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特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律
(PRTR:Pollution Release and Transfer Resisters)
1. PRTR法の目的は?
・ 特定の化学物質の環境への排出量などの把握
・ 事業者による特定の化学物質の性状、取扱い
などに関する措置を講ずることにより、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止する。
2. この法律の適用を受ける事業場は?
2.1 PRTR対象事業場(第一種指定化学物質などの取扱い事業者)
次の1)〜3)のすべてに該当する事業場、または4)〜8)のいずれかに該当する事業場
1) 施行令3条に定めた業種
1.金属鉱業 2.原油および天然ガス鉱業 3.製造業 4.電気業 5.ガス業 6.熱供給業 7.下水道業 8.鉄道業 9.倉庫業(農作物またはタンクによる気体、液体の貯蔵に限る) 10.石油卸業 11.鉄スクラップ卸業(自動車用エアコン取外し、または封入された物質の回収に限る) 12.自動車卸売業(エアコンに封入された物質の回収に限る) 13.燃料小売業 14.洗濯業 15.写真業 16.自動車整備業 17.機械修理業 18.商品検査業 19.計量証明業 20.一般廃棄物処理業 21.産業廃棄物処分業 22.高等教育機関 23.自然科学研究所
2) 常用雇用者数21名以上
3) 次のいずれかに該当
・ いずれかの第一種指定化学物質を年間1t以上(特定第一種を除く)製造する事業者
・ 業として第一種指定化学物質含有製品を年間1t以上使用する者
・ 業として第一種指定化学物質を年間1t以上使用する者
4) 特定第一種指定化学物質を年間0.5t以上取扱う事業者
5) 金属鉱業または原油・天然ガス鉱業で、鉱山保安法に規定する建設物、工作物などの設置者
6) 下水道業で下水道終末処理施設の設置者
7) 廃棄物処分業で、一般廃棄物処理施設、産業廃棄物処理施設の設置者
8) ダイオキシン類対策法の特定施設設置者
※ 製品の質量に対する第一種指定化学物質の割合は、1.0%以上のものに適用する。
※ 製品の質量に対する特定第一種指定化学物質の割合は、0.5%以上のものに適用する。
※ 適用されない要件(4製品類)
・ 取扱いの過程で固体以外の状態にならず、かつ、粉末、粒状にならない製品
・ 密封状態で使用する製品
・ 一般消費材(殺虫剤、防虫剤など)
・ 再生される資源
図1. PRTR判定フロー
図2. PRTR対象事業者
2.2 MSDS提供事業場
1) 第一種指定化学物質などの取扱い事業者
2) 第二種指定化学物質などの取扱い事業者
※ 製品の質量に対する第二種指定化学物質の割合は、1.0%以上のものに適用する。
3. 適用を受ける事業者の責務は?
指定化学物質などの取扱い事業者は、第一種指定化学物質および第二種指定化学物質が人の健康を損なうおそれがあることなどを認識し、かつ、化学物質管理指針に留意して、指定化学物質の製造、使用その他の取扱いなどにかかわる管理を行うとともに、管理状況の国民の理解を深めるよう努めなければならない。
3.1 PRTR対象事業場
1) 第一種指定化学物質などの取扱い事業者は、事業活動に伴う第一種指定化学物質の排出量および移動量を把握しなければならない。
・ 1年間に取扱う第一種指定化学物質それぞれの排出量および移動量(年間1tを超える場合)
・ 特定第一種指定化学物質それぞれの排出量および移動量(年間0.5tを超える場合)
・ 鉱山保安法に規定する施設、下水道終末処理施設、廃棄物処理施設からの排出量および移動量
・ ダイオキシン類対策特別措置法の特定施設からのダイオキシン類の排出量および移動量
2) 毎年度、前年度の第一種指定化学物質の排出量および移動量を事業所ごとに、都道府県知事を経由して事業所管大臣に届出(毎年度6月30日まで)。
3.2 MSDS提供事業場
・ 指定化学物質などの取扱い事業者は、指定化学物質を他の事業者に譲渡、または提供するときは、そのときまでに相手に対し物質の性状、取扱いに関する情報(MSDS:Material Safety Data Sheet:化学物質安全データシート)を相手方が承諾した方法(文書、磁気ディスク、ファックス、電子メールなど)で提供しなければならない。
