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4.4.7 緊急事態への準備及び対応

 組織は、環境に影響を与える可能性のある潜在的な緊急事態及び事故を特定するための、またそれらにどのようにして対応するかの手順を確立し、実施し、維持すること。

 組織は、顕在した緊急事態や事故に対応し、それらに伴う有害な環境影響を予防又は緩和すること。

 組織は、緊急事態への準備及び対応手順を、定期的に、また特に事故又は緊急事態の発生の後には、レビューし、必要に応じて改訂すること。

 組織は、また、実施可能な場合には、そのような手順を定期的にテストすること。

1. 事故および緊急事態の可能性の特定

まず、事故や緊急事態が発生する可能性を特定する手順を定めるように要求しています。想定できる事故・緊急事態にはどのようなものがあるかを特定する手順を準備します。これには、

・ 過去(事故・緊急事態、同業種・業界、ケガ、ヒヤリ・ハット、苦情、是正情報)の洗い出し、環境リスク分析
・ 設備・施設、機器、プロセス、材料・物品ごとの環境リスク分析

などが代表的なものとして挙げられますが、「4.3.1 環境側面」における環境側面の特定のところで潜在する事故・緊急事態の環境側面をも特定してしまうという手順を入れておくことが最も手っ取り早く漏れもないのではないかと考えます。

事故・緊急事態の環境側面を特定するに当たり、事故・緊急事態の事例や情報をテレビ、情報誌あるいはインターネットなどのさまざまな情報源から入手し、それらを考慮するということは特定のための重要な助けとなるでしょう。

事故・緊急事態の一般的な例としては、火災・地震などの天災に伴う緊急事態や施設・設備の操作ミスなどによる事故が挙げられます。これらと保有している施設・設備の運転、工程での作業とを照らし合わせて事故・緊急事態が発生する可能性を探し出します。その作業を「4.3.1 環境側面」の環境側面の特定手順の中に組み込んでしまおうということです。

事故・緊急事態の環境側面を特定する際には、「4.3.1 環境側面」でも述べましたが、敷地の隅から隅まで十分足を運んで観察することが大切です。排水溝、コンプレッサー、放置されているドラム缶、危険物倉庫、産業廃棄物置場など、普段目の届かないところで予想もしないような事故・緊急事態が発生するかもしれません。

なお、「当社の事故・緊急事態は××です」と特定した事故・緊急事態のみを環境マニュアルなどに規定したとしても、それはあくまでも特定手順を運用した結果であり、手順そのものが規定されていなければこの要求事項を満たしているということにはならないことに気をつけてください。

2. 対応し、予防または緩和する手順

次に、この手順によって特定された、発生する可能性のある事故・緊急事態に対して、

・ 実際に起こってしまった場合に対応する手順
・ 発生や有害な環境影響を予防する手順
・ 有害な環境影響を緩和する手順

を準備します。それらの手順には次に挙げるような項目を含めておくとよいと考えます。

【一般的事項】
・ 事故・緊急事態の種類・内容
・ 想定される発生場所・環境影響
・ 関連する環境側面、工程・作業、施設・設備

【対応する手順】
・ 体制(役割・対処・避難)・責任
・ コミュニケーション(社内報告ルート、外部機関への通報ルート)
・ 発生時の対処方法
・ 事後報告内容

【予防する手順】
・ 環境パトロール
・ 施設・設備の補修や整備、定期点検
・ 警報などの作動テスト
・ 関連手順書の整備・見直し

【緩和する手順】
・ 環境被害拡大防止(緩和)方法
・ 備品(土豪・オイル吸収マットなど)の点検・整備

なお、これらの手順の文書化までは要求されていませんが、事故・緊急事態による環境影響の大きさや程度、手順の周知・理解の程度(事故・緊急事態が発生した場合に速やかに動ける体制ができているかどうか)などに応じて手順書としておくべきかどうか判断しましょう。

3. 手順のレビューとテストの実施

発生の可能性を特定した事故・緊急事態が実際に起こってしまった場合、処置対応後にその手順が適切で妥当で有効なものであったかどうか(発生した事故・緊急事態への対処として適切な手順であったかどうか)見直し、問題がある場合は該当部分を改訂します。また、事故・緊急事態が発生していない場合においても定期的に手順の見直しを行います。

