ISO推進事務局の力強い味方!? こちらISO事務局

トップページへ...
◆ ISO 9001関係
- JIS Q 9000規格
- JIS Q 9001規格
- JIS Q 9004規格
- ISO 9001の基本
- 規格の概要説明
- 品質文書作成事例

トップページへ...
◆ ISO 14001関係
- JIS Q 14001規格
- JIS Q 14004規格
- 規格の概要説明
- 環境文書作成事例
- 主な環境法規制
- 環境活動の例(1)/(2)
- 看板1/看板2

トップページへ...
◆ その他
- JIS Q 19011規格
- ちょっと電子文書
- 早分かり用語集
- 品質/環境動向
- Q & A
- ちょっとアンケート
- 当ISO事務局の歩み
- ISO関連書籍の紹介
- ISO何でも掲示板
- 関連リンク集

◆ ISO 14001規格の概要説明

前のページへ目次へ次のページへ

4.4.5 文書管理

 環境マネジメントシステム及びこの規格で必要とされる文書は管理すること。記録は文書の一種ではあるが、4.5.4に規定する要求事項に従って管理すること。

 組織は、次の事項にかかわる手順を確立し、実施し、維持すること。

a) 発行前に、適切かどうかの観点から文書を承認する。
b) 文書をレビューする。また、必要に応じて更新し、再承認する。
c) 文書の変更の識別及び現在の改訂版の識別を確実にする。
d) 該当する文書の適切な版が、必要なときに、必要なところで使用可能な状態にあることを確実にする。
e) 文書が読みやすく、容易に識別可能な状態であることを確実にする。
f) 環境マネジメントシステムの計画及び運用のために組織が必要と決定した外部からの文書を明確にし、その配付が管理されていることを確実にする。
g) 廃止文書が誤って使用されないようにする。また、これらを何らかの目的で保持する場合には、適切な識別をする。

1. 文書管理に関する要求事項

「4.4.4 文書類」と同様にISO 9001:2000の要求事項と同じ形式になりました。また、1996年版との比較で考えてみますと、c)項とf)項が追加されたという形になり、それぞれについて対応が必要です。また、逆に削除された項目については組織が各自判断し、必要に応じて継続または削除すればよいでしょう。

文書管理の対象となる文書の範囲は、「4.4.4 文書類」で定めるすべての文書(ただし、記録は除く)です。これらの文書に対して、次の要求事項を具体的にどのように満たしていくかを決めて、手順として定め、実施します。

a) 発行前に、適切かどうかの観点から文書を承認する。

文書は、所定の責任者の承認なしに発行・運用することはできません。これはものすごく当たり前のことだと思いますが意外と実行に移せないものです。「面倒だから、時間がないから」という理由でパッパッと手順書を作成して使ってしまう。これはやってはいけないことですし、非常に危険なことでもあります。

承認を受けずに発行してしまう原因の1つに無理な責任・権限の取決めが考えられます。その文書の内容や適用範囲を考慮して、「今までは課長承認だったが、係長承認でも大丈夫なのではないか?」といった検討の必要性があるかもしれません。

「この文書は承認されている」という証も必要です。通常行われていると思いますが、承認印という形で承認者と承認日が分かるようにしておくとよいでしょう。ここで問題になってくるのが上記の内容とも関係しますが、いわゆる“メクラ判”というヤツです。文書の中身には目を通さずにただ単にハンコだけ押す、あるいは誰かが勝手にハンコを押してしまうという状況です。これでは、見た目上は承認印が押されていても承認されたことにはなりません。

この状況が横行している組織は、文書不備による事故、責任転嫁などさまざまな問題が絶えないはずです。文書は組織運営を支える重要な要素であることを認識して、このような状況を排除するように努めましょう。

b) 文書をレビューする。また、必要に応じて更新し、再承認する。

文書は1度発行されたら終わりではなく、状況の変化や間違い、改善などのために継続的に変更されていくものです。変更の必要があるかどうか見直し、必要があれば変更を加え、承認を受けた上で改訂版として発行するという一連の流れを手順として定め、運用しましょう。

