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4.4.2 力量、教育訓練及び自覚

 組織は、組織によって特定された著しい環境影響の原因となる可能性をもつ作業を組織で実施する又は組織のために実施するすべての人が、適切な教育、訓練又は経験に基づく力量をもつことを確実にすること。また、これに伴う記録を保持すること。

 組織は、その環境側面及び環境マネジメントシステムに伴う教育訓練のニーズを明確にすること。組織は、そのようなニーズを満たすために、教育訓練を提供するか、又はその他の処置をとること。また、これに伴う記録を保持すること。

 組織は、組織で働く又は組織のために働く人々に次の事項を自覚させるための手順を確立し、実施し、維持すること。

a) 環境方針及び手順並びに環境マネジメントシステムの要求事項に適合することの重要性
b) 自分の仕事に伴う著しい環境側面及び関係する顕在又は潜在の環境影響、並びに各人の作業改善による環境上の利点
c) 環境マネジメントシステムの要求事項との適合を達成するための役割及び責任
d) 規定された手順から逸脱した際に予想される結果

1. 教育訓練の優先順位が明確に!

2004年版改訂に伴ってISO 9001:2000における要求事項にかなり接近した内容となってきました。その中で教育訓練の優先順位も非常にはっきりしてきたと言えるでしょう。1996年版の要求事項では、

能力:
著しい環境影響の原因になりかねない作業に従事する者には、その作業を安心して任せられるだけの知識、経験、腕前などを踏まえた対応能力が備わっていること。

訓練:
環境側面と環境マネジメントシステムに関する訓練のニーズを明確にして、関係者にはそのニーズを満たしてやること。

自覚:
環境に関する自覚を関係者全員に持たせること。

という区分がされていましたが、2004年版では、

ステップ1:
力量を持つことを確実にしなさい。

ステップ2:
力量を持つために必要な教育訓練のニーズを明確にしなさい。

ステップ3:
教育訓練のニーズを満たすように教育訓練または他の処置をしなさい。

ステップ4:
ステップ1〜3を包含するものとして、環境活動全般を含む教育訓練の動機付けのために自覚させなさい。

という優先順位(ステップ)が示されているものと考えます。

ちなみに、教育と訓練を明確に分離することは難しいですが、訓練(トレーニング)は実状に則してその作業(仕事)がまともにできるように腕を上げさせることを意味し、教育に比べて動的で、その作業(仕事)の成果や熟練度を上げるようにするという意味合いが強いと理解しておくとよいのではないかと思います。「分かっている・理解している」と「できる・目論見どおりかそれ以上の成果が出せる」は違うということです。

教育訓練のステップ(サイクル)

2. 教育訓練のニーズの明確化

規格要求事項では、教育訓練のニーズを明確にすることを求めています。教育訓練のニーズを明確にするとは、

・ 環境に著しい影響を生じる可能性のある作業
・ その作業を遂行するための能力要件の項目・内容
・ 到達基準(どうであれば安心して任せられるか)
・ 対象者

などについて洗い出し、まとめておくことです。

環境に著しい影響を生じる可能性のある作業に携わる従業員は、必要とされる力量を身に付けて意図された成果を出すために訓練(トレーニング)を受けて、到達基準を満たしていることの裏付け・証拠を提示できるようにしておく必要があります。

訓練(トレーニング)を受けて到達基準を満たしているかどうかを確認する1つの方法として、評価判定者(例えば、ベテラン)の前で実際にやらせてみる(実演させる)ことが挙げられます。

審査の場面を想定した場合、教育訓練のニーズを求められたときに教育・訓練計画書を持ち出すのは少々お門違いです。いきなり教育・訓練計画が出てくるものではなく、教育訓練のニーズがまずあって、それを満たす(実際に行う)ために計画が出てくるからです。 なお、規格要求事項では教育訓練計画までは求められていませんが、教育訓練のPDCAサイクルを確実に回すという面から考えると策定・運用しておいたほうがよいでしょう。

