に次に挙げる。

 なお、整合性の観点から、JIS Q 14004:2004の翻訳はJIS Q 14001:2004の翻訳と密接なかかわりがあるため、次に挙げるものの中にはJIS Q 14001:2004の翻訳過程で議論になったものも含んでいる。

a) adequacy:適切性、妥当性

 原語には質量共に満足できる意があるので、“適切性”、“妥当性”の語を当て、JIS Q 9001:2000の訳語に合わせて使い分けた。

b) appoint:任命する

 96年版では、“指名する”としたが、JIS Q 9001:2000に合わせて“任命する”とした。

c) approach:取組み、手法、アプローチ

 方法論的な使用でかなり明りょうになっている場合は“アプローチ”、一般的な場合には“取組み”、“手法”などとした。

d) awareness:自覚

 JIS Q 9001:2000との整合化の点で、最も問題のあった語である。JIS Q 9001:2000では“認識”の訳語が当てられているが、ISO 14001及びISO 14004では“awareness”の対象として自己の立場、価値、義務、使命などを示す記述があるので、単に認識するだけでなく、これらを明りょうにわきまえることを要求していると解釈して、96年版を踏襲し“自覚”を存続することにした。

e) certification/registration:認証/登録

 我が国の認定・認証制度においては、“審査登録”の語が当てられていたが、日本適合性認定協会において“認証/登録”用語の検討を進めていることも受けて、規格内の表現としては96年版の訳語を変更して“認証/登録”とした。

f) commitment:コミットメント

 96年版では、文意に沿って“関与”及び“約束”の2語を当てたが、翻訳の原則に基づき、JIS Q 9001:2000に合わせて“コミットメント”とした。この語には、誓約から軽い約束、単純なかかわり合いまで広い意味があるが、文意及び立場に応じた解釈が必要である。また、JIS Q 14004:2004には、各種のコミットメントが用いられているが、環境方針中に記述されたコミットメントには“environmental policy”又は“policy”が冠されているので、この場合には“環境方針コミットメント”又は“方針コミットメント”としてある。

g) communicate(communication):伝達する、周知する、コミュニケーションを行う

 “communicate”には、相互に情報を分かち合う意味があり、適切な訳語が見当たらないので、文脈に応じて一方的に伝える場合、理解を求める場合、及び相互に交流する場合に対応して3様の訳語を当てた。

h) competence:力量

 96年版では、“能力”の訳語を当てたが、JIS Q 9001:2000に合わせて“力量”に変えた。“能力”の語には“なし得る力”という意味しかなく、“力量”にはその能力の大きさの度合いの意味がある。原語の“competence”には、そのことを十分に又は効率的に成し遂げる能力の意があるので、“力量”の方がより適切な訳語であると考えた。

i) compliance:順守

 96年版に従った訳語としたが、漢字を“遵守”から“順守”に変更した。いずれも“従い守る”という意に用いられるが、常用漢字という主旨から、より一般的な用字を当てた。ただし、附属書のA.5.5のNOTE 1に記された“environmental compliance audit”の訳語は、その主旨から“環境順法性監査”とした。

 なお、本体の4.5.2のタイトルについては、“Evaluation of compliance”を“順守評価”として1つの熟語ととらえた。

j) consider:考慮する

 96年版では、“consider”には“配慮する”の訳語を当てたが、“配慮”の語は心配りという情緒的な使い方が一般的であるので、“考慮する”と改めた。原文では、“consider”の表現を“take into account”と改めた部分があるが、これは対象が要求事項に関連する場合となっている。“account”も“consideration”同義であるが、“take into”に注目して“take into account”及び“take into consideration”は、強勢を与えて“考慮に入れる”と訳した。

k) consistent with:整合して、首尾一貫し、一貫性のある

 96年版及びJIS Q 9001:2000と同様、“整合して”を当てることとした。ただし、本体の4.6だけは文体から考えて“首尾一貫させて”としているが、意味は変わらない。