見直し・変更の頻度は定期的とはなっていませんので、都度(状況・手順の変化などが生じた場合)およびそれを補完するものとして年度末などの定期見直しを行うように定めておくとよいでしょう。

これは当方の審査員から指摘されたことですが、見直しの結果として変更の必要性がなかったとしてもそのこと(見直しをしたこと、結果的に変更がなかったこと)を記録として残すように言われました。この対応として、文書表紙の裏面にその記録を日付印とともに残すようにしましたが、本当に必要なのかどうかは判断しかねる部分がありますが、参考までに記載しておきます。

c) 文書の変更の識別及び現在の改訂版の識別を確実にする。

文書が変更された場合、文書のどの部分がどのように変更されたのか、旧版と改訂版の文書の区別はどう付けるのか、ということについての方法・手順を決めます。一般的な方法としては、

・ 改訂履歴表に変更内容の概略を記録する。
・ 文書本体の変更部分を下線や斜体などで装飾し、明示する。
・ 文書に版数や改訂日を表示する。

といったことが挙げられます。

さらにもう一歩踏み込んで、文書の一部(あるページなど)が意図的・故意にかかわらず抜取られたり、差替えられたりした場合に、その状況が分かるようにする工夫も必要です。版数や改訂日、ページ番号などを文書の各ページのヘッダーやフッターに入れておくことである程度は対応可能なのではないかと思います。もっとも、そのような状況が起きないようにするのが一番ですが・・・。

d) 該当する文書の適切な版が、必要なときに、必要なところで使用可能な状態にあることを確実にする。

必要な文書の適切な版(通常、最新版)を、必要とする作業者が必要なときに使えるようにしておくという要求です。いわゆる、文書の配付・回収管理です。

・ 配付場所(部署)と必要数を決定する。
・ 配付・回収管理表などにより、適切な版の文書が配付場所(部署)に必要数配付され、旧版や廃止文書が確実に回収されるようにする。
・ 配付された文書は、使いやすいように、紛失などがないように保管管理する。

配付・回収を確実に行うためには、配付する側とされる側の双方におけるルールの順守と管理が大切だということを認識してください。

e) 文書が読みやすく、容易に識別可能な状態であることを確実にする。

「文書が読みやすく」とは、高級紙にきれいにプリンとして体裁を整えて・・・ということではありません。

・ 日に焼けたり、液体がこぼれたりして判読できない状態になっている。
・ インデックスも何もなくただファイルされているだけのために見たいページを探せない。
・ 外国人を雇っているが日本語の手順書しかないため、外国人が手順書を読めない。

というような状況は作らないようにしろ!という要求です。文書が日焼けしたりファイルがきちっとされていないというのは、その文書を大切にしていない証拠ではないかと思います。少なくともほとんど使われていないということですね。それでも仕事は滞りなく行われているならばその文書の廃止を検討してみてはいかがでしょうか。

文書を識別する方法として一般的なのは、文書管理番号(識別番号・記号)を付与するという方法です。文書管理番号と版数表示を組合せると文書の識別と改訂版の識別ができます。c)でも述べましたが、文書の各ページにこれらを入れておくと部分的な欠落や不必要に差替えられた場合にも対応できます。

f) 環境マネジメントシステムの計画及び運用のために組織が必要と決定した外部からの文書を明確にし、その配付が管理されていることを確実にする。

外部文書とは、環境マネジメントシステムの中で管理できない外部由来の文書で、

・ 設備の取扱説明書
・ 顧客・行政からの指示書、要求書あるいは契約書
・ 業界団体からの自主基準書
・ 他のマネジメントシステムで規定されている文書

など、要するに勝手に中身を変更することのできない、それに従うか一部または全部を利用することしかできない文書のことです。

外部文書の管理については、他の(内部・外部)文書との識別および配付の管理が要求されていますが、(外部による)改訂状況など他の管理項目を追加しても差し支えありません。識別の方法としては、可能ならば識別シールを貼ったり、受付書を添付しておくなどが考えられます。

g) 廃止文書が誤って使用されないようにする。また、これらを何らかの目的で保持する場合には、適切な識別をする。

原則として、廃止文書は配付先からすべて回収し、処分するというのがもっとも安心できる方法ではないかと考えます。廃止された作業手順書などを現場で保管しておくと、間違って使われてしまう危険性がどうしても残ってしまいます。