・ MSDSの提供は、指定化学物質などを譲渡または提供するごとに行う(ただし、反復継続して提供する場合は提供しなくてもよい)。
・ MSDSの情報の内容に変更がある場合は、速やかに変更後の情報を提供するように努める。
<含めなければならない情報>
・ 当該指定化学物質などが第一種指定化学物質または第二種指定化学物質である場合
− 第一種または第二種指定化学物質の名称
− 令別表第1または別表第2における該当する号の番号
− 第一種指定、特定第一種指定、第二種指定の別
・ 当該指定化学物質などが化学物質を含有する製品である場合
− 当該製品の名称
− 製品が含有する第一種または第二種指定化学物質の名称
− 令別表第1または別表第2における該当する号の番号
− 第一種指定、特定第一種指定、第二種指定の別
− 製品の質量に対する含有指定化学物質のそれぞれの割合
・ 当該指定化学物質などの取扱い事業者の氏名、住所および連絡先
・ 当該指定化学物質などが漏出した際に必要な措置
・ 取扱い上および保管上の注意
・ 物理的化学的性状
・ 安定性および反応性
・ 有害性
・ 暴露性
・ 廃棄上の注意
・ 輸送上の注意
<含めることができる情報>
・ 有害性、暴露性の要約
・ 被害を受けた者に対する応急措置
・ 火災時の措置
・ 従業員に対する暴露防止措置
・ 適用される法令
・ その他、事業者が必要と認める事項
4. 法律のその他の内容
4.1 排出量および移動量の算出方法
a) 物質収支を用いる方法
{取扱い量合計}−{移動量(製品としての搬出量+廃棄物含有量)}
b) 排出係数を用いる方法
{製造量、使用量などの取扱い量}×{排出係数あるいは排出原単位}
c) 実測値を用いる方法
排出物に含まれる量や濃度の測定に基づき算出
d) 物性値を用いる方法
蒸気圧、溶解度などの物理的化学的性状に関する数値と排ガス量または排水量とを用いる。
e) その他の方法
経験式、経験値などの利用ができると認められる場合
4.2 その他
1) 毎年度、前年度の第一種指定化学物質の排出量および移動量を事業所ごとに、都道府県知事を経由して国(事業所管大臣)に届出。
2) 使用、取扱いなど、秘密にかかわる有用な技術上の情報で公然と知られていないものは、対応化学物質分類名で通知を行うよう理由を付して国に請求できる。
3) 化学物質管理方針
●指定化学物質などの製造、使用その他の取扱いにかかわる設備の改善、その他の指定化学物質などの管理の方法に関する事項
− 化学物質の管理の体系化
− 情報の収集、整理など
●指定化学物質などの製造の過程における回収、再利用、その他の指定化学物質などの使用の合理化に関する事項
− 化学物質の管理の体系化、情報の収集、整理など
− 化学物質の使用の合理化対策
●指定化学物質などの管理の方法および使用の合理化、第一種指定化学物質の排出の状況に関する国民の理解の増進に関する事項
●指定化学物質などの性状および取扱いに関する情報の活用に関する事項
図3. 使用量の把握が必要な原材料、資材など(製品)の形状
5. 用語の定義
5.1 化学物質
元素および化合物(放射性物質を除く)
5.2 第一種指定化学物質
人や生態系への有害性(オゾン層破壊性を含む)があり、環境中に広く存在する(暴露性がある)と認められる物質で、施行令別表1の354物質
・ 揮発性炭化水素:ベンゼン、トルエン、キシレンなど
・ 有機塩素系化合物:ダイオキシン類、トリクロロエチレンなど
・ 農薬:臭化メチル、フェニトロチン、クロルピリホスなど
・ 金属化合物:鉛およびその化合物、カドミウムおよびその化合物、有機スズ化合物など
・ オゾン層破壊物質:CFC、HCFCなど
・ その他:石綿など
5.3 第二種指定化学物質
第一種指定化学物質と同様に有害性があるが、暴露性はそれより低いと見込まれる物質で、施行令別表2の81物質
5.4 第一種および特定第一種指定化学物質量
第一種および特定第一種指定化学物質が、銅、鉛、ニッケル、砒素などの金属、またはシアン、フッ素、ホウ素の化合物として指定されたものは、金属およびシアンなどの質量として計算する。
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