l) determine:決定する、特定する

 “determine”は事物、方法、原因、事柄の適否などを定めるのに使われるので、原則として“決定する”としたが、本体の4.5.3b)のように対象が“原因”の場合は、日本語の慣例に従って“特定する”と訳した。

m) develop:設定する、とりまとめる

 “develop”の語の意味は、“より成長させる”“より成熟したもの、より上位のものとする”などである。JIS Q 9001:2000では“design and development”となっているので、“開発”の訳語が当てられているが、ここでは文意に従って、“方針の設定”又は“情報のとりまとめ”とした。

n) documentation:文書類、文書化

 本来“documentation”は、文書の集合体を指す語であり、本文中ではほとんどその意味で用いられているので、ISO 14001及びISO 14004の項目タイトル変更を機会に“文書類”に変更した。ただし、一部では理解しやすいため文書化の訳語も残した。本体の4.4.5のタイトルは、JIS Q 9001:2000に合わせて“Document control”から“Control of documents”に変更されているが、JIS Q 14001及びISO 14004では変更しなかった。

o) environmental management system:環境マネジメントシステム

 略語“EMS”の使用は避け、常に“環境マネジメントシステム”と訳出した。

p) establish:確立する、設定する、策定する、作成する、規定する

 “establish”には、本来、システムや組織を“set up”する意で用いられるが、規格中では多用されており、文意に合わせて上記のように多様な訳語を当てた。

q) function:部門、機能、職務

 ISO 14004:2004では多用されているが、組織に関する記述に関しては“部門”、個人の活動、目的などを表す場合には“機能”又は“職務”の訳語を当てた。

r) hazard operability study:HAZOP

 “hazard operability study”は和訳すれば“危機回避スタディ”くらいになるが、最近この手法を“HAZOP”と呼ぶことがあるので、この語を採用した。

s) identify:特定する、識別する、明確にする

 “identify”は、まさに人、事物を特定することであり、JIS Q 9000:2000とほぼ合わせて上記の訳語を当てた。

t) infrastructure:インフラストラクチャー

 基本的な構造、施設を表す用語として片仮名による使用がかなり一般化しており、JIS Q 9001:2000に合わせて“インフラストラクチャー”とした。

u) maintenance:維持、メンテナンス

 良い状態に保つ意で用いられているが、手順、システムなどを対象とする場合には“維持”、機器、設備を対象とする場合には日常使用されている“メンテナンス”の語を当てた。

v) management:マネジメント、経営層

 JIS Q 9000シリーズと異なって“management system”、“management review”、“environmental management”以外にはほとんど使われておらず、これらはいずれも片仮名で“マネジメントシステム”、“マネジメントレビュー”、“環境マネジメント”とした。人を指す場合のうち、“top management”はJIS Q 9001:2000に合わせて片仮名で“トップマネジメント”としたが、“management”一語の場合は96年版に従って“経営層”とした。

w) may(might):してもよい、かもしれない

 “may(might)”には、許可、容認、推量、祈願、譲歩、能力などの用法があるが、規格中では許可、容認又は推量として用いられている。本文中では1か所だけが容認の形で使われている。附属書Aでは多くが推量の形で使われており、この場合は文脈に従って“かもしれない”、“可能性がある”、“こともある”などとした。

x) NOTE:参考

 96年版では“備考”だったが、JIS Q 14001:2004及びJIS Q 14004:2004ではJIS Q 9001:2000に合わせて“参考”とした。

y) performance:パフォーマンス

 96年版及びJIS Q 14000ファミリー規格の訳語に従って、今回も片仮名表記とした。この規格の中では、定義化された“環境パフォーマンス”及び“環境マネジメントシステムのパフォーマンス”の2つの用い方がされている。