3. 教育訓練・その他の処置の実施と有効性評価

明確にされた教育訓練のニーズを満たすために、必要ならば計画を策定して教育訓練を実施します。すべてが教育訓練で済めば丸く収まるのですが、教育訓練の実施によってもニーズを満たすことができない場合には、その他の処置によって対応することがあります。その他の処置とは例えば、

・ 作業者の配置転換あるいは外部委託
・ 機械化
・ 作業の簡略化

などが挙げられます。

有効性評価については、規格としては直接要求していませんが、ISO 9001:2000および教育訓練・その他の処置の実施効果という点を考慮すると是非とも実施しておきたいものです。 「2. 教育訓練のニーズの明確化」でも1つの例を述べましたが、さまざまな方法を活用して実施した教育訓練・その他の処置が効果を上げているのか確認し、見直し・改善へとつなげていきましょう。

教育訓練の有効性評価をする対象は大きく次の2つがあると考えます。

・ 対象者が力量の到達基準に達しているかどうか
・ 教育訓練の内容・実施者が適切で、妥当であるかどうか

この中で焦点を浴びやすいのは1つ目ですが、2つ目のほうをより重要視すべきと考えます。「ちゃんと指導しているのに全然覚えてくれないんだよ」と言っている責任者に限って教え方や内容がまったくデタラメだったりします。教育訓練云々の話の前に人事配置がそもそも間違っている可能性もあります。成果(教育訓練による対象者の力量状態)の良し悪しを問題視する前に、その成果に至るプロセス(教育訓練の内容、やり方、タイミング、対象者など)をじっくりと検討してみてください。

4. 自覚してますか?

自覚教育は、組織で働く人々(従業員など)、組織のために働く人々(パート・アルバイト、派遣、協力業者など)、つまり、組織の活動、製品およびサービスにかかわるすべての要員を対象として行わなければなりません。自覚教育とは大まかに言えば、

・ なぜ、環境マネジメントシステムを構築し、運用しなければならないのかという環境活動に取組むに当たってのそもそもの根源、動機付け
・ 環境マネジメントシステムに従って活動していく上で、環境方針および環境目的・目標を達成するために何に気をつけて、何をやらなければならないのか
・ 環境マネジメントシステムに従って活動していく上での決められた役割、責任および権限
・ もし、事故や緊急事態が起きてしまった場合、また、環境目的・目標が達成できそうにもない場合にはどのような結果が予想され、どのように対処しなければならないのか

教材としては環境マニュアル、環境に関する手順書の他、環境に関する一般的な資料はインターネットから手軽に入手できますから、それらを利用してもよいでしょう。

5. 教育訓練の記録はしっかりと!

教育訓練で要求されている記録は、

・ 「組織によって特定された著しい環境側面の原因となる可能性を持つ作業を組織で実施する又は組織のために実施するすべての人が、適切な教育、訓練又は経験に基づく力量をもつことを確実にすること」に伴う記録
・ 「環境側面及び環境マネジメントシステムに伴う教育訓練のニーズを明確にすること」「ニーズを満たすために、教育訓練を提供するか、又はその他の処置をとること」に伴う記録

の2つが直接的なものとして要求されています。これらをもう少し分解して考えてみますと、

スキルマップ(教育訓練のニーズ):
その作業(仕事)を行う上で環境という切り口から必要とされる知識・技能は?

評価結果の記録(力量評価):
その作業者は必要な知識・技能を持っているか?