保管しておく必要がある場合には、

・ 保管する部数(原則、原本のみが望ましいですね)
・ 保管責任者
・ 保管場所・方法(施錠やファイル・表示などによる識別)
・ 保管期間

などを決めて運用し、間違って使われないようにしておきます。

2. 文書管理の電子化には注意を!

IT革命によって組織内のOA化が急速に推進される中で、ペーパーレス化(書類・データの電子化)されている組織も多いことと思います。そのような状況の中で環境マネジメントシステム文書も電子管理してしまい、紙ベースでの管理はなくしてしまおうという動きが出てくるのは自然なことだと思います。

しかし、ここには非常に大きな問題と落とし穴があることも事実です。

・ 電子文書化した場合の管理方法の模索
・ そのためのソフトウェア、端末などへの設備投資
・ 人的資源(管理する側)の確保
・ 使う側への教育訓練

など、抱える問題は山積みです。組織末端にまで端末が行き渡っていないような場合に強引に文書の電子化を進めてしまうと、必要なときに、必要なところで使用可能な状態にあることが確実でなくなってしまいます。また、容易にプリントできてしまう場合には、どの段階までを管理文書とし、どの段階から非管理文書とするかといった検討も必要になってきます。これは予想以上に大きな問題です。

セキュリティの問題もあります。ISO 27001も発行されましたが、組織が取扱う電子情報管理の一部として電子文書も含まれてくるでしょう。

当方も審査の初期段階において、「文書の電子化を進めつつあり、文書はすべて電子化にする」という意向を審査員に伝えましたが、実際フタを開けてみると紙ベースですらまともに文書管理できていない、設備も整っていない、従業員への教育訓練もまったく行われていない状態で電子文書管理を導入しても中途半端になってしまうだけだという指摘を受け、電子化は共通帳票フォーマットの配信だけに留めました。

文書管理の電子化を導入するには、ハード面とソフト面がともに釣り合った状態でしっかりと構想を立てて推進しないと、せっかくの高機能の電子文書管理ソフトウェアも宝の持ち腐れになってしまいます。したがって、安易に文書の電子化をすることはちょっと控えておいたほうがよいと思います。

電子文書については、「ちょっと電子文書」も参考にしていただきたいと思います。

3. 質問と回答

質問内容 回答
外部由来文書とその管理について、

@ たとえばどのようなものがありますか?
A EMSで必ずあるべきものですか(なければおかしいですか)?
B 外部由来文書の配付管理を事務局で管理しておけばいいですか?
C 外部コミュニケーションで、所定様式の記録に外部作成の書面を添付して管理していますが問題ありませんか?
@ 外部または外部との間で作成されてEMS運用のために使用される文書であり、典型的な例としては以下の文書などが考えられます。
 ・ 適用規格(ISO 14001、JIS規格など)
 ・ 設備、装置などの運転マニュアル、取扱説明書
 ・ 顧客要求に示された文書(グリーン調達関係も含む)
 ・ 法的要求事項を示した文書
 ・ 公害防止協定書などの外部との取決め文書
 ・ 社内の別のマネジメントシステムで作成され、文書管理されている文書
A なくてはいけないということはありません。
B それで必要な配付管理ができていれば、それでもよいと考えます。
C 問題ありません。
文書管理で、文書のレビューから“定期的”がなくなりましたが、その主旨は何ですか?

文書のレビューで「定期的」が除かれると説明がありましたが、毎年4月に行う見直しをそのまま実施しても問題ありませんか?