z) product stewardship:プロダクトスチュワードシップ

 非常に訳語の見出しにくい語である。“製品に対する良心的責任感”くらいであろうが、ここでは片仮名表記とした。

aa) programme:プログラム、実施計画

 本体の4.3.3の中では、今回の改訂の主旨(目的・目標を達成するためのものとして96年版の4.3.4が4.3.3に併合されたこと)をくんで、より実情を表すと考えられる点から“実施計画”とした。また、本体の4.5.5ではJIS Q 9001:2000及びJIS Q 19011:2003に合わせて従来どおり“プログラム”とした。

bb) relevant:関連する、適切な

 基本は“適切な”であるが、“relevant function and levels”などでは“関連する部門及び階層”とした。

cc) review:レビュー、レビューする

 96年版では“management review”の場合だけ“見直し”とし、その他では“レビュー”としたが、JIS Q 14001:2004及びJIS Q 14004:2004ではJIS Q 9001:2000に合わせ、すべて片仮名表記とした。

dd) shall(should):すること(するとよい)

 規格中では“shall”はすべて命令又は禁止の意味で使われており、JIS Z 9301に規定された用語によるが、JIS Q 9001:2000に合わせてすべて“すること”とした。“should”は推奨の用法となっているが、これもJIS Q 9004:0222に合わせて“するとよい”とした。

ee) source reduction:発生源の低減

 翻訳・解釈WGの中で最も議論された用語の1つである。ISO/TC 207/SC 1/WG 2の審議中にも、“汚染の予防”は優先順位の最も高い検討課題の1つであり、関連事項として議論の対象であった。“source reduction”は“end of pipe”と対比して用いられており、JIS Q 14004:2004の4.2“汚染の予防”に関する“実践の手引”にあるように、汚染の予防において最も優先的に考えるべき対応である。資源エネルギーの利用を含めて廃棄物の発生に至るまで、根源を絶つことを指している。しかる後に代替の処置を取ることになる。“発生源”というと、廃棄物、排水、排ガスなどを思い浮かべがちであるが、広い意味での“発生源”ととらえて頂きたい。

ff) training:教育訓練

 96年版では単純に“訓練”としたが、“training”には“teaching”が含まれており、この意を含めることが議論された。一方、JIS Q 9001:2000では“教育・訓練”となっているが、これでは完全に教育(education)と訓練(training)の結合に過ぎないことになる。結局、“training”を表現する適切な語が見つからなかったので、“教育訓練”という新しい熟語として表現することとした。

4. 適用範囲

 今回の規格改訂は、定期見直し及び改訂に関するISOのルールに基づくものであると同時に、環境マネジメントシステムの実施や審査登録が非常に普及したことも大きく関連している。この規格は、JIS Q 14001:2004と整合が取れており、JIS Q 14001:2004の要求する環境マネジメントシステムの確立、実施、維持及び継続的改善に十分役立つものであると同時に、それ以上の環境パフォーマンスの改善を目指す組織にとっても有効な情報を与えている。 JIS Q 14001:2004では、組織の自主最良の範囲の拡大を期待しているが、この部分では特に力を発揮することが意図されている。環境マネジメントシステム規格の改訂に当たって特に議論された次の2点には注目して頂きたい。

a) チェリーピッキング(いいとこ取り)の防止

 “活動、製品及びサービス”の表現は、当初の表現でも組織が抱える環境側面のすべての意図はあったが、“又は”の語で選択性を許してしまったところがある。

b) 自主裁量事項の明確化と決定

 “管理できる環境側面及び影響を及ぼすことができる環境側面”の後半部分が自主裁量事項に相当する。一般要求事項の中では、特にこのような部分に対して“組織はどのようにしてこれらの要求事項を満たすかを決定すること”として、どの範囲で管理をするかの決定を要求している。 したがって、効果を期待するならば、極力自主最良の範囲を大きく取るということが言外に意図されていると考えるとよい。その適切性、妥当性及び有効性は組織によって異なってくるが、組織のトップマネジメントも、適合性の評価者も、ますます良識が問われることになる。

 もう1点、今回の改訂の原則であったISO 9001との両立性についていえば、マネジメントシステムの効率化及び合理的な運用のためには品質と環境マネジメントシステムの統合的な運用が重要であるが、改訂版はその意味でも使いやすくなっているはずである。

