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6.2.2 力量、認識及び教育・訓練

 組織は、次の事項を実施すること。

a) 製品品質に影響がある仕事に従事する要員に必要な力量を明確にする。
b) 必要な力量が持てるように教育・訓練し、または他の処置をとる。
c) 教育・訓練または他の処置の有効性を評価する。
d) 組織の要員が、自らの活動の持つ意味と重要性を認識し、品質目標の達成に向けて自らどのように貢献できるかを認識することを確実にする。
e) 教育、訓練、技能及び経験について該当する記録を維持する(4.2.4参照)。

1. 製品品質に影響がある仕事に従事する要員に必要な力量の明確化

それぞれの仕事を遂行する上で、その仕事にはどのような技能・経験(=力量)が必要とされるのかを決定しなければなりません。 必要な力量とは、“各従業員が「担当する仕事」に対して求められていること”、つまり、“その仕事を安心して任せられるための要件”と考えておけばよいと思います。 たとえば、

「○○工程の××作業には、△△技能が必要」

といった具合に必要とされる力量を決定します。 これらは、

一般項目:
全従業員に共通的に必要なこと

専門項目:
設計・開発を担当する人、製造を担当する人など、仕事の専門性により異なること

の2つに大きく分けることができるでしょう。 この2つの切り口から、各工程をある程度の大きさに分解して、各作業・業務に必要とされる力量を洗い出していきます(ISO 14001の環境側面の抽出と似ていますね)。

2. 必要な力量が持てるような教育・訓練、または他の処置

それぞれの仕事に必要な力量を洗い出したならば、まず、配置されている従業員がその力量をしっかりと持って作業に当たっているかどうかを判定します。

図 必要とされる力量と現状の力量との差が教育・訓練のニーズに!
図 必要とされる力量と現状の力量との差が教育・訓練のニーズに!

本来の意味からすれば、教育または訓練を受けて必要な力量を持った従業員がその仕事に配置されるべきなのでしょうが、現実的にはなかなかそういうわけにはいかないので、仕事に就きながら力量を高めていくのがほとんどでしょう。

求められる力量と現実の力量との差を明らかにし、その差を埋めるために教育・訓練を施します。 ただし、教育・訓練によってもその力量が得られないような場合には、

・ 自動化・機械化
・ 他の従業員との配置替え
・ 外部要員(アウトソース)の導入

などといった教育・訓練以外の処置をとることもあり得るでしょう。

もともとの目的は、担当の仕事をまともにできる(安心して任せられる)ようにせよ、というだけのことなので、担当する仕事をまともにできる(安心して任せられる)状態になっているのであれば、わざわざ教育や訓練をする必要はないでしょう。 ただし、その担当要員が「必要な対応能力(力量)」を満たしている、ということが説明できなければなりません(そのための裏付けが提示できること)。

3. 教育・訓練の有効性の評価

実施した教育・訓練(あるいは他の処置)によって必要とされる力量が得られたのかどうか、教育・訓練(あるいは他の処置)が意味のあるものであったのかどうかを評価します。“従業員の力量”、“教育・訓練(あるいは他の処置)の効果”の両方向からの有効性評価がされることになります。

また、従業員の力量だけに焦点を当ててしまいがちですが、教育・訓練する側の反省も踏まえて果たして効果的な教育・訓練であったかどうかの評価もするべきだと考えます。

有効性の評価方法の例としては、

一般項目:
理解度確認テスト、質問・挙手による確認、主催者側の反省会

専門項目:
製品品質を直接作り込んでいる従業員たちに対しては、結果としての品質からの評価、ベテランによる実務状況の評価

などが挙げられますが、各組織の状況に合わせた具体的、効果的な評価方法を決定していただきたいと思います。評価ですから、「仕事レベルが向上した」「目標レベルとなった」というように結果系で見ていくことが重要です。

OJT(On the Job Training−必要に応じて実務上で教育・訓練する)はよく耳にする言葉ですが、教室形式での教育・訓練よりも重要であり、たいていの場合はこれによって従業員を作業に割当てているはずです。 OJTは、実務上で仕事をしながらの教育・訓練であるために計画性がなく、記録として残すことも難しいです(イチイチそんなことやっていられない!というのが本音でしょう)。 しかし、作業訓練表やスキルマップをうまく活用することによりOJTに少しでも計画性と基準を持たせることができれば、より効果的に運用できると思います。

他の処置において再教育・訓練を行う必要性が生じる例として、

・ 何らかの事情により、しばらくその仕事から離れていて復帰したとき
・ 仕事で操作する機器・設備・技法・手順が変わったとき

などが挙げられ、再教育・訓練の要否を判断した上で行うことになります。資格の話と同じで、いったん身についた力量が永久に身についているかと言えばそんなことがあるわけはなく、やはり、これらの状況に伴って変化するものなのです。

4. 認識

これは、ISO 14001でいうところの“自覚”に相当するもので、自分の割当てられた仕事の範囲で

・ 品質方針、品質目標の達成に向けてどのように貢献できるか
・ 各自の活動がどのような意味と重要性を持っているか
・ 自分の仕事のミスが後工程、顧客にどのような影響を及ぼすか