実施可能な場合には、手順について定期的にテスト(その手順が事故・緊急事態に対して妥当で有効であるかどうかの評価)を実施し、問題がある場合は該当部分を見直し、必要ならば改訂します。ここで、定期的にテストするものは手順自体であり、必ずしも事故・緊急事態の発生を想定しての模擬訓練(例えば、防災訓練など)を実施しなければならないということではありません。

事故・緊急事態の手順のテストは定期的に実施すればよく、頻度などは組織の判断で決定すればよいことですが、「4.4.2 力量、教育訓練及び自覚」の中で実施するというように定めておくことで、ここで改めて実施について述べる必要はなくなると考えます。テストの実施結果は写真やビデオに残しておくと見直しをする際などにとても効果的ですし、第三者に対しても説得力のある記録になります。

4. 質問と回答

5. 関連サイト・書籍など

6. 不適合・改善要望事例と考察

不適合・改善要望事例考察
「緊急事態発生の可能性の特定」手順として定められている「緊急事態対応規程」の4.項の内容は、特定手順なのか、特定結果なのか分からない。また、その内容は「環境側面・環境影響調査表(緊急時)」及び「環境影響総合評価フロー」に基づく特定手順と不整合が見られる。 「緊急事態対応規程」には特定手順を規定することとし、特定結果は対応手順とともに別表に登録することとする。緊急時環境側面の特定・評価に関する手順、緊急時対応とのつながりを再度見直す。以上につき、環境マニュアル及び緊急事態対応規程を見直し、改訂する。
「緊急事態発生の可能性の特定結果」及びそれらに対する「予防処置、緩和処置の手順」が定められているが、それらはより具体的な内容にする余地がある。 緊急事態特定手順により特定された緊急事態と対応手順は、具体的な内容として別表に登録するものとする。
緊急時の連絡網は作成されているが、緊急事態の特定ができていない。 ビルの一角に営業所を構えており、環境に影響するような緊急事態はないと判断しているのだが…。
総務Tでは、緊急時の著しい環境側面に特定された「廃油・廃液」および「廃棄物」については緊急時対応手順が作成されているが、「騒音」については未作成。「騒音」が緊急時の著しい環境側面に該当するのかどうかも含めて検討することが望まれる。 騒音に関しては事実として住民からクレームが寄せられたことがあり、必要最低限(社内外連絡網など)の整備が必要。
緊急事態の準備および対応が特定されていない。 環境側面の洗い出し作業の際に、緊急事態(地震などの天災による火災などを含む)を想定した環境側面が考慮・特定されていなかった。
第〇製造Gの印刷Tにおいて緊急事態を想定したテストを実施していたが、その実施記録が「事故及び緊急事態テスト実施記録」ではなく「教育・訓練実施記録表」を使用していた。 緊急事態対応手順のテストを実施した場合の専用帳票があるが、そのことが周知されておらず通常の教育・訓練記録に記録されていた。
緊急事態対応手順書が見直しされ、緩和手順が'04.3.29付けで追記されているが、マニュアルで1回/年以上と定められたテストが実施されていない。 環境・安全にかかわる緊急事態対応手順はとってつけたようなものととられがちで、手順のテストがおろそかにされてしまっている。
緊急事態への準備及び対応について、印刷Gの準備対応状況を確認したところ、対応する手順書は確認したが、テストした事実が認められませんでした(1回/年)。 EMS構築当初は事故・緊急事態の洗い出し、対応手順書の作成、手順のテストが実施されていたが、時間が経つと事故・緊急事態ということ自体への認識が薄れてしまい、手順のテストも実施されなくなってしまう。
緊急事態への準備及び対応を総務Gが管理している「分離槽」について確認したところ、「分離槽の破損による土壌汚染」という手順書ではその緩和処置が見当たりませんでした。 4.4.7の事故・緊急事態対応手順に含めるべき項目(発生する環境影響の緩和)が含められず、どうやって元を正すか・関係機関へ連絡するかという内容しか定められていなかった。
2002年度「教育・訓練計画書」が作成されていますが、緊急時対応の訓練計画が入っていません。また、マニュアルで規定された1回/年以上の緊急時対応手順のテストが実施されていません。 4.4.7緊急時対応の訓練と4.4.2教育・訓練を結び付けて考えていなかった。緊急時対応手順のテストを1回/年以上実施することが理解されていなかった。
××グループでは現像液廃液について緊急時著しい環境側面に上げ手順書を作成し、管理されていますが、マニュアルに書かれている定期的なテストと手順の確認が実施されていません。 (上記内容と同)

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