5. 規定項目の内容

5.1 全体構成について

 ISO 14001:2004の要求事項に合わせる項目番号とし、これに合わせて96年版の記述の移行などを行っている。また、96年版では規定中の項目ごとに5原則をボックスで囲って記述していたが、このボックス囲いの5原則の記述は削除された。ただし、その主旨は活かされているので、規格のタイトルは96年版と同様に“環境マネジメントシステム−原則、システム及び支援技法の一般的指針”とされている。 また、環境方針を除いて、中タイトルのすべて及び必要な要素のタイトルの後には“一般的な手引”のボックスを設けており、この中では、関連項目を引用するクロスインデックスを採用して利用者の助けとしている。従来からある“実践の手引”もその多くが内容を充実しており、規格の全体のボリュームも96年版に比べ1.5倍になっている。また、引用されている規格にも、96年版にあったISO 14031、ISO 14040シリーズのほか、ISO 19011及びISO 14062が加えられている。

5.2 用語の改訂及び追加(本体の3.)

 96年版から収録されている13用語の定義の一部には、主としてISO 9000:2000との整合の意味での改訂が加えられている。これらの内容は、ISO 14001:2004と同様である。また、ISO 14001:2004と同じく新規に“文書”、“記録”、“手順”、“監査員”、“不適合”、“是正処置”及び“予防処置”の7語が加えられた。同時にISO 14004:2004では、不適合に関連して“修正”の1語がISO 9000:2000から部分引用され、“環境パフォーマンス指標”、”マネジメントパフォーマンス指標”及び“操業パフォーマンス指標”の3語がISO 14031:2000から引用され、計24語が定義付けられている。

5.3 環境マネジメントシステムの要素(本体の4.)

 環境マネジメントシステムの要素としては、ISO 14001:2004とまったく合わせて“一般”、“環境方針”、“計画”、“実施及び運用”、“点検”及び“マネジメントレビュー”が大項目とされている。一般の項では、環境マネジメントシステムモデルがISO 14001:2004と同じ図を用いて説明されており、これに付けられた“実践の手引”の中にはPDCAの詳細な説明が付けられている。 一般事項としては、トップマネジメントのコミットメント、環境マネジメントシステムの適用範囲及び初期環境レビューが記述されているが、内容は96年版を充実させている。例えば、初期環境レビューでは、レビューの範囲を明確にし、従来の記述に加え、a) 法的要求事項のみならず組織が同意するその他の要求事項を含むこと、b) サプライチェーンへの配慮から、調達及び契約活動に伴うものを含めること、c) コストなど経済性への視点を加えるようにした。

5.4 環境方針(本体の4.2)

 環境方針の重要な言及事項として“汚染の予防”があるが、その解釈をめぐって若干の混乱があったので、改訂版では“汚染の予防”に関する“実践の手引”を追記した。この中では、汚染の予防は段階的に取り組むとよいことが示されている。最優先するのは“source reduction”で、5段階目はいわゆる“end of pipe reduction”である。“source reduction”をJIS Q 14001:2004及びJIS Q 14004:2004では、“発生源”と訳したが、これは広義に解釈して頂きたい。大気、水、土地を汚染することはもちろん含まれるが、人の健康を害することも、その他の動物、植物に害を与えることも、資源、エネルギーを枯渇させることもすべて含まれており、その源となるものを指している。

 第2段階から第4段階までの表現は、材料の使用を対象とした表現になっており、発生源で対処できない場合は内部での再利用を、それができない場合は外部での再利用を、それもできない場合は回収をして、最終の処理として焼却なり埋め立てなりを行うという考えである。

5.5 計画(本体の4.3)

 計画の冒頭部分には、最初の“一般的な手引”が登場する。ここでは計画に含まれるすべての要素、並びに関連項目及び参照規格などが説明されている。

5.6 環境側面(本体の4.3.1)