文書の定期的レビューを、時期を決めて実施してきましたが、2004年版ISに変更されると、これをやめてもいいですか?
“定期的”はなくなりましたが、文書の妥当性を維持するためのレビューを行うことに変わりはありません。文書を変更すべきシステム上の変化が生じたら、随時関連文書をレビューし、改訂することが必要です。
定期的な文書のレビューは、随時のレビューが実施できなかった場合の歯止めの手順として考えるとよいでしょう。したがって、そのような手順が必要かどうかは組織が判断されればよいと考えます。

4. 関連サイト・書籍など

5. 不適合・改善要望事例と考察

不適合・改善要望事例考察
緊急時対応手順については環境マニュアルで毎年度見直すことになっているが、見直しを実施したことが記録で確認できない。 緊急対応そのものに対する意識がなかなか身に付かないため、毎年度の見直しやその記録が漏れてしまっている。
文書の配付・回収は管理表で行なわれていますが、「環境法規制等登録台帳 兼 遵守評価表」については第1版の回収及び第3版と第4版の配付が確認できません。 ISO事務局レベルでは改訂作業を随時行なっていたが、当台帳が各部門で活用されていない状況とISO事務局で把握していれば現時点では事が済んでいるという状況を踏まえ、各部門への配付はしないでおこうということにしてしまったために発生した。
環境マネジメントシステム文書のうち、第一種管理文書が各部門へ配付されていたが、その文書が最新版であることの事実が確認できるようにすることを検討してください。 ISO事務局にて文書の最新版管理を台帳で行なっているが各部門ではその文書が最新版であるかどうか分からないこと、そして、法規制台帳の最新版が配付されていなかったという事実があったことから改善要望を受けた。
環境マニュアルでは環境側面を毎年定期に見直しするとは定めていませんが、12/19付けの品質管理Gの内部監査での総合所見や第二印刷Gの4/6付けの有益な環境側面の見直し事例から、毎年定期に見直しすることが望まれます。 環境マニュアルでは環境側面関連文書を定期(毎年3月)に見直しすることを定めてはいるが、定期見直しと臨時見直し(ある条件発生時の見直し)との違いが不明確になっていたために改善要望を受けた。
「著しい環境側面登録台帳」の様式が更新されEM-4.3.1-04(有害)、EM-4.3.1-05(有益)となっているがマニュアル4.3.1.8関連文書が変更されていません(環境マニュアル)。 環境マニュアルの最新版制定、配付直後に様式を更新したため、マニュアルに反映できなかった。
外部コミュニケーションファイルに複写された資料がファイルされていますが、管理文書なのか不明です。 外部情報資料の複写を管理文書扱いとするか、非管理文書扱いとするか決めていなかった。
××事業部の環境マネジメントプログラムの目標のスコッチプリントのロス率削減の手段として日常的なメンテナンスを手順書に従って実施しているとこのことですが、手順書が見当たりません。また、「第二種管理文書一覧表」にありません。 審査時に手順書を準備するのを忘れた(保管・管理が不適切)。手順書を作成したら「第二種管理文書一覧表」に登録するという決めを知らなかった。
マニュアルでは購買先及び業務委託先に対して著しい環境側面に関する要求事項を伝達し指示・指導を行なうとありますが、××鰍ノ対して何を指示したのか明確でありません。 購買先や業務委託先に対してどのような要求事項を伝達したのかを記録する決めがなかった。
文書の定期見直しの時期を決めてあるならばマニュアルに記述した方がよいです(環境マニュアル)。
規格の「文書は、読みやすく、日付が(改訂の日付とともに)あって容易に識別でき、順序よく維持されて指定の期間保持されなければならない」に関する記述がありません(環境マニュアル)。
規格で要求されている「法律上及び/又は情報保存の目的で保管されるあらゆる廃止文書は適切に識別」に関する記述がありません(環境マニュアル)。

前のページへ目次へ次のページへ

現在地 ホームこちらISO事務局ISO 14001規格の概要説明>4.4.5 文書管理