処置結果・有効性評価の記録(教育訓練、その他の処置):
その作業者が必要な知識・技能を持っていないならば教育訓練などの処置とその有効性評価

のようになるでしょう。スキルマップによって必要とされる教育訓練のニーズを明確にし、現状の力量を把握(スキルマップに現状の記録)をした上で、不足している部分に対して教育訓練またはその他の処置を実施(実施記録)し、有効性を評価(有効性評価の記録)し、実施後の力量を評価・把握(スキルマップに実施後の状況の記録)する、というサイクルを回しながら必要な力量を確保します。

とくに実施記録と有効性評価の記録には次のような項目を含めておくとよいと思います。

・ 実施日(いつ実施したか)
・ 実施時間(どれぐらいの時間実施したか)
・ 主題と目的(ターゲットは)
・ 使用した教材・資料、方法(何を使ってどのようにやったか)
・ 対象者と欠席者(欠席者に対する処置を含む)
・ 有効性評価(理解度・修得度、反省点)

教育訓練に関する記録は、審査のみならずとくに顧客を中心とするあらゆる利害関係者に対して、環境活動を行う上での各作業者・担当者の力量の裏付けとなる重要な証拠です。また、組織の環境パフォーマンス向上、環境方針および目的・目標を達成し、継続的改善を実現するためにも非常に大切なものですから、軽視せずにシステムとして確実に運用しましょう。

6. 内部監査員の教育訓練

環境マネジメントシステムを効果的に運用する上で内部監査の位置付けは極めて重要です。内部監査を狙いどおりに機能させるには内部監査員の力量がカギを握ります。初期のころは、規格要求事項や環境マニュアルの読み合わせ、外部講習への参加などがとても有効ですが、ある程度以上成熟してきたらそういったことは確認程度で各自に任せ、ロールプレイや反省会に力を入れるとよいのではないでしょうか。実際の内部監査の場に同席し、

・ 質問の内容・細かさ、方法
・ 問題点の掘り下げ方
・ 文書・記録の確認の仕方
・ 現場観察のやり方
・ 聞き取り方法、話し方
・ 指摘内容・細かさ、偏りの有無
・ フォロー・アドバイスの有無、内容・方法

など、ポイントは他にもたくさんあると思いますが、これらの中からテーマを設定してディスカッションするというのも効果的な1つの方法だと思います。

外部の監査員に内部監査をやってもらい、それに同席するというのも刺激があってよいかもしれませんね。

7. 質問と回答

質問内容 回答
教育・訓練のニーズを特定し、教育・訓練かその他の処置を実施するという要求事項で、その他の処置とはどういう意味ですか? 力量を担保する処置として、内部要員を教育・訓練などで養成する以外に、内部要員に自己啓発を促すことや力量を有する外部要員を確保することなどが考えられます。
力量認定は、教育、教育・訓練または経験に基づくということですが、それぞれの重みはどう考えていますか?

協力会社を含め従業員数が多い場合、どのように力量を把握し、記録を残す必要がありますか?

「著しい環境側面の作業は、力量を有することを示す記録が必要」ということですが、資格を保有することを求めているのですか?

力量の裏付けとなる記録とはどんなものですか?
EMS上必要な力量の中身(知識や技能など)を明確にし、その知識や技能が、教育、教育・訓練または経験のいずれの方法で獲得できているのかを記録で明確にできていればよいと考えます。
公的な資格が、自組織が求める力量の中身(知識や技能など)を十分満たすものであるならば、その資格を保有していることで力量を証明できます。
力量の記録としては、入社前の学歴、公的資格、教育・訓練記録、社内資格、業務経験などが考えられます。
協力会社の要員の力量の裏付け記録は、協力会社で保有していても問題ありませんが、自組織がそれをどう確認できるのかがポイントです。
組織のために働く人まで含めて自覚教育となるとかなり広範囲になりますが、教育記録が必要ですか? 1996年版でも、訓練(教育・訓練)記録を求めていましたが、自覚に関してはその記録は求めていませんでした。したがって、自覚を目的とした教育の記録を、どの程度残すべきかは組織で判断されるべきと考えます。
過去に取得した資格の記録をなくしてしまった場合、その人の力量を示すにはどうしたらいいですか? 資格保有記録が証明できないのであれば、何らかの方法で本人の力量を評価し、満足していることを示すことが必要です。