 環境側面の項では、”活動、製品及びサービスの理解(本体の4.3.1.2)”に基づいて“環境側面の特定(本体の4.3.1.3)”を実施し、それらの側面から生じる“環境影響の理解(本体の4.3.1.4)”をしたうえで“著しい環境側面の決定(本体の4.3.1.5)”を行い、著しい環境側面を中心にしてマネジメントを進めるという4つの機能を用いて記述されている。対象となる環境側面の範囲は、もちろんJIS Q 14001:2004と同様に、選択性をもたない記述で“活動、製品及びサービス”されると共に、これも96年版の記述に代えて、“管理できる環境側面及び組織が影響を及ぼすことができる環境側面”の表現が取られており、厳密に組織のマネジメントの範囲を設定して欲しい主旨が表現されている。

 第1の機能の“活動、製品及びサービスの理解”の項では、影響を及ぼすことができる側面としてライフサイクル的な考え方が有用であることが述べられている。また、第2の機能の“環境側面の特定”の項では、改訂の主旨に合わせて、製品、サービスの上流側、下流側における環境側面の抽出について、請負者の環境パフォーマンス、製品、サービスの設計、用いる材料、物品、サービスの側面などを考慮するとよいことが示されている。

 続く第3の機能では、環境アセスメントやライフサイクルアセスメントの利用なども示唆され、有益な影響の評価にも触れている。

 最後の機能“著しい環境側面の決定”の部分では、著しさが相対的な概念であること、そして著しさの評価クライテリアには、環境基準、適用可能な法的要求事項、内外利害関係者の関心事項などを中心にして、組織の特徴的事項を加えるとよいことが示されている。

5.7 目的、目標及び実施計画(本体の4.3.3)

 ISO 14001と同様に、96年版では別項目として扱われていたプログラムの内容は、目的・目標の項と合体された。その主旨にのっとって、、JIS Q 14004:2004では“programme”を“実施計画”と訳した。また、96年版では独立項であった“内部パフォーマンス基準”は、“パフォーマンス指標”としてこの項に合体された。パフォーマンス指標は、目的及び目標の達成状況を追跡するのに有効とされたからである。それと同時に、“環境パフォーマンス指標”として“マネジメントパフォーマンス指標”及び“操業パフォーマンス指標”の考え方をISO 14031から導入した。この項の“実践の手引”には、環境パフォーマンス指標として13項目の例示が挙げられている。

5.8 資源、役割、責任及び権限(本体の4.4.1)

 ISO 14001と共に、本体の4.4.1のタイトルも96年版の“責任及び体制”が“資源、役割、責任及び権限”に改められた。ISO 9001:2000の関連記述に対応させたものである。内容に大きな変更はない。

5.9 力量、教育訓練及び自覚(本体の4.4.2)

 本体の4.4.2のタイトルは、訳語及び書き順が変えられた。訳語が変えられたのはJIS Q 9001:2000との整合、書き順が変えられたのはISO 9001:2000との整合を考えたためである。96年版では、3種の階層の要員に対するニーズととらえられていたが、改訂によって特殊な階層の要員、一般の要員に対するニーズ、及びこれらを支えるニーズの形で書かれている。 自覚を求められている要員の表現は、方針の項と同様に“組織で働く又は組織のために働くすべての人”と改められたが、前者は組織に所属する人々を指し、後者は組織に所属する人もそうでない人も含んでいる。この項の“実践の手引”には、96年版からの変更はない。

5.10 コミュニケーション(本体の4.4.3)

 ISO 14001:2000に倣って外部コミュニケーションの表現が変更された。同時に、96年版では説明が不足していたコミュニケーションプロセスがこの項すべてを割いて説明されており、そのステップが示されている。

5.11 文書類、文書管理(本体の4.4.4及び4.4.5)

 本体の4.4.4及び4.4.5ではISO 9001:2000との両立性の向上が図られると共に、新しくISO 14001:2004の要求事項となった環境マネジメントシステムの適用範囲の記述についても追記されている。96年版ではなかった“文書管理”の項も設けられた。