などについて、自ら意識できるようにすることを求められています。 各従業員がこのことについてどう認識し、作業にどう反映しているかを自分で答えられれば問題はありませんが、より認識を高めてもらうために、たとえば、従業員ひとりひとりに“品質目標と私の役割”といったようなカードを携帯させる方法もあります(しかし、この方法は往々にして形式的になりがちなので注意が必要です)。

また、ここから個人目標への展開も可能で、うまく機能させることにより各従業員のやる気の向上にもつながります。

5. 該当する記録の維持

a)〜d)に関連する記録の維持が求められています。 記録の中で最も大事なことは、

・ それぞれの仕事(に従事する従業員)に必要な力量
・ その仕事に従事する従業員が力量を満たしていることの裏付け
・ 教育・訓練の記録、有効性の評価結果、再教育・訓練の要否
(いつ/誰が/誰によって/どのように(方法、教材など)/どれぐらいの時間/・・・)

であると考えられます。 記録はあればそれにこしたことはありませんが、せっかくですから計画の達成状況や教育・訓練の有効性評価を行い、その結果を次期の計画に反映するといった積極的な使い方を心がけたいものです。

6. まとめると・・・

この項の要となるポイント・流れをまとめると次のようになります。

1) 品質に影響がある業務(作業・工程)の決定
2) その業務(作業・工程)に従事する従業員に必要な力量の明確化
3) 従業員の力量の評価、必要な力量がある従業員の配置
4) 必要な力量を持たせるための教育・訓練、その他の処置と評価
5) 1)〜4)に関連する記録の維持

7. 不適合・改善要望事例と考察

不適合・改善要望事例考察
「教育・訓練 実施記録表」には欠席者の氏名欄があり、欠席者の氏名が記録されていますが、その人たちに対してその後どのようにフォローしたのかが不明です。 初回教育・訓練の実施とその記録に重点が置かれ、欠席者に対しては実際には教育・訓練のフォローを実施していなかった(フォローに関する取決めが機能していない)。
新人(岩崎さん、小林さん)が入社されていますが、新人が入社した場合の具体的教育計画(誰が、何を、どのくらい教育し、力量評価した記録をどのように残すかなど)が明確ではありません。 新人や新入社員に対する具体的な教育体系が確立されていないため、直属の上司がそれぞれの判断で教育・訓練を行っていた。
「スキルマップ実績表・計画書」により教育・訓練の有効性の評価を記録するとありますが、その記録が見当たりません。 力量の全般的な評価は「スキルマップ」に記録しているが、個々の教育・訓練の有効性評価とその記録はとっていなかった。
教育・訓練の主管責任者である総務Tの業務が品質マニュアルの手順に明確になっていない。 人事管理を主管する総務部門が6.2.2の要求事項とどうかかわっているのかが品質マニュアルに書かれていない。教育・訓練活動の主管部署であるべき。
教育・訓練実施の状況およびその有効性の評価の実施状況を品質マニュアルに沿って確認したが、ほぼ品質マニュアルの手順どおり実施していたが、次年度の計画を作成するに際し、その実施した結果の有効性の評価が見えない。 教育・訓練を実施した結果、効果があったのかどうか、有効性を評価した証拠(記録)が何も残されていない。記録する帳票が準備されていない。
教育・訓練の実行状況を確認したところ、教育・訓練を受けたメンバーと受けなかったメンバーが記録されていたが、受けなかったメンバーに対するフォローが不明確であった。 対象者が欠席して受けられなかった場合のフォローについて何も規定しておらず、しっかりフォローされている場合もあれば資料を渡して終わりという場合もあり、バラツキがあった。
力量、認識および教育・訓練の実施状況を審査したところ、品質マニュアルの手順に沿って実施していたことを確認した。しかし、その評価の結果として向上した様子が不明確であった。 教育・訓練を実施した結果、効果があったのかどうか、有効性を評価した証拠(記録)が何も残されていない。記録する帳票が準備されていない。
CPシステムの教育・訓練のニーズ(対象、必要技能等)が把握できていない。 a)製品品質に影響が・・・力量を明確にする。
検査責任者は資格認定すると品質マニュアルに定めてあるが、資格認定教育の記録がない。 e)教育、訓練、・・・記録を維持する(4.2.4参照)。
教育・訓練の記録の記載内容(誰が、どのテキストを使って、どのくらいの時間やったかなど)が分かるようになっていない。 e)教育、訓練、・・・記録を維持する(4.2.4参照)。
フォークリフトの運転能力は品質に影響を及ぼすと考えられるが、このことについての取決めがされていない。 組織は、・・・実施すること。a)
教育・訓練を実施した記録、受講した記録はあるが、それが有効であったかどうかに関する記録がない。 組織は、・・・実行すること。c)、e)
総務部門責任者は、FROMシステムの主管責任者と定められているが、システムの運用に従事する要員の対象範囲が確認できない。 組織は、・・・実施すること。a)

★ヤッスー部長より一言★

従業員の力量状況を表すためにさまざまな形式のスキルマップが試行錯誤の結果として生み出されていますが、うまく機能しているスキルマップは果たしてあるのでしょうか。もちろん、ISO審査のためのものではなくて、実務の中で機能的に運用できているものですよ。もし、よいサンプルがあればぜひ教えてください・・・。

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