8. 関連サイト・書籍など

9. 不適合・改善要望事例と考察

不適合・改善要望事例考察
「教育・訓練規程」では、著しい環境影響の原因となる可能性を持つ業務である「重機の運転」について、必要とされる能力を「車両系建設機械運転技能講習修了者」と定めている。 「資格者」+「リーダーの認定(作業を任せられると認定した者)」とし、教育訓練実施報告書備考欄に力量があるかどうかの記録を残す手順に変更する。
「教育・訓練規程」では、著しい環境影響の原因となる可能性を持つ作業は特定教育・訓練として一般教育と区分している。しかし、「排水処理施設の管理」特定教育・訓練を2007/3/10に実施しているが、排水処理業務は環境影響の原因となる可能性を持つ作業に特定されていない。 一般教育/特定教育の区分・内容を見直し、特定教育については著しい環境側面とのつながりも見直す。
'05年度教育・訓練計画書を確認したところ、環境に関する計画はあったが、その実績の記録が不明確。 審査のためにとりあえず計画は立てた!というのが実状。現実には環境の教育・訓練で何をすればよいのか理解されていない。
力量、教育訓練および自覚で、主管責任者により「教育・訓練計画書」を「訓練リスト」として作成し、教育訓練を実施していたが、どの項目が終了したのか判別がつかない。 本来は、計画書とリストは別物であるが、リストと計画書とが混同されてしまっている。リーダーに対するこの部分の教育訓練が必要。
「2004年度 教育・訓練計画書」('04.4.16)の様式は実施したときに下段にその実施日を書き込むことになっているが未記入。 教育・訓練関係帳票(とくに計画書)への記入項目・方法が周知されておらず、未記入欄が多かった。
環境マニュアルでは主管責任者が教育・訓練計画書を作成すると定めていますが、環境管理責任者及びISO事務局の主管についての計画書が作成されていません。 各部門責任者に作成を指示していた当の管理責任者・ISO事務局が自分たちの文の計画書を作成していなかった。主管する内容はEMS全般に関する全社員対象とした教育・訓練と内部監査員養成である。
教育実施記録では新入社員3名に対してISO 14001の教育が実施されていますが、その他の従業員に対しては教育が行なわれておりません。新規設備の環境影響、顧客からの新規要求事項等、変更事項につき教育を実施されることが望ましいと思います。 忙しい、今さらという理由からなかなかベテラン社員への教育・訓練が実施されない。EMSの特に自覚関連の教育をどう有効、かつ、計画的に実施していくかがカギになると思うが・・・実行は難しい。
マニュアルには主管責任者が「教育・訓練計画書」を作成するとありますが、××支店の「教育・訓練計画書」がありません。 主管責任者が「教育・訓練計画書」を作成するということを当の主管責任者が認識していなかった。
'02.10.18付けで「教育・訓練実施記録表」が作成されていますが、マニュアルに定められた自覚教育のどの内容について教育を実施したのか、その記述が抜けています。 教育・訓練の記録には”自覚・訓練・能力”の区別がつくように書けばいいと認識していたが、具体的にどのようなことをやったかまで書くことは考えていなかった。
「教育・訓練計画書」は一般教育及び特定教育を明確にする必要があります。 「教育・訓練計画書」では環境教育・訓練項目のうち”自覚・訓練・能力”のどれについて実施するのか書くように定めているが、計画作成者がその定めを理解していなかった。
教育・訓練は各主管責任者が「教育・訓練計画書」を作成し、実施するようになっていますが、実施の記録が見当たりません。 教育・訓練を受けた側も実施した側も記録を書くように定めているが、実施した側がその決めを理解しておらず、実施記録を作成していなかった。
「教育・訓練計画書」においても“自覚・訓練・能力”の区別が明確になっている方がよい。 (上記内容と同)

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