5.12 運用管理(本体の4.4.6)

 運用管理を確実なものとするためには、まずニーズの把握が必要であり、そのためのガイダンスが示された。また、運用管理を確実にするためには、96年版にあった“運用基準”だけでなく、“管理方法の選択”などを含めた文書化手順が重要であることが述べられている。

5.13 緊急事態への準備及び対応(本体の4.4.7)

 本体の4.4.7では、ISO 14001:2004附属書に合わせて、手順策定に当たっての考慮事項が“実践の手引”として記述されている。

5.14 監視及び測定(本体の4.5.1)

 96年版ではISO 14001ではタイトルが異なっていたが、改訂版ではISO 14001:2004のタイトルに合わせられている。内容は96年版と大きく変わるところはないが、監視、測定機器には校正又は検証が必要であること、及び検証の妥当性を保証したい場合の対応に関する記述がISO 9001:2000から引用されている。

5.15 順守評価(本体の4.5.2)

 96年版には記述のなかった項である。ISO 14001:2004に新設された“順守評価”の項に対応している。対象には、“法的要求事項”も“組織が同意するその他の要求事項”も取り上げられて、定期的な順守評価が求められているが、組織が同意するその他の要求事項の評価プロセスは、法的要求事項に対するプロセスとは別個のものであってよいとされている。組織が同意するその他の要求事項はボランタリーのものであるから、別の形で行ってもよいことが示されている。

5.16 不適合(本体の4.5.3)

 不適合に対しては、修正、是正処置及び予防処置の3種の処置があることが示されている。ここでは要求事項の内容が問題となるが、“システムの一部が意図したように機能しなかったり、環境パフォーマンス要求事項が満たされなかった”ことを指すと説明しており、両者の例示が示されている。

5.17 内部監査(本体の4.5.5)

 本体の4.5.5には特記すべき変更点は少ないが、ISO 9001:2000の要求事項である“監査及び監査員の客観性及び公平性”に関する記述が追加されている。

5.18 マネジメントレビュー(本体の4.6)

 96年版にもマネジメントレビューに対するインプットが挙げられていたが、内容項目が充実されている。継続的改善については、ISO 9001:2000の表現に合わせて改善の機会をとらえることの重要性、及びその機会に取るべき処置の内容を決定する必要があることが述べられている。

5.19 附属書(附属書の表A.1及び表A.2)

 96年版の附属書には、環境と開発に関するリオ宣言、及び持続可能な開発のための国際商業会議所(ICC)のビジネス憲章が収録されていたが、これらは削除された。その代わりに、今回の改訂で記述の充実が図られた環境側面を中心とする計画段階の関連表、表A.1及び表A.2が収録されている。表A.1は、活動、製品及びサービスと環境側面及び環境影響の関連リストを示すもので、活動、製品、サービスそれぞれ2〜3の例が挙げられている。 また、表A.2は、側面から目的、目標、計画、パフォーマンス指標、運用管理及び監視測定のための特性までの一貫した関連性を、やはり活動、製品及びサービスの事例ごとに示したものである。これらの関連表は、マネジメントシステムに初めて取り組む組織にとっては大いに参考になるものであると思う。

6. 懸案事項

 ISO 14001:2004とISO 14004:2004の関係は、ISO 9001:2000とISO 9004:2000の関係に類似している。ISO 9004:2000は、ボックスの中にISO 9001:2000の要求事項を記述して関連するパフォーマンス改善のガイドを与えている。ISO 14001:2004には附属書があるので、この役割を果たすだけでは不十分なものとなる。 今回の改訂では、ISO 14004:2004の箇条番号をISO 14001:2004に一致させたこともあって、この意味での位置付けがやや後退した感じは否めない。その意味では、ISO 14004のねらいの1つであるISO 14001を超えて環境パフォーマンスの改善に資するガイドを与え、ISO 14001とのコンシステントペア規格としての存在価値を向上させることが、今後の課題であるといえよう。

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